健康保険を知る・学ぶ
健康保険の基礎知識
健康保険の仕組みや保険料のこと。
いまさら聞けないことまで簡単に解説!
健康保険の抱える問題や現状を知ってください。
第5回 増え続ける日本の医療費! 大切なお薬の話
増え続ける日本の医療費。この医療費の伸びを抑制していくことを考えるとき、お薬の話は避けて通れません。現在、日本の薬剤費は国民医療費全体の約2割を占めています。
医療技術の進歩により、高額なお薬も出てきていて、今後ますます薬剤費が増えていくことが見込まれます。この増え続ける薬剤費を抑制する方法として、第4回の基礎知識でジェネリック医薬品の活用を紹介しました。
ジェネリック医薬品は、特許期間が切れた新薬と同じ有効成分で作られ、効き目や安全性は国が厳しく審査・承認しているので安心です。また、医療費抑制に大きく貢献でき、さらに自身の出費を抑えることができるメリットもあります。現在のジェネリック医薬品は高血圧や脂質異常症、糖尿病などさまざまな病気・症状に対応しています。カプセル、錠剤、点眼剤など形態も豊富ですので、ぜひかかりつけのお医者さんや薬剤師さんに相談してみてください。
また、薬剤費の増加要因の1つになっている「ポリファーマシー」の問題についても知っておきましょう。ポリファーマシーとは「Poly(多くの)」と「Pharmacy(薬剤)」を組み合わせた造語で、何種類もの薬を飲んでいるために有害な症状が生じたり、きちんと薬が飲めなくなったりする状態を言います。
1つの医療機関で処方される薬の数は少なくても、複数の医療機関にかかっていて、結果的に何種類もの薬が処方されている方もいるかもしれません。薬の数が増えると、医療費がかかるだけでなく、副作用が起こりやすくなったり、飲み間違いや飲み忘れのリスクも高くなり、体に悪影響を及ぼすリスクが高まるため注意が必要です。
ポリファーマシーとする薬の数に明確な定義はありませんが、薬による有害な事象はその数に比例して増加し、高齢者では6種類以上で特に発生することが多いというデータがあります(下図)。また、日本老年医学会のガイドラインでは、5~6種類以上をポリファーマシーの目安としています。
高齢者ほど複数の病気にかかりやすく、処方される薬の数も多くなる傾向があるため(下図)、急速に高齢化が進む日本において、ポリファーマシーは今後ますます大きな問題となることが予想されます。
国としてもさまざまな対策や取組みを行っていますが、私たちもできることをやっていきましょう。日頃からかかりつけ医やかかりつけ薬局をもち、飲んでいる薬を把握してもらったり、お薬手帳を1つにまとめ、病院にかかる際には飲んでいる薬をすべて伝えましょう。自己判断で薬をやめたり減らしたりするのは、症状の悪化や思わぬ副作用を招くおそれがあるため絶対に避け、気になることがあればお医者さんや薬剤師さんに相談しましょう。
飲んでいる薬をきちんと管理することが、自身の健康を守り、増え続ける医療費の抑制にも大きな貢献となります。