健康コラム

企業・健保訪問シリーズ
~健康経営 事例紹介~

昨今、「従業員の健康=企業の重要な資本」との考え方のもと、健康経営を実践する企業が増えています。「企業・健保訪問シリーズ ~健康経営 事例紹介~」では、さまざまな工夫で健康経営に成功している企業をご紹介していきます。

企業・健保訪問シリーズ
~健康経営 事例紹介~

株式会社筑波銀行

従業員、家族の心と身体の健康保持・増進に取り組む

筑波銀行は、戦略的に健康経営に取り組むため、2017年9月に「健康経営宣言」を策定した。従業員の心身の健康を重要な経営資源の1つと位置付けるとともに、従業員および家族の心と身体の健康保持・増進に取り組む旨を定めている。さらに、6つの重点項目に数値目標を掲げ、銀行、健保組合、従業員組合が連携して取り組みを進めており、18年、19年には「健康経営優良法人(ホワイト500)」に認定された。同社の取り組みや健保組合とのコラボヘルスについて、筑波銀行人事総務部人事厚生グループ部長代理の湯本修さん、筑波銀行健康保険組合常務理事の小田部安男さん、同事務長の鈴木勇人さん、同保健師の木村直子さんに話を聞いた。

【株式会社筑波銀行】
設 立:1952年9月15日
本部所在地:茨城県つくば市竹園一丁目7番
頭 取:生田雅彦
従業員数:1519人

──重点項目を定めて健康経営を推進


筑波銀行人事総務部
人事厚生グループ部長代理
湯本 修 さん

湯本さん ▶

 当行は「経営理念を実現するためには、従業員の心身が健康であることが基本」と考えており、以前から健康施策に取り組んできました。2017年9月には、戦略的に健康経営に取り組むため「健康経営宣言」を策定し、数値目標を設定した6つの重点項目について取り組んでいます。重点項目の数値目標や取り組みの状況は行内に周知しています。

 毎月、銀行と健保組合で情報交換して進捗状況や課題を確認しており、連携がしっかりと取れているのが大きな強みだと思います。また、銀行、健保組合、従業員組合、産業医、保健師がメンバーである衛生委員会でも定期的に進捗状況等を確認しています。

健康経営宣言

筑波銀行グループは、従業員の心身の健康を重要な経営資源の一つと位置付け、グループ各社と筑波銀行健康保険組合が一体となって、従業員および家族の心と身体の健康保持・増進に取り組みます。

また、金融サービスの提供や地域活動等を通じて、健康で活力ある地域づくりを積極的にサポートしてまいります。

重点項目

(1)心と身体の健康づくり
  • ・定期健康診断の完全実施と二次健康診断受診率の向上
  • ・特定保健指導の実施率向上
  • ・保健師による職場巡回健康相談の実施
(2)職場環境整備
  • ・完全分煙および禁煙の推進
  • ・長時間労働者への対応
(3)健康意識の向上
  • ・健康およびメンタルヘルスセミナーの実施


筑波銀行健康保険組合常務理事
小田部 安男 さん

小田部さん ▶

 銀行が職場環境の整備などの健康経営を推進すれば、生産性の向上につながるでしょう。健保組合としては、保険者機能を発揮して保健事業を円滑に実施し、医療費の適正化につなげたい。従業員組合も含め、それぞれの役割分担を明確にした上で、お互いに手を結んで取り組んでいます。

木村さん ▶

 私はもともと銀行の保健師で、今は健保組合に出向しています。コラボヘルスで両者の連携が取れているため、被扶養者等には健保組合の立場で、パートタイマー等には銀行の立場で関わることができ、幅広く活動できています。

 他にも、インフルエンザやメンタルヘルスなどテーマごとに情報をまとめた「保健師だより」を毎月作成し、イントラネットで情報提供しています。

 また、保健師は3人おり、全支店を巡回して健康相談を行っています。年に1回は必ず面談し、健診結果を説明したり、健康状況や禁煙の相談に乗ったりしています。生の声を直接聞くことができる面談をこれからも大切にしたいと思っています。

湯本さん ▶

 禁煙については、銀行が環境づくりに取り組み、昨年2月には、支店も含めて建物内禁煙が実現できました。健保組合は、禁煙外来費用の補助金を出しています。連携して取り組むことで喫煙率は下がってきています。

──特定保健指導の実施率が向上

湯本さん ▶

 定期健診の完全実施は16年度から連続して達成しています。二次健診は、受診率80%を目標に掲げており、16年度45.6%、17年度67.0%、18年度72.7%と残念ながら達成できていませんが、着実に改善してきています。

 特定健診の受診率は、16年度90.2%、17年度91.0%、18年度91.7%と上昇傾向にあります。また、特定保健指導の実施率目標は60%です。16年度49.2%、17年度が70.6%、18年度が66.2%で目標を達成しています。


筑波銀行健康保険組合事務長
鈴木 勇人 さん

鈴木さん ▶

 ホワイト500の申請に向け、銀行と連携して指導を受けるよう取り組んだ結果、特定保健指導の実施率が17年に大きくアップしました。

湯本さん ▶

 まず、勤務時間内でも保健指導を受けられるようにしました。併せて、保健指導を受けていない人には、人事部長に理由書を提出してもらうようにしました。その結果、実施率が大きく上がりました。


筑波銀行健康保険組合保健師
木村 直子 さん

木村さん ▶

 ホワイト500の認定基準を見ることで、どこに課題があるかが分かり、重点的に取り組むことができました。

湯本さん ▶

 ホワイト500の申請に向けて取り組んだこと、また、18年、19年にホワイト500に認定されたことで、銀行が健康経営に取り組んでいるという理解が従業員に浸透したと思います。

小田部さん ▶

 ホワイト500の項目とデータヘルス計画の項目には重なる部分があります。銀行と健保組合と従業員組合が〝三位一体〟となって取り組んだ結果、18年度は後期高齢者支援金の減算対象組合になることができました。

湯本さん ▶

 メンタルヘルスについては、月2回、専門の産業医が面談を行っています。休職者の復職率は高いと思います。

木村さん ▶

 休職後の復職プログラムが整っており、復職者の体調に応じて段階的に復職できるようになっています。

湯本さん ▶

 銀行ならではの取り組みとして、金利優遇があります。15年には協会けんぽと連携協定を結び、協会けんぽに認定された「健康づくり推進事業所」に、19年には茨城県と連携し、県から認定された「健康経営推進事業所」に、それぞれ金利優遇を行っています。

──スマホアプリを活用して糖尿病の重症化を予防

小田部さん ▶

 特定保健指導の実施率は伸びており、今後は指導対象者を減らすことが課題です。これまでと同じ方法で減らすことは難しいため、いろいろとチャレンジしています。成果が出なければ、違う方法を模索しようと考えています。

鈴木さん ▶

 これまでは管理栄養士が直接面談していましたが、スマホを使った面談も取り入れています。勤務時間外でも、遠隔地から面談できるようにしています。

 また、茨城県は公式健康アプリ「元気アっプ!リいばらき」を活用して、健康づくり活動にヘルスケアポイントを付与しています。ポイントと引き換えに県産品の抽選に応募できる仕組みです。健康を維持している人へのインセンティブとして、このアプリと連携したイベントができないか検討しています。

小田部さん ▶

 糖尿病の重症化予防としては、医療機関を受診する必要がある人と、将来糖尿病になる可能性の高い人を対象に、それぞれ対策を進めています。

鈴木さん ▶

 医療機関を受診する必要がある人には、受診を勧奨し、その状況を把握しています。定期的に通院するのは大変です。1回目は対面診療ですが、2回目からはウエアラブル端末のデータを基に、スマホでオンライン診療が受けられるようにヘルスケア事業者と連携しています。

小田部さん ▶

 糖尿病になる可能性の高い人は、保健師がリストアップしました。費用がかかるため、途中で脱落されては困ります。全員と面談し、取り組む意志があるのか確認しました。その上で、取り組む人には、行内の誰か1人に支援者になってもらいました。

鈴木さん ▶

 取り組む人のスマホに「はらすまダイエット」というアプリを入れ、体重、腹囲、歩数等の情報を入力してもらいます。保健師がその数値を個別に確認し、声掛けをしています。

小田部さん ▶

 途中で入力が途切れたときは、支援者から声を掛けてもらい、脱落しないようにしています。その効果が出てきており、今まで痩せなかった人も痩せ始めています。頑張っている人は数カ月間でかなり体重が落ちています。

木村さん ▶

 保健師がメールでやりとりするなどしっかりとフォローしています。大体の人がダイエットに成功しており、丁寧に関われば成果が出ることを実感しています。

──保険証のQRコードでジェネリックを促進

湯本さん ▶

 人間ドック等のために特別休暇を1日付与するなど、がん検診にも力を入れており、茨城県のがん検診推進優良企業に認定されました。当行の職員約80人が県の「がん検診推進サポーター」になっています。

鈴木さん ▶

 健保組合で人間ドックの費用を補助しており、30歳以上のほとんどの人が人間ドックでがん検診を受けています。人間ドックを受けなかった被扶養者には、郵送で受けられる大腸がん検診をあっせんしています。

木村さん ▶

 パートの人は定期健診を受けることが多いため、市町村で乳がん検診や子宮がん検診を受けるように案内しています。

小田部さん ▶

 また、ジェネリック医薬品の使用を促進するために、パンフレットの配布や差額通知よりもインパクトのある取り組みができないかと考え、今年度にスマホのアプリを導入しました。保険証のQRコードを読むと、どのような薬を飲んでいるのか、その薬にジェネリックがあるのかなどが表示されます。スマホ版のお薬手帳のようなイメージです。

鈴木さん ▶

 本人の同意があれば、提携薬局の薬剤師がレセプト情報を見ることもできます。より的確な服薬指導にもつながるのではないかと思います。

小田部さん ▶

 被扶養者、とくに子どものジェネリック使用率が低いので、そこを上げていくのが今後の課題だと考えています。

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