健康保険を知る・学ぶ
健康保険の基礎知識
健康保険の仕組みや保険料のこと。
いまさら聞けないことまで簡単に解説!
健康保険の抱える問題や現状を知ってください。
第3回 実は給料に影響あり! あなたの手取り額と高齢者医療費の関係
第2回で紹介した、増え続ける日本の医療費の問題。実はこの問題は、会社員などの被保険者と事業主が納める健康保険料と密接な関係があります。皆さんは給与明細に書かれている毎月の健康保険料をチェックしていますか?「毎月勝手に天引きされているものだし」とほったらかしにしていると、この問題に気付くことができません。
上図のように、実は1人当たりの年間保険料は、2008年度に38万6,000円程度だったものが、2023年度には約52万700円にもなり、約13万4,600円(34.9%)も増加しています。このうちのほぼ半分を事業主が負担していますから、現役世代と事業主の負担は非常に重くなっていることがわかります。給料が多少上がっても手取り金額が増えていない実態に、保険料の増加が少なからず影響を与えているのです。
保険料が増加している最大の要因は医療費の増加です。被保険者と事業主が納める保険料は、健保組合の加入者(被保険者と被扶養者)の医療費の支払いだけでなく、高齢者の医療費を賄う拠出金にも充てられています。そのため、高齢者医療費の増加は保険料の増加に大きく影響してくるのです。
65歳以上の高齢者が総人口に占める割合は、2027年には30.0%に達すると予想されています。一方、1人の女性が生涯に産む子供の数(合計特殊出生率)は、2016年以降低下し続けており、2022年には1.26と過去最低を記録し、2023年は1.20とさらに低下しました。日本の少子高齢化は世界に類を見ないスピードで進展しています。こうした少子高齢社会のもとで、国民医療費(国民が1年間に病気やケガの治療のために医療機関に支払う医療費の総額)は増加の一途をたどっています。2022年度の国民医療費は46兆円を超え過去最大となりました。65歳以上の医療費はそのうちの6割を占めており、高齢者人口の増加に伴い今後もさらなる増加が予想されます。
また、国民医療費増加の要因の1つに生活習慣病の増加があります。下図を見ると、2022年度の一般医療費(国民医療費から歯科医療費や薬代などを除いた分)約33.8兆円のうち、生活習慣病にかかる医療費は全体の約3割を占めています。また、死亡原因を見ても約5割を占めています。一人ひとりが生活習慣病の予防、早期発見・早期治療に取り組むことは、皆さんの健やかな生活のためだけでなく、医療費の抑制にもつながります。
今後、高齢化の進展に伴って医療費が増加することは避けることのできない事実です。増加のペースはさらに上がり、2035年度の国民医療費は約66兆円にものぼると推計されます。この増え続ける医療費を、現役世代と事業主の負担で支えるとしたら、莫大な保険料を徴収されてしまいます。現状でも現役世代と事業主の負担は過重とも言えるなかでのさらなる負担増はもう限界。現役世代の負担軽減に向けた医療保険制度の見直しは喫緊の課題です。いまこそ、現役世代がこの問題に興味関心をもち、声をあげていくべきではないでしょうか。