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健康コラム

企業・健保訪問シリーズ
~健康経営 事例紹介~

昨今、「従業員の健康=企業の重要な資本」との考え方のもと、健康経営を実践する企業が増えています。「企業・健保訪問シリーズ ~健康経営 事例紹介~」では、さまざまな工夫で健康経営に成功している企業をご紹介していきます。

企業・健保訪問シリーズ
~健康経営 事例紹介~

損保ジャパン日本興亜ひまわり生命保険株式会社

 損保ジャパン日本興亜ひまわり生命保険株式会社(以下、ひまわり生命)はSOMPOホールディングスグループに所属し、グループが目指す「安心・安全・健康のテーマパーク」の一翼を担っています。健康に関する新しい価値を提供しながら、「健康応援企業」への変革を目指そうと、さまざまな健康施策を展開する同社と、同社が加入している連合型の安田日本興亜健康保険組合(以下、健保組合)の皆さんにお話をうかがいました。

【安田日本興亜健康保険組合の概要】
加入事業所数:68事業所(2016年8月末)
加入者数:80300名(2016年8月末) ※被扶養者34867名を含む

──いつ、どのような理由から、社員の健康づくりを始めたのでしょうか。


損保ジャパン日本興亜
ひまわり生命保険株式会社
執行役員 人財開発部長 小林 健一 さん

ひまわり生命 ▼

 私たちが所属するSOMPOホールディングスグループでは、グループ全体で「安心・安全・健康のテーマパーク」となることを目指しています。中でも、お客様の健康と密接に関わりのある当社は特に「健康」の部分を担い、「お客様と保険」という枠を超えて、お客様に寄り沿うことを大切にしています。つまり、死亡保険や入院給付金の支払いなど、「お客様と保険」の関係を超えて、長きにわたりお客様とお付き合いをするために必要なことを考え、それに取り組んでいくということです。そこで、私たちは、2016年から始まった新中期経営計画の中に、お客様の健康を応援する「健康応援企業」になることを定め、さまざまな取り組みを開始しました。

 健康応援企業になるためには、それを推進する社員とその家族が健康であることが大前提であるとの考えから、まずは健康経営の実践を第一に考えたわけです。

──具体的には、どのような健康施策に取り組み始めたのですか? また、社員の皆さんの反応はいかがでしょうか。

ひまわり生命 ▼


損保ジャパン日本興亜
ひまわり生命保険株式会社
人財開発部 企画グループ
特命部長(グループ長) 国分 望 さん

 まず、今年の4月、社員3000人を対象にウェアラブル端末を無償で貸与しました。この端末は、手首に着けているだけで、歩数、心拍数、消費カロリー、睡眠時間など、さまざまなデータを自動で計測し、その結果をスマホで確認できるようになっています。いずれは、健保組合と連携し、社員の健診結果、レセプトデータとウェアラブル端末で収集したデータを突き合わせ、疾病との因果関係を分析していく予定です。また、将来的には、この端末をお客様にもお使いいただき、健康管理に役立てていただきたいと考えています。9月には、その先駆けともいえる、健康サービスブランド「Linkx(リンククロス)」を立ち上げました。これは、お客様に楽しみながら健康を維持していただくことをコンセプトとして、健康を軸とした革新的な商品や、アプリを中心とした健康関連サービスを展開していくひまわり生命独自の健康サ-ビスブランドです。

 社員の反応としては、1日当たりの歩数が自分で設定した目標歩数に達すると、ウェアラブル端末が振動するようになっており、自分で設定した目標歩数に至らない日は、帰りに遠回りをしてでも歩数を増やそうとする社員も出てきているなど、社員のやる気アップにつながっています。7月には歩行促進キャンペーンとして「目指せ地球5周!」という取り組みを実施しました。これは、地球5周に該当する約3億歩を、ウェアラブル端末を着けている全員で目指すというものでした。皆が1日1万歩を意識していることもあり、1カ月もかからず目標を達成することができました。睡眠時間については、寝返りの回数や目覚めた回数まで測定され、それによって睡眠の質が測定されるので、自分が思っていたよりも、きちんと眠れていないといったことまで分かります。食事の内容を自分で入力すれば、摂取したカロリー目安も自動でスマホアプリに反映されるため、特別な手間もかからず社員の評判も上々です。

健保組合 ▼

 この端末によるデータと健診結果との突き合わせの取り組みは当健保との共同事業であり、どのような結果になるのか、私どもとしても大きな期待を寄せているところです。例えば、生活習慣病を解消するために、保健師から歩くよう指示されるよりも、端末を着けてもらうほうが積極的に歩くようになると分かれば、健保組合としてこの取り組みをさらに広げていく可能性もあります。

──保健事業として、どのようなことを実施していますか。

健保組合 ▼

 当健保は、疾病予防に重きを置いているため、健診および検診に力を入れています。具体的にはメニューを充実させることで早期発見に努めています。当健保においては、被扶養者の受診率が2014年度の時点で54.4%とあまり高くないこともあり、本年度から2年計画で被扶養者の受診率向上に力を入れています。7割以上の受診率にすることが当面の目標です。


安田日本興亜健康保険組合
常務理事 山田 繁 さん

 受診率向上に向けた具体策としては、当健保の役職員が手分けして各事業主を訪問し、経営トップの方々に、被扶養者の受診率向上の必要性を直接お話ししています。「配偶者に万が一のことがあると、社員は安心して働けなくなり業務に支障が出る可能性がある」などとお伝えすることで、事業主の皆さんにご理解とご協力をいただいています。なお、人間ドックは利用者負担が被保険者1万円、被扶養者は8000円となっており、がん検診も、被扶養者については婦人科(子宮がん、乳がん)検診を受診できるようにしています。ちなみに、被保険者本人の受診率は97%近くあるため、この数字をこれ以上にするのは難しいのですが、いずれは被扶養者と合わせて9割以上の受診率にしたいと考えています。

 また、当健保は意外と糖尿病の人が多いため、ターゲットを絞りこみ、糖尿病の重症化予防を行っています。具体的には保健師が面談して受診勧奨をしたり、服薬しているのに数値改善が見られない人に対して助言を行うなどしています。

 もう一つ力を入れているのが禁煙です。具体的な支援策としては、禁煙外来での治療費の半分を当健保で負担しています。全額負担をしてでも禁煙率を向上させたい事業所もありますので、そういった事業所については、事業主と健保がコラボで治療費を全額負担し、禁煙サポートをしています。

──被扶養者の受診率アップに向けて、工夫しているポイントなどがあればお聞かせください。

健保組合 ▼

 以前は、被扶養者への健診案内も、被保険者経由でお渡ししていたのですが、なかなか効果が上がらないため、今は被扶養者の方へ直接送付をしています。また、事業主サイドには、受診対象者の名簿を渡し、受診日時の申し込みを済ませているか否かを毎月把握できるようにしています。

 案内については、事業主側から希望がある場合にのみ、健保の理事長と事業主側の社長の連名で出しています。案内に社長の名前が入る分、一定の効果があるようです。

ひまわり生命 ▼

 当社は、5月と10月の2回、案内を発送していただいています。ネットで申し込めるようになっており、各自が自由に受診希望日を設定できるようになっています。5月の案内で受診申し込みをされなかった方に対して受診勧奨をする意味で10月にも案内を出していただいています。受診しやすくするため、受診期間はほぼ通年としています。

──ウェアラブル端末以外で、社員の健康増進のために取り組んでいることはありますか?

ひまわり生命 ▼

 2016年4月に「社員の健康応援プロジェクト」を立ち上げました。具体的には、連続して「やすみ」、「かえる」(仕事を変える、働き方を変える、早く帰る、生活習慣を変える)ことで社員の「けんこう」を応援する取り組みです。

 例えば、働き方を「変える」取り組みでは、連続休暇の取得を推進しています。当社では、有給休暇以外に特別連続休暇や指定休暇と呼ばれる休暇を社員に付与しています。通常は特別連続休暇を5日間取得するよう指示を出しているので、前後に土日を付けると、好きな時期に最長9連休を取得できるのですが、今年からは有休休暇の消化も推進しようということで、有給休暇の内の5日間を第二特別連続休暇として取得することを必須化しました。これにより、前述の9連休に新たな5連休を加えることで2週間休むこともできます。もちろん、9連休を2回取得しても構いません。あるいは、ゴールデンウィークやシルバーウィークと有休を組み合わせて、長い連休にするのも本人の自由です。

 これ以外にも、早く来て早く帰るという「アーリーワーク」を昨年から導入しています。通常勤務は9時から17時ですが、8時に出社した場合は16時に退社していいというルールにしました。なお、「アーリーワーク」で出社した人には、7:30~8:00の間に限り、簡単な朝食を無料で配布しています。また、できるだけ残業をさせないようにするため、館内の電気は19時で自動消灯するようになっており、19時以降も残業が必要な場合にのみ、申請をした上で、電気をつけるカギを渡すことになっています。一方で、今年からは、「レイトワーク」も認めるようになりました。例えば、遅い時間にお客様へ電話をすることになっていたりすると、早い時間に出社しても、遅い時間まで会社にいなくてはなりませんから、そういう場合は、出社時間を午前11時にしても構いません。

 ほかにも、希望者には有料でクイックマッサージを受けられる等、社員からは「働き方や健康に対して、会社が真剣に取り組んでくれるようになった」、「会社としての取り組みや方針が明確になり、会社全体で健康に取り組んでいることが分かる」といった声が寄せられています。

──コラボヘルスについては、どのように取り組んでいますか?

ひまわり生命 ▼

 昨年度、健保組合を事務局とした「コラボヘルスワーキンググループ」(年に4~5回実施)という取り組みに、当社もメンバーとして入っています。その中で、社員の健康に向けた取り組みについて、事業主同士で意見交換をしたり、参考にしあったりしています。また、コラボヘルスワーキンググループでは、健保組合による次年度に向けた推進策が提示されるので、事業主サイドとして具体的に何をしていくのかが確認できるいい機会になっています。

健保組合 ▼

 当健保は単一健保ではなく連合型の健保組合なので、保険会社以外にも、不動産会社や自動車部品のメーカーなどが加入しており、業種は多岐にわたります。そうした主要な企業の人事部門の皆さんにお集まりいただき、保健事業を共に実施していく上で、どんな課題があり、どう解決していくのかをコラボヘルスワーキンググループの場で協議しています。事業主が自発的に健康経営に取り組むケースはまだまだ少ないのですが、ひまわり生命の場合は「健康応援企業」と自ら銘打ち、積極的にさまざまな取り組みを始めてくれました。こうした動きは、他の事業主にもいい影響を与えると思いますので、健保組合としては大変ありがたいことだと思っています。

 なお、今年から始まった「健康企業宣言」(※)についても、各事業主を訪問し、トップの皆さんに説明をさせていただき、2016年9月末現在で、39社が手を挙げています。宣言しただけでは意味がありませんので、ステップ1をクリアして、ステップ2へ進むことができるよう、当健保も事業主と一体となって健康経営に取り組んでいく考えです。

(※)健康優良企業を目指して、企業全体で健康づくりに取り組むことを宣言し、一定の成果を上げた場合は「健康優良企業」として認定される制度。

──健康保険組合として抱えている課題はありますか? また、その課題に対してどのように取り組んでいるか(取り組もうとしているか)についてもお聞かせください。

健保組合 ▼

 課題は、高齢者医療制度のあり方です。高齢者の医療費が増加することは、どうにもならない事実ですから、私どもが主体的に手を打てることがあるとすれば、事業費を膨らませないようにすることと、保険給付をいかに抑えるかということです。しかし、健康施策に取り組むことが、社員とその家族の健康につながり、保険給付が抑えることを可能にするわけですから、これは健康経営の推進と表裏一体のことだといえます。したがって、健保組合としては、健診の受診率を上げるとか、事業主とのコラボヘルスを積極的に展開するなど、地道な努力を重ねていくしかありません。

──「あしたの健保プロジェクト」に対するメッセージや国に対する要望をお願いします。

ひまわり生命 ▼

 健康経営 事例紹介を拝読すると、他の企業さんたちが工夫を凝らして、多様な取り組みをなさっていることが分かるので、とても参考になります。健康経営 事例紹介に限らず、健康づくりに対する意識が高まるような情報を、今後も引き続き発信していただけると助かります。

健保組合 ▼

 高齢者の医療費を現役世代が負担するのは、もう限界にきています。したがって、誰がどう負担するのかを、国も健保組合も真剣に考えなくてはなりません。医療費は毎年1兆円ずつ増えているわけですから、それを今後も現役世代に負担させていくというのはあまりにも酷な話だと思います。高齢者医療制度の抜本的な改革が必要なことは確かではないでしょうか。

 当健保も、被扶養者の受診率向上に努め、保険給付を抑える努力をしてまいりますので、健保連および国の皆さんには高齢者医療制度の改革に向けてより一層ご尽力いただきたく思います。

損保ジャパン日本興亜ひまわり生命保険株式会社 執行役員 人財開発部長 小林 健一 さん
「当社が「健康応援企業」への変革を目指すためには、まずは「健康経営」の実践を通して、社員とその家族の健康維持・増進を図ることが第一と考えています。これからも新しい取り組みを実践していきたいと思います。」

損保ジャパン日本興亜ひまわり生命保険株式会社 人財開発部 企画グループ 特命部長(グループ長) 国分 望 さん
「ウェアラブル端末を着けるようになり、私自身、1万歩の振動を待ち遠しく思うようになりました(笑)。きっかけは何であれ、歩くことに対して積極的になれたことは、私にとっても大きな変化ですし、今後も続けていきたいです」

安田日本興亜健康保険組合 常務理事 山田 繁 さん
「経営トップに健康経営に対するご理解とご協力をいただくため、地道ではありますが、今後も事業主の元に足を運び積極的に働きかけ続けていきます」

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