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健康コラム

企業・健保訪問シリーズ
~健康経営 事例紹介~

昨今、「従業員の健康=企業の重要な資本」との考え方のもと、健康経営を実践する企業が増えています。「企業・健保訪問シリーズ ~健康経営 事例紹介~」では、さまざまな工夫で健康経営に成功している企業をご紹介していきます。

企業・健保訪問シリーズ
~健康経営 事例紹介~

コニカミノルタ株式会社

 コニカミノルタ株式会社では、「持続的成長のベースとなるのは人財力であり、人財力のベースは健康である」との考えから、2011年に「コニカミノルタグループ健康宣言」を社長名で発信。また、会社と健保組合によるコラボヘルスにより、幅広い健康維持増進活動を展開し、近年ではメンタルヘルスに関する取り組みも功を奏しています。こうした実績が認められ、同社は2年連続で「健康経営銘柄」に選定されました。同社の保健事業の内容や、課題解決に向けた取り組みについてご紹介します。

【コニカミノルタ健康保険組合の概要】
加入事業所数:20事業所(2016年3月末)
加入者数:約3万500名(2016年3月末) ※被扶養者約1万6500名を含む

──社員の健康づくりに取り組まれるようになるまでの経緯をお聞かせください。


コニカミノルタ株式会社
人事部 健康管理グループリーダー
兼 コニカミノルタ健康保険組合
常務理事 鈴田 朗さん

 2008年から2011年くらいまでの間に、当社には2つの大きな課題がありました。1つが、メンタル不調による休務者数の増加です。これは、経営トップからも「経営課題」として厳しく指摘されていました。もう1つが、従業員の高齢化(平均年齢44.4歳)にともなう生活習慣病と予備軍の増加です。この背景には、定期健診後に受診勧奨を行っても、忙しさを理由に受診をせず、その後、疾病が悪化してしまうという従業員の存在がありました。また、稀なケースではありますが、脳・心臓系疾患による従業員の突然死もあり、こうした従業員の健康リスクは、労働生産性の低下にもつながることから、当社における喫緊の課題として捉えたわけです。

 一方、健保組合でも、高齢者納付金・支援金の増加と、従業員の高齢化にともなう医療費の増加という2つの課題を抱えており、健保組合財政は逼迫していました。そこで、2010年度から保養所を売却するなど、可能な限りの支出削減を実施しましたが、財政状況が好転することはなく、2011年4月に保険料率を6.7%から8.4%に大きく引き上げました。

 当時は、こうした課題の解消に向けて、当社と健保組合が別々に取り組んでいました。しかし、両者ともに目指すのは「従業員の健康度向上」ということで、会社と健保組合という2つのリソースを最大限に活用した一体運営、いわゆるコラボヘルスへと舵を切りました。

──保健事業の概要についてお聞かせください。

 私どもでは、2011年4月に社長名で発表した「コニカミノルタグループ健康宣言」(下図 参照)に掲げた理念を実現するために、2014年度から2016年度にかけての健康中期計画「健康KM2016」を策定しました。

 本計画における基本的な考え方は2つあり、1つが「健康リスク者のミニマイズ化」です。具体的には、フィジカル・メンタルの両面でのリスク度合いに応じて、従業員をいくつかに階層別にし、産業保健スタッフによる徹底した個別指導を行っています。もう1つが「『見える化』による健康度の向上」(健康ムーブメント)です。健康診断時の問診に、健康度を示す8つの指標(歩行、喫煙、睡眠など)を設け、その指標ごとに事業部門や関係会社の立ち位置を見える化し、それを事業部門長や関係会社社長とも共有することで、自分たちの部門や会社の立ち位置を理解してもらうようにしています。そのうえで、さまざまな施策への協力を仰いだりしながらPDCAを回し、各指標において、国内主要企業中上位10%に入ることを目標としています。

──健康中期計画「健康KM2016」では、具体的にどのようなことに取り組んでいるのでしょうか。


コニカミノルタ健康保険組合
事務長 田中 克人さん

 取り組んでいる施策は多岐にわたりますが、「見える化」に関していえば、例えば、コニカミノルタ本体と複数の関係会社で喫煙率を比較したところ、会社本体はわりと低めでしたが、販売会社や生産子会社は高めでした。これをグラフ化したものを関係会社の社長に見せるわけです。すると、状況が一目瞭然になるため、喫煙率の高い関係会社は危機感を持ちやすく、改善に向けた努力をしやすくなります。ほかにも、希望者にはUSB付きの歩数計を被保険者とその配偶者に無償で提供し、「歩け歩け運動」に取り組んでいます。歩数データはサーバーで管理され、いつでも見られるようになっており、歩数に応じてポイントを付与しています。年に2回、ウォーキングイベントを実施し、その期間中はポイントを5倍にするなどの工夫もしながら、従業員のモチベーション維持に努めています。なお、貯めたポイントは健康グッズやグルメ券、東京ディズニーリゾートの入場補助券などに交換することが可能で、従業員からも好評です。

 また、大きな事業所限定ですが、外部のスポーツインストラクターによる講義と実技からなる講習会を開いたり、ランチョンセミナー形式で、食堂に管理栄養士を招き、昼食をとりながら、講義を受ける取り組みなども行なっています。

 禁煙についても、以前から力を入れており、健保組合が主体となって、禁煙サポートプログラムを展開しています。これに申し込むと、各事業所にいる看護職のサポートも受けながら禁煙を目指せるような仕組みになっています。なお、2015年度から禁煙達成時の報奨金を昨年からアップしましたので、より多くの喫煙者が本プログラムに参加してくれることに期待しています。

──コラボヘルスにおける役割分担はどのようにされていますか。また、コラボヘルス体制になったことによる成果についてお聞かせください。

 安全衛生や海外駐在者支援に関することは会社が行なっています。当健保組合のなかに「健診センター」と呼ばれる組織があり、そこが定期健診の運営を一手に担っています。また、データヘルス計画として、健診データやレセプトデータの分析を行い、課題を抽出しています。一方、会社側には「健康管理グループ」と呼ばれる組織があり、そこで、健診センターがデータ分析で抽出した課題を掘り下げ、それに基づいた対策を立案・実行しています。なお、当社には、産業保健スタッフと呼ばれる産業医18名(常勤4名・非常勤14名)と看護職24名が在籍しており、彼らも一緒に保健事業を推進しています。


コニカミノルタ健康保険組合
事務次長 禁煙支援士 藤野 富士男さん

 コラボヘルス体制によって、最も顕著な効果が見られたのは、「歩け歩け運動」における参加者数です。本プログラムは、コラボヘルス体制になる前は、健保組合が単独で実施していたのですが、コラボヘルス体制になってからは、会社の社内ウェブ上で、イベントの開催告知も含め、大々的に告知するようになりました。また、ポスターも作成し、社内の掲示板に掲出したり、全従業員にメールで案内したりしています。その結果、2014年10月時点では、被保険者の17%程度の参加率でしたが、約1年後の2015年11月時点では、被保険者の34%以上が参加するようになり、現在、約5000人の従業員が参加しています。これは、コラボヘルス体制になったことによる成果の1つだと考えています。

──保健事業の効果についてはいかがでしょうか。

 成果については、「歩け歩け運動」の参加者が大きく増加したことに加え、産業保健スタッフによる努力が数値として表れてきています。例えば、就業制限対象者数、特定保健指導対象者数、メンタル不調による再休務者数は、ここ数年でいずれも減少しています。とくに、メンタル不調による再休務者数が、2011年に比べ、4分の1にまで減ったことは、メンタルヘルス対策によるものだと考えています。当社のメンタルヘルス対策は、2つ柱があります。1つ目は、2012年度から導入した「復職準備勤務制度」です。これは、産業医や人事による面談を踏まえ、働ける状態が最低3時間になったらリハビリ的に勤務を開始できるというもので、期間は最大3カ月です。2つ目は、2012年から実施している年に2回の「こころの健康づくりキャンペーン」です。これは、全従業員に対して実施するストレスチェックです。上期と下期で繁閑がある部署もあるため、年に1回のストレスチェックが閑散期だと意味がないと考え、年に2回実施しています。

 もう1つ成果が出ているのが、被扶養者(35歳以上)の健康診断の受診率です。これは、数年前まで5割台でしたが、現時点では約7割にまで増えています。被扶養者の受診率を上げるために、当社では、被保険者経由ではなく、本人宛に健診の案内を郵送しています。また、ある一定期間内に事前申し込みを済ませた人には、抽選でインセンティブが発生する仕組みにしました。さらに、年間で20回程度、さまざまな形で受診勧奨を行っています。本人に受診勧奨をするのは20回のうち3割程度で、残りの7割は被保険者経由で行ないます。被保険者のメールアドレス宛に、嫌がられることも覚悟の上で(笑)、配偶者が未受診であることや期限のお知らせなどを通知しています。その結果、受診率が上がったことに加え、被扶養者の生活習慣病にかかる医療費が下がりました。被扶養者に関しては、被保険者に比べてフォローが十分ではなかった分、地道な努力が結果につながったのだと考えています。

──メンタルヘルス対策の詳細についてお聞かせください。

~復職準備勤務制度について~

 復職者の再休務が多数発生するなかで、メンタルヘルスに取り組んで成功している他社を5社ほど訪問させていただきました。その当時、当社では、短時間勤務でも復職を認めていたのですが、他社では、フル勤務ができるようになるまで復職を認めていないところがほとんどでした。つまり、他社では、短時間勤務で復職させるということは、完治していないのに復職させるということになり、再休務につながるという見解だったわけです。そこで、当社も考え方をあらため、「復職準備勤務」の制度を設けました。

 本制度では、復職準備勤務の期間である3カ月の間にフル勤務を目指してリハビリ勤務を行い、フル勤務が可能になった時点で復職となります。ただし、復職には条件が2つあります。1つはリハビリ勤務期間の出勤率が8割以上であること。もう1つは、最後の10日間(最後の2週間)は1日も休まずにフル勤務ができること。この2つの条件を満たさないと復職することはできません。また、復職勤務期間中のフォローも手厚くしました。

 1つは、期間中に最低3回、人事、産業医、職場上長と本人との面談の機会を設けました。最低3回というのは、「復職準備勤務を開始するとき」、「フル勤務に入る前」、「正式な復職を判定するとき」の3回です。もう1つは、産業医の先生の協力も得ながら、職場の上長や同僚が、復職者に対してどう接するべきかについて書かれたガイドブックを作成し、職場上長に渡すようにしています。基本的には、「少しでも気になることがあれば、速やかに産業医や人事に相談してほしい」ということが書いてあります。なお、復職準備勤務の期間中は、欠勤または病休職扱いのまま、会社に来て働いていることになりますので、働いた分の給与は時給計算で支払っています。

~ストレスチェックについて~


心の健康支援システム「e診断@心の健康」

 ストレスチェックは年に2回、ウェブで受診できるようになっています。各回共に期間は3週間です。あまり強制感が出てはいけないのですが、全従業員の健康度を考える上でも、もれなく受診してほしいことから、期間中は、週の終わりに人事部から各組織長に対して、部門別のストレスチェック受診率の情報を提供しています。つまり、自分の部門が、他の部門に比べて、受診率が著しく低いということが一目で分かるようにして、上長から部署全体に対して受診を促すような体制をとっています。これは功を奏していて、現在、受診率は95%以上です。ストレスチェックのデータはEAP会社に直接送られますので、高ストレスの社員には、EAP会社からフォローメールが出され、EAP会社側のカウンセラーが対応します。

 また、2013年からは、職場分析を始めており、職場ごと(10人以上から30人くらいまで)のストレス度を4段階に分類し、その結果を人事から組織長に年に2回フィードバックしています。ストレス度が最も高い「レベル4」に分類された職場については、そのままにしておくとメンタル不調者の発生につながる能性もあるので、人事担当と連携し、組織長に改善策を練って実行するよう働きかけをしています。こうした取り組みにより、「レベル4」の職場の数もだいぶ減ってきているのが現状です。

──健康保険組合として抱えている課題はありますか。

 保健事業に積極的に参加する従業員は、じつは、ヘルスリテラシーが高いということが分かっています。例えば、定期健診時に実施される「1日あたり1時間以上(約7000歩以上)歩きますか」との設問に対して「はい」と答えた人の割合が、「歩け歩け運動」に参加している従業員の割合とほぼ等しいことから、本プログラムに参加している人たちは、普段から十分に歩いている人たちということが考えられます。本来は、運動不足の人たちを対象としたプログラムですから、いわゆるヘルスリテラシーが低い人を、本プログラムを含め、いかにして、さまざまな保健事業に巻き込んでいくかが、今後の大きな課題です。

 もう1つの課題は、健保組合の財政です。保険料率を上げたことで、ここ3年くらいは黒字ですが、この先のことをシミュレーションしていくと、やはり今後の財政状況が危惧されます。なぜなら、当社の前期高齢者の比率が今はまだ低いことにあります。当健保組合には現在、被扶養者を含め約3万人いますが、このうち前期高齢者の数は100人台です。しかし、今後、定年再雇用者が増え、65歳まで働くようになることや、そこから任意継続でさらに2年、当健保組合に加入することを考えると、前期高齢者が増えてくることは明らかです。

 また、40代半ばの社員が、これからさらに年を重ねていったときに、いかに医療費を抑えるかも課題です。いろいろな対策をしていますが、医療費が2~3%は上昇していくことは避けられないと考えています。これらの課題に対して、どのような対策を打ち出せるかは、悩みどころです。

──「あしたの健保プロジェクト」や国に対するメッセージをお願いします。

 私どもの最大の課題は、ヘルスリテラシーの低い層にいかにアプローチするかです。この課題が解決できれば、より多くの組合員が健康になり、健保組合としては医療費削減が期待できます。しかし、保健事業は、被保険者である社員に対してはアプローチしやすいのですが、被扶養者に対してはアプローチしづらいといった側面があります。懸命に努力をしても、配偶者までのアプローチが限界です。じつは、被扶養者の中には、被保険者の親が含まれているケースも多く、この層にかかる医療費が意外と大きいという実態があります。しかしながら、私どもで、その層にまでアプローチすることは非常に難しいのが現状です。そこで、高齢者や専業主婦(夫)の健康意識を高めるための施策を、国にも進めていただきたいと思います。国民総活躍、健康寿命の延伸、医療費削減という国の目的と、私どもの目的は合致しているのですから、今まで以上に啓蒙活動に力を入れていただけると助かります。例えば、定期健診の受診による早期発見のメリットや、定期的な運動による健康度の指数などを、国民が理解しやすく、関心を持ちやすい形で発信していただけるとありがたく思います。国にしかできないという意味では、学校教育の中で健康意識を高めるような工夫をしてもらうなど、国民全体のヘルスリテラシーを高める施策をお願いいたします。

コニカミノルタ株式会社 人事部 健康管理グループリーダー 兼 コニカミノルタ健康保険組合 常務理事 鈴田 朗さん
「就寝の3~4時間前までに夕食を済ませるようになり、また、1日1万歩を目標に歩くようになってから、体重が6㎏ほど減りました。食事をとる時間の大切さと歩行の効果を、身を持って体験しました」

コニカミノルタ健康保険組合 事務長 田中 克人さん
「定期健診で要受診と判定された被保険者の受診率は83%。この数字を褒めていただくことも多いのですが、受診率100%を達成されている他社さんもありますので、当社も100%を目指します!」

コニカミノルタ健康保険組合 事務次長 禁煙支援士 藤野 富士男さん
「肺・胃・大腸のがんは、定期健診に組み込まれているため90%以上の受診率ですが、乳がんと子宮頸がんの受診率は30~40%しかありません。早期発見につながっていない人が高額医療費の対象者になっているというデータが出ているので、乳がん子宮頸がんの受診率を上げるよう努力していきます」

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