健康コラム
企業・健保訪問シリーズ
~健康経営 事例紹介~
昨今、「従業員の健康=企業の重要な資本」との考え方のもと、健康経営を実践する企業が増えています。「企業・健保訪問シリーズ ~健康経営 事例紹介~」では、さまざまな工夫で健康経営に成功している企業をご紹介していきます。
企業・健保訪問シリーズ
~健康経営 事例紹介~
八洲(やしま)電機株式会社
健康経営に取り組み 社員と家族が自然と健康になれる会社に
鉄鋼、エネルギー、産業、交通などのさまざまな分野のシステムの提案、設計、調達、建設、運転、保守まで、一貫したサービスでトータルに支えるエンジニアリング会社である八洲電機株式会社は、「クオリティの高いサービスを通じ、お客様と共に価値を創造するベストプランナーとして環境配慮型社会に貢献する」ことを経営ビジョンとしており、従業員が健康であること、健康的に働くことを経営課題として捉え、従業員の健康を積極的に支援する健康経営を推進している。同社が健康経営を始めたきっかけや取り組み内容について、八洲電機上席執行役員・管理統括本部長兼人事本部長の三浦達也さん、人事本部人事二部長の武田秀理さん、同部人事三課長の橋本藝久さん、同課の石田茂博さん、吉野春菜さん、電設工業健康保険組合常務理事の笹川武男さん、同総合健康管理センター事務長の石川雄史さんに話を聞いた。
【八洲電機株式会社】
創 立:1946年8月
本 社:東京都港区新橋3―1―1
代表取締役会長兼社長:太田明夫
従業員数:連結1048人
──健康経営に取り組み 成長し続ける会社へ
八洲電機上席執行役員・
管理統括本部長兼人事本部長
三浦 達也 さん
三浦さん ▶
当社は、「社会に信用・信頼される会社」、「社会に奉仕する会社」、「社会に協力・協調する会社」(「信・愛・和」)を経営理念とし、今年で創立74年を迎えました。
そうした中、今後も成長し続ける会社になるためには広い視野を持って歩まなければならないと考え、2009年に東証2部、11年に東証1部に上場しました。そして、16年の創立70周年記念事業として本社ビルの建て替えプロジェクトとともにワークスタイル変革プロジェクトを発足させ、一体的に働き方改革を進めてきました。
社員アンケートを行い、フリーアドレスオフィスや社内ブレイクエリアの導入、また、外装の壁の色やオフィスチェアはどれが良いのかなど実際に社員に選んでもらい、働きやすい、働き甲斐のある職場にしようと進めていましたが、ハード面だけでなくソフト面でも働き方改革に資する諸制度がなければ有効に作用しないのではないかという声が上がり、フレックスタイムや時差出勤の導入、サテライトオフィスの整備など、いつでもどこでも働ける環境のための制度を整えていきました。
そして、さらに成長し続けるために次に何が必要かを考えたときに、社員が健康でないと成長できないと考え、健康経営に取り組むことにしました。
当時は私も含めて3人で担当し、健康経営についていろいろと調べていくうち、目標を掲げるとうまくいくと知り、健康企業宣言認定制度や健康経営優良法人制度という顕彰制度を目指してやってみようということになりました。
八洲電機人事本部
人事二部長
武田 秀理 さん
武田さん ▶
18年6月に当社は健康経営宣言を制定し、従業員の健康を積極的に支援する健康経営の推進を通じて、組織の活性化や生産性の向上を図り、その先にある社会に貢献することを宣言しました。
重点施策として「からだの健康」、「職場の健康」、「こころの健康」を掲げました。当時から健康診断の受診率はほぼ100%に近く、高い水準ではありましたが、特定保健指導の実施率が低調なことや健診結果をみるとBMIの高い社員が多いこと、また、喫煙率が高いことが課題としてありました。
このため、「からだの健康」では、運動機会の増進と喫煙者の減少を目標として、運動イベントへの参加の推奨や野球などの同好会活動への補助、また、健康弁当を勧めたり、社内自動販売機の飲料水のカロリー表示や特保飲料水の導入などを行いました。たばこ対策については、禁煙外来への支援、また、社内喫煙所での紙巻きたばこの禁止や喫煙所の人数制限の導入などを実施し、喫煙率は4割から3割を切るまでに低下しました。
社員が「こうしてほしい」、「ああしてほしい」と言いやすい環境を整えて、それを実現するためにはどうしたら良いかを考え、その中で出来ることから取り組んでいます。
手探りで始めた健康経営でしたが、実際に取り組んでみて分かったことは、当社は従前から健康づくりに取り組んでいたのだ、ということでした。顕彰制度についても、おかげ様で、20年3月に健康企業宣言東京推進協議会の「健康優良企業:金の認定」を取得したほか、健康経営優良法人(ホワイト500)に19年、20年と2年連続で認定していただきました。
八洲電機人事本部
人事二部人事三課長
橋本 藝久 さん
橋本さん ▶
「職場の健康」では、1人当たりの年間実総労働時間の減少、有給休暇取得率の向上を目標にしています。18年5月からコアタイムなしのフレックス勤務制度を導入し、ほぼ全ての社員が使えるよう適用者を拡大してきましたが、まだ制度を十分活用できていないように見受けられます。
今後、管理職に対する教育やモニター制度を実施し、利用しやすい雰囲気づくりや社員1人ひとりに制度を理解してもらい、更に働きやすく、効率的に業務が進められる環境をつくり、時間外労働を減らしていきたいと考えています。
有給休暇取得率の向上では、各部門の上長を通じて課員が計画的に有給休暇を取得するようお願いしています。施工現場を持つと有給休暇の取得が難しく、管理者側も現場担当者の労働時間と健康管理が難しくなりますが、未取得者へは就業管理システムに有給休暇予定日を入力させ、取得状況を共有しています。また、そこからコミュニケーションも生まれ、良いサイクルができています。
時代の変化を踏まえて新たな制度を導入し、働き方改革を推進していきたいと思います。
──現状を維持しつつ継続的に効果の上がる施策を
八洲電機人事本部
人事二部人事三課
石田 茂博 さん
石田さん ▶
直近の課題は、新型コロナウイルス感染症対策と、なかなか進まないBMIの改善です。新型コロナウイルスなどの感染症対策に関しては、インフルエンザ予防接種を全社員が受けるよう進めています。また、喫煙率を下げることも重要なファクターになるので、施策を進めたいと思います。
BMIの改善については検討段階ですが、ちょっとしたフロア移動は階段を利用する、20分以内の移動はできるだけ徒歩にするなど、こうした行動を社員に習慣付けるよう促す施策を検討しています。従来より、3、4階程度の移動ではエレベーターよりも階段を使う文化があったので、そうした下地を生かしていきたいと思います。
顕彰制度を通じて、当社は健康経営の取り組みが進んでいることが分かりましたが、今後、更に結果を出していくために、どのような取り組みを行うかが次の課題にもなっています。特にBMIや喫煙率は急に改善しないので、継続的に徐々にでも効果が上がる施策が重要だと考えています。
電設工業健保組合・
総合健康管理センター事務長
石川 雄史 さん
石川さん ▶
八洲電機さんは当健保組合の加入事業所の中でも健康経営への考え方や取り組みが相当高いレベルにあります。顕彰制度ができる前から、基本的な物事の考え方は、健康経営になぞらえていたような取り組みを実施されており親和性が高く、そのことがスムーズな認定につながったのではないかと思います。
当組合としては、特定健診・特定保健指導を通じて、特に家族への対応でご支援できるのではないかと考えています。事業所と健保組合では健康経営への立ち位置と視点が異なりますが、ウィンウィンの関係が築けるよう、一生懸命協力させていただきたい。
また、当組合でもメンタルヘルスや禁煙、食事指導、新しいところでは睡眠など、各種セミナーを用意していますが、八洲電機さんはすでに独自に実施されており、そうした効果的な取り組みについては、参考にさせていただきたいところです。
──今後は若い社員への意識付けが重要
三浦さん ▶
本社ビル建て替えプロジェクトを通じて、社員みんなで一緒に取り組むという風土ができ、そして自分たちが選んだのだから自分たちで責任持ってやろうという意識が醸成されたのだと思います。
将来的な理想は、当社で働くと社員もその家族も自然と健康になれる会社にしていくことです。そのために今後重要なことは、20歳代、30歳代の社員への意識付けです。若いうちから健康に対する意識を高め、健康に気をつかうことを習慣付けることが重要です。
人生100年時代の不安要素は、健康と資産形成だと思います。これに若いうちから取り組めば、安心で幸せな老後を過ごせる。そのことを若い社員に理解してもらえるような施策を進めていきたいと思います。
八洲電機人事本部
人事二部人事三課
吉野 春菜 さん
吉野さん ▶
社員への周知として、健康経営に関する各種施策などについて情報発信に取り組んでいます。社内に設置したデジタルサイネージや掲示板などを活用して情報発信をしていますが、個々人で健康に対する考え方が違っていて、興味を示してくれる社員とそうでない社員がおり、健康無関心層にどうやって興味を持ってもらうかが、課題の1つです。
また、今後は社外へのPRについても取り組みたいと考えています。
三浦さん ▶
健康経営に携わる社員も当初の3人からこれだけ増えており、倍以上のアイデアと行動力で、さらに良い会社にしていきたいと考えています。
電設工業健保組合常務理事
笹川 武男 さん
笹川さん ▶
健保組合としては、病気になったときの医療費をどう賄うのかが主題でしたが、今日的には病気にならない、予防・健康づくりに取り組むことが求められており、八洲電機さんは自発的に予防・健康づくりに取り組まれ、まさしく健康経営を地でいっています。
実際に他の加入事業所から、健康経営に取り組まれている事業所の例についてお問い合わせをいただくことがあります。健保組合としては、そうしたところに健康経営を勧めるにあたって、成功事例があるのとないのとではまったく説得力が違いますので、引き続き健康経営にご尽力いただくとともに、当組合としてもお手伝いしていきたいです。