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健康コラム

企業・健保訪問シリーズ
~健康経営 事例紹介~

昨今、「従業員の健康=企業の重要な資本」との考え方のもと、健康経営を実践する企業が増えています。「企業・健保訪問シリーズ ~健康経営 事例紹介~」では、さまざまな工夫で健康経営に成功している企業をご紹介していきます。

企業・健保訪問シリーズ
~健康経営 事例紹介~

株式会社阿波銀行

連綿と続く企業風土としての健康意識

 四国、徳島県で1896(明治29)年の設立から122年にわたり、地域に根差した金融機関として活動する株式会社阿波銀行。「健康経営優良法人(大規模法人部門)〜ホワイト500〜」に2018、19年と2年連続で認定されているが、その申請にあたり、要件の未達項目はほとんどなかったというほど、歴代経営者、さらには先輩から後輩へと受け継がれてきた「健康(意識)への土壌」がすでに存在していたとのこと。
 同行の取り組みについて、阿波銀行経営統括部副部長・佐藤仁史さん、同経営統括部厚生課副経営役・青木一雄さん、阿波銀行健康保険組合常務理事・田岡誠司さん、同事務長・宇治和哉さんに話を聞いた。

【株式会社阿波銀行】
設 立:1896年6月19日
本 社:徳島県徳島市西船場町2-24-1
取締役頭取:長岡 奨
従業員数:1,294人(2018年3月末現在)

──企業としての健康づくりへの考え


阿波銀行経営統括部副部長
佐藤 仁史 さん

佐藤さん ▶

 健康経営が注目されるかなり前から、当行の歴代経営トップは常々、健康管理の重要性を説いてきました。支店長会や階層別研修会など、あらゆる機会を通じて徹底してきました。その結果、企業風土として健康に対する職員の意識は高く、かつ醸成されてきたと自負しています。

 また、健康管理の徹底は入行のときから始まります。入行式でのトップからの訓示では、毎回といっていいほど健康管理について言及しており、その後の新人職員研修でも、健康管理について教育します。約1カ月間の研修期間中は、敷地内全てを禁煙にするのはもちろんのこと、産業医からの講演と保健衛生の専門スタッフからの個人面談に加え、メンタル部分でのフォローもあります。

田岡さん ▶


阿波銀行健康保険組合常務理事
田岡 誠司 さん

 母体では、こうした取り組みをもう30年以上続けています。1981年に研修所を作ったころから、現在に至るまで、新人研修では、健保組合が保険証の使い方、医者へのかかり方などを説明します。新人職員は健康に携わるスタッフと接することで、阿波銀行という企業の健康に対する意識がどれだけ高いのか、自然と理解してくれていると思います。

青木さん ▶

 産業医の講義から保健師の面談まで、多くのことを教わります。私自身も入行後の研修で教わったことを今でもよく覚えています。

佐藤さん ▶

 歴代の頭取の中でも、住友俊一元頭取(故人)は、自身の健康はもちろんのこと、家族の健康も非常に重要だということを、常々言っていました。

 充実して働くためには、自分だけでなく、家族の健康問題についても心配ないことが大切だという信念があったのではないでしょうか。私自身も、いい仕事をするには、自分も家族もともに健康であることが重要だと思います。

 こうした取り組みを30年以上続けてきて、当初、入行した職員の中には、現在、支店長になっている者もいます。健康管理についての教えが上司から部下へ、先輩から後輩へと引き継がれ、徹底されてきていると思います。


阿波銀行健康保険組合事務長
宇治 和哉 さん

宇治さん ▶

 87年には、職員と家族の健康診断の結果を登録する健康管理システムを作りました。このころから専従の看護師スタッフを2名採用したほか、配偶者ドックやレディースドックも始めました。

──「健康経営優良法人」申請のきっかけ

佐藤さん ▶

 これまでの取り組みにより、健康意識が高いという土壌があったというとことと、対外的にアピールすることで職員のさらなる意識の向上にもつながるという思いから、健康経営優良法人(制度)の開始当初から申請しています。申請にあたり新たに始めたことは、本店、支店、研修所、電算センターなど全ての施設で敷地内禁煙を実施したことくらいです。

宇治さん ▶

 「ホワイト500」の認定要件の項目を初めて見たときは、未達項目はほとんどないと思いました。関連する母体の担当課長と相談し、健康宣言の外部への発信を行えば認定される見込みがありました。役員に相談したところ、すぐに取り組むよう指示が出たので、初回から申請しました。

佐藤さん ▶

 これまでの頭取からの健康に関するメッセージが末端まで浸透してきたのだと思います。こうした地道な活動により、「ホワイト500」の認定につながりました。

 「ホワイト500」に認定された効果は、採用の際にも出ています。今の学生は福利厚生面を重視する傾向があり、健康管理に力を入れてきたことで、阿波銀行に安心感を持ってもらえていると思います。

 また、退職したOBからも「ホワイト500」の認定を評価する声が寄せられています。徳島の企業の先頭に立って健康経営に取り組んできましたし、これからも継続していきたいです。

──主な健康への取り組み

田岡さん ▶

 2017 年12月から禁煙キャンペーンを年に2回行っています。「禁煙したい」と申し出た被保険者に対し、3カ月間の禁煙に成功すれば、(禁煙外来など医療機関で)受診した際の一部負担金や禁煙パッチなどかかった費用の1万円までを支給します。参加を申し出た者に対しては、近くで取り組み状況を見守る人=サポーターを任命します。達成時に費用を請求するときには、そのサポーターの証明が必要です。

佐藤さん ▶

 正確な数値は分かりませんが、喫煙者は減少しています。一方で、禁煙キャンペーンの参加者がやや減ってきているので、何らかの対策が必要と考えています。

 また、車で通勤する職員が多いということもあり、運動不足が懸念されています。徳島県は運動不足の人が多いという特徴があり、どのように働き掛けて運動不足を解消させるかも課題と思っています。春に開催される「徳島マラソン」には、年々、阿波銀行からの参加者が増えてきています。さらに、健保連徳島連合会が開催するイベントやセミナーも積極的に活用し、参加を促しています。

青木さん ▶


阿波銀行経営統括部厚生課副経営役
青木 一雄 さん

 若い職員でも運動不足の者が多いです。健診結果が悪くなく、病気にもなっていないため、健康問題を自分ごとと考えないようで、保健師から話をしてもらっても率先して運動するようになりません。スポーツジムと契約し、そこで指導を受けるプログラムを組む対策をしていますが、少しでも将来の生活習慣病予防につながればいいと思います。

宇治さん ▶

 健保組合からの要望で、今年度から新たな休暇制度として「ヘルス休暇」を設けてもらいました。「ヘルス休暇」の1日を、自分自身の健康づくりを考えるきっかけにしてもらいたい思いがあります。

 具体的には人間ドックに行ったり、保健指導を受けたり、体を動かしたりという利用の仕方を想定しています。阿波銀行の場合、人間ドックは多くの職員が休日の土日に受診しています。

 ただ、胃カメラ検査などは平日しか実施していない健診機関が多く、土日の受診の場合、希望していても受けられない検査もあります。そのため、平日に「ヘルス休暇」を取って受診すれば、健診の予約も入れやすくなるのに加え、健診受診率と保健事業の実施率の向上も期待できます。

──糖尿病の死亡率、全国ワースト

佐藤さん ▶

 徳島県は糖尿病の死亡率が全国ワーストです。また、積極指導には該当しない、ボーダーラインぎりぎりの隠れ肥満も多いです。

田岡さん ▶

 徳島県は、外来受診時の病歴の上位に、糖尿病と高血圧が多いと聞きます。健康スコアリングレポートでは、運動不足のほか、血糖値が高い、睡眠不足といったことが判明しました。

宇治さん ▶

 保健指導については、指導することで全ての対象者が改善しているわけではありません。毎年250名前後を対象に実施しますが、該当者の20%は顕著な行動変容がある人、60%は保健スタッフが働き掛けをして何とか3カ月間持続、残りの20%は何を言っても動いてくれない傾向です。

 頭では分かっているのでしょうが、電話で呼び掛けても「ちょっと忙しいので」と言って切られてしまいます。この20%の対象者をいかに行動変容させるかが鍵です。

──今後の展望と健保組合への期待

佐藤さん ▶

 運動不足の職員への対応は、対象者が1人で何かを始めようとしてもなかなか難しいですが、大勢で行うものだと、自分も参加してみようという気持ちになります。これからいろいろな企画を考えるとともに、徳島連合会のイベント企画にも積極的に参加を促したいです。

 また、「ヘルス休暇」制度の導入により、これまでバリウム検査しか選べなかったのが、胃カメラ検査の受診も可能となるなど、病気の早期発見につながるのではないかと期待しています。

青木さん ▶

 これからどの健保組合も財政が厳しくなってくると思いますが、阿波銀行健保組合は、非常にサポート体制が充実しているので、今後も健康づくりや健診事業を継続して欲しいです。

 拠出金等の義務的経費の増加に対しては保険料率を上げて何とか対処できても、残りの保険料を使ってできる保健事業は限られてしまいますが、健保組合だからこそできる事業があり、それによるメリットも非常に多いので、大事にしたいと思っています。

田岡さん ▶

 近年、保健指導の実施率は約70%で、対象者が毎年約250名で推移しており、減少していません。対象から外れた人もいれば新たに入ってくる人もいるので、何とか対象に入ってくる人を減らしたいと思っています。そのためICTを活用し、多くの加入者が気軽に参加できるような健康イベントを開催したいです。また、徳島連合会と徳島県のウオーキング協会が連携して行うウオーキングイベントにも注目しています。

宇治さん ▶

 やはり健康は、自分で考えて行動するのが重要で、健保組合はそのきっかけを提供するのが役割だと認識しています。

 無理やりスポーツクラブに連れて行っても効果はありません。根気強く情報提供したり、継続的に支援することで、時間はかかっても、なかなか変わってくれない20%の対象者がいつか行動変容すると信じ、取り組みを続けていきたいと思います。

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