健康コラム
離れて暮らす親のケア vol.65
NPO法人パオッコ理事長の太田差惠子さんが、親と離れて暮らす子の介護に関する悩みや不安について、事例を交えながら親のケアを考えていきます。
【コラム執筆】
NPO法人パオッコ
~離れて暮らす親のケアを考える会~
理事長 太田差惠子
20代、30代で親が倒れることも
親の介護の悩みを抱えるのは、40代半ばから60代までが多いといえます。しかし、20代、30代のときに親が倒れてしまうことも……。
若いときに親が倒れると、周囲に同じような経験をしている知人が少ないため、情報が入りにくく、抱え込みがちです。Mさん(32歳)は、恋人からプロポーズされたのと同時期に母親(62歳)が脳梗塞で倒れました。父親とは離婚しています。命は助かったものの、半身にマヒが残りました。Mさんが結婚を考えている男性は、転勤族です。母親を置いて家を出る決心がつかず、「別れる」という結論にいきつきました。
Mさんの気持ちは、よく分かります。けれども、「親が要介護になったら結婚できない」は、早合点では。母親は、娘が自分のために結婚をあきらめたと知れば、苦しむことになるでしょう。
日本の社会保障は、子どもが身近にいなくてもやっていけるほどには成熟しています。思い切って、家を出て世帯を分ければ、利用できるサービスが増えることもあります。加齢が原因とされる病気により支援や介護が必要となれば、65歳未満でも、介護保険のサービスを利用することもできます。脳梗塞も、その対象です。
現在、親の介護に悩んでいる中年世代も、自分だって、いつ倒れるか分かりません。日ごろから、子どもに対して「あなたの人生を優先しなさい」と、言っておきたいものです。結婚に限らず、仕事のことや夢のことなど、「親のために」と重大な決断をされると後悔を残すこともあります。