健康コラム
離れて暮らす親のケア vol.59
NPO法人パオッコ理事長の太田差惠子さんが、親と離れて暮らす子の介護に関する悩みや不安について、事例を交えながら親のケアを考えていきます。
【コラム執筆】
NPO法人パオッコ
~離れて暮らす親のケアを考える会~
理事長 太田差惠子
父親他界後の母親の生活費は?
両親とも健在の場合、2人分の年金で生活していることが多いと思います。そして、先に父親が亡くなると、母親にとって頼りになるのが遺族年金です。ただし、受給額は父親の職業や収入、母親の働き方などによって違いが生じます。
Xさんの両親は自営業でした。国民年金だったので、その額は2人合わせて月々約12万円。苦しいながらも、預貯金を取り崩しつつ、何とか生活していました。
ところが、昨年、父親は病気で他界。国民年金には遺族年金という考え方はないため、母親は月々6万円ほどで生活しなければならなくなりました。「まだ預貯金があるので、今は何とか。でも、将来、母に介護が必要になれば、経済的に支援しなければ困ることになると思います」とXさん。
一方、Yさんの父親は会社員でした。父親の生存中、母親と2人分の年金で月々22万円ほどを受け取って暮らしていました。父親が亡くなると母親は遺族厚生年金を受け取れるようになりましたが、母親自身の年金と合わせて月々13万円ほど。「思いのほか少なく、母はショックのようです。父の遠距離介護中は、私が通うのに必要な交通費を両親が負担してくれていましたが、母のときにはそうもいきませんね。通いの頻度が高くなると苦しくなりそうです」とYさんは話します。
多くの場合、一方の親が亡くなると、使える生活費は少なくなると思っておきましょう。想定していないと、厳しい現実を前に慌てることになります。