HOME > 健康コラム > 離れて暮らす親のケアバックナンバー > 離れて暮らす親のケア vol.155

健康コラム

離れて暮らす親のケア vol.155

介護・暮らしジャーナリストの太田差惠子さんが、親と離れて暮らす子の介護に関する悩みや不安について、事例を交えながら親のケアを考えていきます。

「自分の声」に罪悪感

高齢になると、耳が聞こえづらくなることがあります。原因の1つは加齢性難聴といわれるもので、年齢を重ねるほど進行することが多いようです。

Tさん(50代)の父親(80代)は、車で1時間ほどの実家で1人暮らしをしています。Tさんは、月に2回程、週末を利用して様子を見に行きます。父親は身体的には元気で、市の運営するスイミングプールにも週1回通っています。ただ、耳が遠く、「コミュニケーションを取りづらい」とTさん。

先日も、帰省した際、「昨夜は夕食に何を食べた?」と尋ねたのですが、父親は知らん顔。声を大きくしたところ、ようやく父親は、「えっ? 何? 何だー?」とTさんの顔を見ました。しかし、Tさんが話した内容は聞き取れていません。

「父がそんなだと、僕の声はどんどん大きくなります。父から『何を、怒っているんだ』と言われました」とTさん。せっかく会いに行くのだから、気持ちよく過ごしたいのに、うまくいかず、「帰り際、父から『怒鳴るんだったら、来ないでくれ』と言われました。申し訳ないことをしました」とTさんは肩を落とします。

親の聴力低下が気になったら、背中側から話しかけるのではなく、表情が見やすいように明るいところで、お互いの顔を見ながら話すようにしたいものです。大声で話しかけると、余計に聞こえづらくなるので、声のボリュームは上げ過ぎず、ゆっくりはっきりと。そして、「歳だから」と放置せず、耳鼻咽喉科の受診を提案してみてはどうでしょう。他の病気が隠れていないか診断のうえ、必要に応じて補聴器の提案をしてくれると思います。

バックナンバー

健康コラム
KENKO-column

HOME > 健康コラム > 離れて暮らす親のケアバックナンバー > 離れて暮らす親のケア vol.155