健康コラム
離れて暮らす親のケア vol.153
介護・暮らしジャーナリストの太田差惠子さんが、親と離れて暮らす子の介護に関する悩みや不安について、事例を交えながら親のケアを考えていきます。
搬送が遅れて寝たきりに
救急車の台数は限られています。安易に利用すると、本当に必要としている人のところへの到着に遅れが生じます。実際のところ、軽症の搬送者も多いようで、「救急車で運ばれても入院に至らなかった場合は有償」とする取り組みを始めた自治体もあります。しかし、逆に、救急車を呼ぶ必要があるのに、ためらうケースもみられます。
Rさん(50代)の両親は実家で2人暮らしです。2年ほど前、父親は夜、入浴を終えて浴室から出たところで倒れ込みました。母親は「救急車を呼ぶわ」と言ったのですが、父親が「大丈夫、楽になった。サイレンはご近所に迷惑だ」と言ったので、朝まで様子をみることにしました。ところが、翌朝、父親は身体をまったく動かせません。
救急搬送したところ、脳梗塞と判明しました。倒れてから12時間が経過しており重篤化。現在、父親は寝たきりに近い状態で母親が介護しています。Rさんは月に1回、両親の様子を見るために帰省。「あのとき、僕に連絡してくれていれば、すぐに通報したのに」とRさんは悔しがります。
救急車を呼ぶか、呼ばないか、高齢の親は冷静に判断できない可能性もあるでしょう。しかし、〝倒れる〟のは突然です。「もし、迷ったら、必ず連絡をして」と日頃から伝えておきましょう。また、多くの地域では、「救急安心センター」を開設しています。「救急車を呼んだ方が良いかどうか」「具合が悪いが、すぐに病院に行った方が良いかどうか」などについて相談できます。電話番号は「#7119」。家族間で番号を共有しておきたいものです。