健康コラム
離れて暮らす親のケア vol.150
介護・暮らしジャーナリストの太田差惠子さんが、親と離れて暮らす子の介護に関する悩みや不安について、事例を交えながら親のケアを考えていきます。
差し迫っていないうちに施設見学
離れて暮らす高齢の親の生活を支えながら、「いつまで1人暮らしが可能なのだろう」と不安に思っている人は多いのではないでしょうか。
Tさん(男性63歳)は勤務先が65歳定年なので、この先の働き方を考えているところだといいます。しかし、Tさんには気がかりなことがあります。遠方の実家で1人暮らす93歳の母親のことです。「母を見るために、向こうで再就職することも考えています。でも、妻は僕の実家には行かないでしょう。僕が母の世話を全部やって、仕事もして……。具体的に考えると不安なのです」とTさん。母親は「来てくれなくても、1人で大丈夫」と言っているそうです。
長寿社会となり、Tさんの母親のように90歳を過ぎても元気に1人暮らしをしているケースが増えています。子が定年を迎えて、親のところに移住する話も耳にします。もちろん、それも選択肢の1つですが、不安なら無理をせず、「1人暮らしが難しくなったら施設へ」という方法も一案ではないでしょうか。
本人の意向次第ですが〝施設もあり〟なら、将来に備えて親子で見学してみませんか。差し迫っていない段階での見学は、冷静な目で見ることができる利点があります。実際には、介護が必要になっても、ホームヘルプサービスなどを利用し在宅での1人暮らしを継続できるかもしれません。今からお気に入りの施設を探しても、空きがなくそこには入れないことも考えられます。しかし、必要になったときに、家族間の共通認識や一致した方向性が決まっているとスムーズに行動できるので、親子双方の安心につながるでしょう。