健康コラム
離れて暮らす親のケア vol.145
介護・暮らしジャーナリストの太田差惠子さんが、親と離れて暮らす子の介護に関する悩みや不安について、事例を交えながら親のケアを考えていきます。
趣味を続けるのは身勝手?
趣味を大切に育んでいる人は多いと思います。仕事をがんばる原動力となることもあるでしょう。しかし、そんな日常に親の介護がプラスされると……。
Eさん(女性40代)の趣味はジャズダンスです。会社が休みの週末は習うだけでなく、日曜のシニアクラスのインストラクターも務めています。「私にとってダンスは生きがいなんです」とEさんはにっこり。しかし、1年ほど前から遠方の実家で1人暮らしをする母親(80代)に介護が必要となりました。ダンスがあるので、泊まりでの帰省が難しく、日帰りで月に2回様子を見に帰るのが精いっぱい。「実家の近所の親戚から、『もっと、帰ってこい』とうるさく言われます。母も、私がダンスをしていることを良く思っていません」とも。「身勝手だ」と親戚や母親から責められ「ダンスをやめるべき?」と悩んでいました。
家族に介護が必要になると、趣味どころか、仕事を続けることさえ、罪悪感を抱く人もいます。しかし、多くの場合、介護は長期戦です。自分の生活を我慢していると、親の長生きを恨むことにならないでしょうか。
もしかすると、介護の状況によっては一時的にダンスを休まざるを得なくなることがあるかもしれません。けれども、あくまで〝お休み〟とし、「自分ができること・できないこと」のライン引きは大事だと思うのです。ケアマネジャーなど介護の専門職とも連携し、大切にしていることはできる限りやめない。〝身勝手〟どころか、気持ちよく介護を行うためのパワーになるのではないでしょうか。