健康コラム
離れて暮らす親のケア vol.122
NPO法人パオッコ理事長の太田差惠子さんが、親と離れて暮らす子の介護に関する悩みや不安について、事例を交えながら親のケアを考えていきます。
【コラム執筆】
NPO法人パオッコ
~離れて暮らす親のケアを考える会~
理事長 太田差惠子
親と同居する弟が介護に無関心
Tさん(50代女性、愛知)の母親(80代)は静岡の実家で、Tさんの弟と2人暮らしをしています。もともと別居していた弟は母親の介護をするからと実家に戻ったのですが、仕事を辞めてしまい、食事の用意や洗濯も母親が行っているのだとか。「今は、要介護1で、身の回りのことはできます。でも、今後、要介護度が重くなったら……」とTさんは気が気でない様子です。Tさんが電話やメールをしても弟は無視。会いに行っても、自室にこもってTさんとは顔を合わせない状況です。
もしかすると、家事や弟の世話をすることが母親の生きる励みになっているかもしれません。しかし、母親の心身の衰えが進めば、そうもいかなくなるでしょう。弟のことを信頼できないのなら、母親の担当のケアマネジャーに相談を。気掛かりなことがあれば連絡をくれるようにお願いしておきましょう。
万が一、弟がそばにいるにもかかわらず必要な世話を行わなかったり、サービスの利用を妨げたりすれば、母親の命に危険が及ぶことも。そうなれば、「介護放棄」という虐待です。母親と弟を引き離すことが必要となるかもしれません。介護者の病気や虐待を疑うような緊急時に対応できるよう、特別養護老人ホームなどでは空きベッドを用意しています。そんなことは起きないと信じたいですが、ケアマネジャーと連携しながら2人の様子を見守りましょう。