健康コラム
賢い患者になろう〜患者の悩み相談室〜 By COML vol.90
「賢い患者になりましょう」を合言葉に、患者中心の開かれた医療の実現を目指す市民グループ「COML(コムル)」が、読者からの電話医療相談に丁寧に答えていきます。
【相談担当】
NPO法人ささえあい医療人権センター
COML(コムル) 山口 育子
意識のない姉に治療をして欲しい 妹の希望は受け入れられないの?
相 談1人暮らしをしていた74歳の姉が自宅で転倒しているのを近所の人が見つけてくれ、病院に運ばれました。大腿(だいたい)骨を骨折していると分かって手術となり、その後リハビリを受けていました。ところが、ある日突然意識を失って倒れてしまったのです。病院は脳に問題があると判断し、姉は脳外科のある病院に搬送されました。
脳外科で詳しい検査をしたところ、意識を失った原因は脳にがんが転移していることだと分かりました。そこで元の病院に戻されたのですが、さらに検査を受けた結果、原発は肺がんだと診断されました。今の病院には緩和ケア病棟があるので、「緩和ケア病棟を希望するなら、このまま当院で診ます」と言われました。詳しく聞いてみると、緩和ケア病棟では積極的な治療はせず、栄養を点滴で入れるぐらいだというのです。医師にその理由を聞くと「お姉さんは意識のない状態が続いているので、抗がん剤などの治療をして副作用が出た場合、命を縮める結果になってしまう可能性があります」と言われました。私がそれでもいいから治療をしてほしいと頼んだのですが、聞き入れてもらえませんでした。
今積極的な治療を引き受けてくれる病院を探しているのですが、受けたい医療が受けられないなんておかしいと思いませんか?
回 答山口育子(COML)
お姉さんが意識を失ったのは肺がんの脳転移が原因で、「今後意識が回復することは望めない」と言われていたため、本人の希望を聞くこともできない状況でした。また、妹さんは離れたところで暮らしていることもあり、これまで病気になったときにどうしたいかという話をしたことが一切なかったそうです。それを聞いて、妹さんの考えで医師と交渉をしていることが分かりました。
お話を伺っていると、原発の肺がんの状態や脳転移の状況について詳しく説明を受けていないことが分かりました。治療を希望するにしても、病状を正確に認識することが大前提です。その上でどんな治療が可能なのか、その治療の目的やメリット、デメリットなどを確認し、冷静に医療者と話し合って治療方針を決めることが大切だとお伝えしました。
認定NPO法人ささえあい医療人権センターCOML(コムル)
「賢い患者になりましょう」を合言葉に、患者中心の開かれた医療の実現を目指す市民グループ
詳しくはCOMLホームページへ https://www.coml.gr.jp/
電話医療相談:TEL 03-3830-0644
〈月・水・金 10:00〜13:00、14:00〜17:00/土 10:00〜13:00〉
ただし、月曜日が祝日の場合は翌火曜日に振り替え
提供:健康保険組合連合会
放送:ラジオNIKKEI 第1 毎月第4金曜日 17:20~17:40
聴取可能アプリ:radiko、Apple Podcasts、Spotify