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健保ニュース 2025年4月中旬号

柔整療養費検討専門委
オンライン請求導入 中間とりまとめを議論
8年度稼働目標は見直し

社会保障審議会医療保険部会・柔道整復療養費検討専門委員会(遠藤久夫学習院大学長)は3月31日、柔道整復療養費のオンライン請求導入について議論した。

この日の会合で厚生労働省は、柔道整復療養費のオンライン請求導入等に関するワーキンググループ(WG)による「柔道整復療養費のオンライン請求導入等について(中間とりまとめ)」を報告した。

政府の規制改革実施計画では、柔道整復療養費について、公的な関与の下に請求・審査・支払いが行われる仕組みやオンライン請求の導入にかかる検討を行うとしている。これを受けて設置したWGの9回にわたる議論を取りまとめた。

基本的な考え方として、▽すでに行われている実務との接続にも配慮しつつ、簡素で分かりやすく、セキュリティが確保された仕組みとする▽関係法令は改正せず、原則として療養費の受領委任制度に関わる当事者が協定または契約を締結し、被保険者が療養費の受領を施術管理者に委任する現行の仕組みを維持する▽オンライン請求の事務フローは、療養費に関する健康保険法第87条第1項の規定で「保険者がやむを得ないものと認めるときは、療養の給付等に代えて、療養費を支給することができる」とされていることを踏まえ、原則として被保険者が保険者に請求することを前提として構築する▽事務やシステム運用の効率化を図るため、柔道整復療養費特有の事情に適切に対応しつつ、療養の給付の事務フローも参考に検討する──と整理した。

個々の検討項目として、①審査支払機関の位置づけ、審査のあり方②過誤調整の取り扱い③署名・代理署名の取り扱い④紙請求等の取り扱い⑤オンライン請求システムの構築⑥施術所管理⑦復委任──について現状と課題、検討の方向性が示された。

①は、オンライン請求システムとオンラインネットワークを使用し、請求受付、審査、支払処理を行うこととし、審査支払機関が関与する事務フローを基本とする。審査には、全保険者が参加する仕組みを目指す必要があるとした。

⑦は、オンライン請求導入の目的のひとつが、請求代行業者による不正行為の防止であることから、復委任団体は関与しない仕組みとする意見がある一方、小規模な施術所が多い業態を踏まえ、復委任の取り扱いを検討すべきとした。

また、当初の令和8年度稼働目標のスケジュールを見直し、今後のWGでの課題整理を踏まえ、同専門委員会で議論する。

幸野参与
保険者審査の見える化を要請

健保連の幸野庄司参与は、基本的な考え方に対し、▽保険者による療養費支給の最終決定▽受領委任制度の継続──について理解を示した。一方、オンライン化にあたっては、保険者間で異なる審査方法や制度の標準化が課題になると言及。「仕組みの構築には、統一したイメージを持っているのか」と疑問を呈した。

事務やシステム運用の効率化を図るため、柔道整復療養費の特有の事情に適切に対応しつつ、療養の給付の事務フローも参考に検討を進めるとの方針が示されたことに対し、「最も重要な課題」と指摘。

「療養の給付と比べ、柔道整復療養費の審査ルールはシンプルなので、ロジック構築されたコンピュータチェックだけで審査は完結するのではないか」と見通す一方、「療養費の保険給付の対象に該当するかどうかについては、現行の療養費支給申請書でも判断ができない」と現状を訴えた。

「保険給付の対象外となる請求は保険者からの患者照会によって初めて判明する」と説明し、「コンピュータチェックだけで審査すれば見過ごされたままになる」と懸念を示した。「効率性を最重視した検討を進めると請求の妥当性を見落とすことになる」と注意喚起し、審査・点検についてWGで検討するよう要請した。

個々の検討項目について、①は、療養の給付で審査等を担う支払基金には被用者保険のデータの蓄積があり、インフラ構築のために保険者が行ってきた投資を有効活用する観点からも、支払基金が療養費の審査・点検に関わることは、支払基金の責務との考えを示した。

⑦は、大手復委任団体の詐欺事件を契機に、オンライン請求導入の目的のひとつとして復委任団体を排除する方向性が検討されてきたと指摘し、「復委任団体の関与はあり得ない」との考えを表明した。

中間とりまとめでは、一部関与を容認する意見がある点を問題視し、リスクやデメリット、保険者にとってのメリットを提示したうえで検討することを要請した。

さらに、今後のWGの検討では、保険者によって異なる審査方法や制度を見える化することを要望。「全体を示したうえで、各論を議論していくべき」との見解を示した。

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