健保ニュース
健保ニュース 2025年4月上旬号
令和7年度の総合組合予算概要
経常収支1278億円の赤字
保険料率 平均9.87%に上昇
全国総合健康保険組合協議会(会長・鈴木一行出版健保組合理事長)は3月24日に開いた定例総会で、全国の総合組合の令和7年度予算概要を報告した。
全総協会員243組合の7年度の経常収支差引額は合計1278億269万7千円の赤字を計上した。
保険給付費や後期高齢者支援金が年々増加する一方、前期高齢者納付金は、5年度の精算の影響により前年度比▲4.19%と大きく減少。被保険者数の同1.85%増、平均標準報酬月額の同2.15%増など適用状況の伸びが保険料収入を同4.24%に押し上げ、過去最大の経常赤字を計上した前年度に比べ、赤字幅は943億8991万4千円に縮小した。赤字組合は前年度から30組合減の200組合となったが、依然、全体の82%超を占めている。
保険料率を引き上げた組合は21組合で、平均保険料率は前年度比0.0136ポイント増の9.8692%に上昇した。協会けんぽの平均保険料率(10%)以上を設定する組合は同1組合増の104組合に達し、全体の約43%を占める。協会けんぽと同じ10%を設定する組合は41組合、10%超~10.5%未満が37組合、10.5%以上~11%未満が20組合、11%以上が6組合となった。
会員組合の適用状況をみると、被保険者数は同1.85%、12万5128人増の688万3104人。平均標準報酬月額は同2.15%、7879円増の37万5108円、平均標準賞与額は同3.15%、2万7042円増の88万6108円の上昇を見込む。
7年度予算の経常収入は、保険料収入は同4.24%、1408億8956万3千円増の3兆4623億9927万7千円を計上。国庫負担金や特定健診等事業収入などを合わせた経常収入総額は同4.23%、1415億1562万円増の3兆4873億9459万7千円となる。
経常支出総額は、同1.32%、471億2570万6千円増の3兆6151億9729万4千円。納付金は同▲0.34%、48億7892万6千円減の1兆4316億6725万8千円となった。このうち前期高齢者納付金は同▲4.19%、255億5316万1千円減の5845億901万5千円、後期高齢者支援金は同2.50%、206億7165万円増の8469億6468万6千円。
義務的経費に占める拠出金負担割合は同0.65ポイント減の42.79%に低下したが、半分近くを占める高い負担水準となっている。
保険給付費は同2.38%、451億2762万2千円増の1兆9399億5428万6千円で、法定給付費が同2.35%増、439億3856万3千円増の1兆9144億8440万5千円と見込んだ。
介護保険料率
平均で1.7230%
全総協はこの日、令和7年度の介護保険収支の予算概要も明らかにした。会員243組合の介護保険料率の平均は、前年度比0.0315ポイント減の1.7230%に低下した。
会員組合の介護保険第2号被保険者数は前年度と比べ0.44%、1万9599人増の445万1270人で、平均標準報酬月額は42万1281円(前年度比7536円増)、平均標準賞与額は103万2046円(同8万2182円増)だった。
なお、この日の全総協総会では、鈴木会長(青島和宏副会長代読)の冒頭あいさつに続き、厚生労働省保険局の佐藤康弘保険課長、健保連の佐野雅宏会長代理が来賓あいさつした。
佐野会長代理あいさつ
健保組合 団結力、組織力を向上
今の健保組合を取り巻く財政状況について、直近のところ、賃上げにより収入が一定程度プラスになってきた。医療費については、一時の大幅な伸びの状況からみると、若干落ち着いてきた。プラス要素はあると思うが、それでもやはり赤字の基調が変わっていないというのが現実だ。当然この間、総合組合も含む健保組合の保険料率の引き上げ等により、その部分でも財政上はプラスに働いたわけだが、それでもこれだけ厳しい。
健保組合をめぐる財政状況はやはり厳しい状況であるということは何ら変わっていないという認識でいる。そういったなかで今、医療保険制度改革も色々な動きがあるが、昨年秋以来、健保連から主として国に対して「高額療養費制度の見直し」、と「高齢者窓口自己負担割合の見直し」の2つを主軸に主張してきた。
皆さん承知のとおり、高額療養費制度については残念ながら今回見直しが凍結されることになった。無論、これから秋に向けてまとめるということだが、やはり、このような件を見ていて感じるのは「現役世代の負担軽減」という言葉は、直近、相当に政治を含めて世の中に定着してきたと思うが、その総論部分は賛成されても、なかなか各論になると色々な方の利害が絡んで前に進まない、このような状況が明らかになっている。
また、直近の与野党が逆転しているという状況において、色々な面で大変難しい状況になっている。そういった状況ではあるが、われわれ健保連としてどのようにやっていくかということになると、これまでも要望してきた事項を粛々とやっていくしかない。
全体としての高齢者医療制度の見直し、ここには先ほど申し上げた高齢者の窓口負担割合の問題、高額療養費制度の問題、あるいは従来から申し上げている現役並み所得者に対する公費投入、こういった部分も含めて粛々と要望していくしかない。
直近見えるところのスケジュールとしては、まさに夏前には出るであろう「骨太方針2025」、そして、来年度の予算概算要求に向けた要望、こういったところを中心に、今言ったことを組み立てて、与野党問わず主張していくしかない。
一方で、足元の課題だが、今年1年をみた場合に、やはりマイナ保険証の実施に向けての準備がある。今年12月に予定されている現行の健康保険証の完全廃止に向けた対応が極めて重要だ。昨年12月に新規取得者の保険証発行が廃止されて以降、マイナ保険証の利用率は伸びてはいるが、それでも12月段階でいうとまだ25%程度で、まだまだ目標には程遠い状況だと言わざるを得ない。このままではマイナ保険証を利用できない加入者向けに発行することになっている資格確認書の事務に大きな負担がかかることになってしまう。この資格確認書の発行をいかに少なくするかということが極めて重要だと思っている。
無論、この話はわれわれ健保組合だけの努力で達成できる話でもないので、健保連としても、厚生労働省をはじめ関係省庁への働きかけを行っていきたい。
また、健保組合の実務関連の対応として、来年度に予定されている「子ども・子育て支援金」の徴収事務に向けた準備が今年度に必要となる。システム改修対応等についても政府の方で措置されている部分があるが、いずれにしても健保組合の実務負担を少しでも減らせるようにしていきたいと考えている。
もう1点、3月に「『ポスト2025』健康保険組合の提言」をまとめ、近々、健保組合専用イントラネット等にも掲載する予定。また、来月にはいわゆるマスコミ向けの発表をしていきたい。
今回のこの提言に関し、昨年4月に健保連の米川孝副会長を座長として常任理事会メンバーによるWGをつくり、そのなかで検討を進めてきた。従来とは異なり、フェーズを2つに分けた。
1つのフェーズはわれわれ健保組合の被保険者や加入者にもっと医療保険制度のことを知ってほしい、また、健保組合の厳しい状況を知ってほしいとの思いから、アンケート方式を活用した資料をつくり、これをもって色々なアンケートの結果を集めた。
例えば、「医療費の自己負担が年代によって異なり、子どもの医療費は実は無料ではないということを知っているか」との問いに対して、「初めて知った」との回答が3割、「知っていたがより理解が深まった」との回答が4割以上というようなことや、「健保組合は保険料の約4割を高齢者医療費のために拠出していることを知っているか」という問いについても、「初めて知った」との回答が半分程度ということがあり、やはりまだまだ健保組合の状況や、医療保険制度を知らない方が多数いることを改めて知った。
こういった点を含めて、今回の提言では、加入者、国民へのお願い、それから、健保組合としての約束やチャレンジをまとめている。語呂合わせではないが、加入者、国民に対しては「3つのお願い」、健保組合の約束は「4つの約束」、それから「5つのチャレンジ」というような目標を記載している。
こういったことも含め、加入者、被保険者はもとより事業主、国民に対してもっと働きかけをして、そのうえでわれわれとしても要望事項、先ほど申し上げた政府に対する要望も含めて取り組んでいきたい。
このようなことを含めてわれわれ健保組合の団結力、組織力を高めて発信していかなくてはいけない。ぜひとも皆さんにも活用いただければと思っている。
大変厳しい状況に変わりはないが、われわれ健保連としても少しでも健保組合の皆さんの役に立てるように今後とも取り組んでいきたいので、よろしくお願い申し上げる。
