健保ニュース
健保ニュース 2025年4月上旬号
伊藤常務理事が情勢報告
現役世代の負担軽減へ
対外的な発信力を向上
健保連の伊藤悦郎常務理事は3月21日の理事会で、最近の情勢を報告した。政治状況については、高額療養費制度の自己負担限度額の見直しがいったん凍結されたことや、7月に控える参議院選挙等を踏まえ、「全く予断を許さない状況」と言及。現役世代の負担軽減の実現に向け、与野党双方に対する要請活動を粛々と行っていくために、「対外的な発信力を高めてアピールしていくことが極めて重要」と強調した。また、今年12月に控える現行の健康保険証の完全廃止への対応として、健保組合からの意見を踏まえつつ実務的な改善に取り組むとしたほか、「子ども・子育て支援金制度」の準備については、厚生労働省をはじめ、関係省庁と連携し、少しでも健保組合の業務負担を減らせるよう努めていくとともに、的確な情報提供を行っていく考えを示した。(伊藤常務理事の情勢報告要旨は次のとおり。)
本日は、政治状況を踏まえた当面の対応と医療費の動向について報告する。
最初に政治状況を踏まえた当面の対応状況について。政治状況は、ここ1、2か月の状況をみてもさらに混迷が深まっていると感じている。われわれ健保組合に関する高額療養費制度の自己負担限度額の見直しについても、先に宮永会長がコメントしたように凍結となっている。
また、政府が提出した令和7年度予算案も再修正ということで、今後審議を行っていくことになっている医療法等改正案や年金改正法案についても、与野党の駆け引きがさらに強まっており、法案成立の見通しも立っていない。7月の参議院選挙を控えているなか、全く予断を許さない状況だ。
健保組合・健保連としての動きについても、そうした状況のためなかなか難しい部分があるが、喫緊の課題である現役世代の負担軽減の実現に向け、「骨太方針2025」や来年度予算の概算要求にわれわれの要求を取り入れていただけるよう、与野党双方に対して要請活動を粛々と行っていくしかない。
そのためにも、本日審議いただく「『ポスト2025』健康保険組合の提言」も含め対外的な発信力を高めてアピールしていくことが極めて重要だ。健保組合の皆さんにおかれても加入者や事業主への説明などを通じ、われわれの理解者を増やすようご支援ご協力をよろしくお願い申し上げる。
健保連本部としても「提言」に盛り込んだ健保組合の取り組み目標の実現に向け、保険者機能の強化、あるいは広報事業の展開を検討している一方、足元の課題についても着実に取り組んでいく必要がある。
1つは、今年12月に控える現行の健康保険証の完全廃止への対応。マイナ保険証だからこそ実現できる「命を守るカード」として定着していくよう、資格確認書の発行の削減に取り組んでいただくとともに、健保組合の皆さんからの意見もいただきながら実務的な改善にも取り組んでいきたいと考えている。
もう1つは、令和8年度から始まる「子ども・子育て支援金制度」に向けた準備。基幹システムの改修や実務面での準備も必要となってくる。健保連本部としても厚生労働省をはじめ、関係省庁と連携し、少しでも健保組合の業務負担を減らせるよう努めていくとともに、的確な情報提供を行っていく。よろしくお願いする。
コロナ特例の廃止等で
医療費の伸びは低下傾向
医療費の動向について報告する。1人当たりの医療費の対前年度の伸び率の動向をみるとわかるとおり、新型コロナウイルス感染症が猛威を振るった令和3年度、4年度については10%を超えるような高い伸びが続いている状況だった。
それに対し、6年度の上期については0.33%、第3四半期については3.14%の伸びということで、新型コロナの流行状況から脱してきていることが感じられる。
新型コロナの流行状況が落ち着いてきたことから、5年5月に新型コロナが5類に移行され、新型コロナに対する医療費の特例的な対応が段階的に縮小されたことにより、5年度下期をみると、3.57%と低下してきている。
そして、6年4月以降は新型コロナに関する特例が完全廃止となり、6年度上期は前年度を下回るような月が出てくるといったように、伸び率の低下という状況がはっきりとみられるようになってきた。第3四半期については、この特例の廃止の効果が5年度と6年度の両方に分散しており、上期ほど目立った低下にはなっていないが、全体として伸びが小さくなっている状況だ。
また、第3四半期については、新型コロナは収まりつつあるが、手足口病やマイコプラズマなど呼吸器系の感染症が流行したこと、そして12月にインフルエンザが流行したことが影響しているとみている。
そして、6年度の4月と6月の2段階で診療報酬改定が行われており、トータルとしてはマイナス改定といった部分も影響したとみている。
今後、7年度の医療費動向については、新型コロナに関する特例が廃止されていること、呼吸器系の疾患が例年並みの流行状況だとすると、新型コロナ流行前の動向が参考になってくる。
今後も、医療費の動向については予断を持たず適宜報告していきたい。