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健保ニュース 2025年3月上旬号

支払基金のレセプト審査業務
健保連 不適切行為への対応を報告
健保組合から驚きや不満の声

健保連は第223回総会で、支払基金「レセプト審査業務における不適切行為」への対応について報告した。

社会保険診療報酬支払基金の「レセプト審査業務における不適切行為」について、健保組合からは驚きや不満の声が挙がった。健保連は、対応チームを中心に対応を協議し、健保組合のサポートを受けながら、支払基金と対峙していく意向を示した。

本事項は、職員・審査委員が確認する目視対象のレセプトについて、令和4年6月頃から支払基金支部の約290名が画面上の「確認済」ボタン等を押下せずとも一定時間で次のレセプト画面に遷移する「レセプト審査画面の自動遷移ツール」を使用する不適切行為が行われていた事案。6年11月中旬に発覚した。

支払基金からは12月27日にようやく健保連へ報告があり、当該行為があったことは認めたものの、「審査業務についてはツールの使用が直ちに審査事務を行っていないということにはならない」とのスタンスを示した。

これに対し健保連は、▽本件は健保組合・健保連と支払基金との間の審査委託契約の根幹にかかる問題▽本件発覚時は次年度手数料交渉の最終段階にあたり、本会への報告を遅らせたことは意図的▽11月中旬の本件発覚後、本会に正式に報告があったのは12月下旬であり、支払基金と本会の信頼関係を大きく損なうもの─と問題視。

事件の重大性は極めて大きく、健保連としては、法的対応も含め毅然とした対応を行うこととし、支払基金の監督官庁である厚生労働省とも緊密に連携していく意向を示した。

年明けの1月10日の正副会長会議、常任理事会に報告し、基本スタンスを確認したうえで、本部役員、審査支払対策委員会正副委員長、顧問弁護士による対応チームを結成。

1月14日に支払基金から調査報告を受け、1月20日の審査支払対策委員会で意見交換を実施し、委員からは、「トップの責任」や「原審査の質の確保」について厳しい意見が多く出された。一方、審査支払事務手数料の7年度契約については、本事案の再発防止策等を含めた対応策を盛り込むことを条件に、契約を締結する方向で進めることを確認した。

その後、支払基金は、1月23日付けで地方組織の一部の管理職と一般職員、計25名の懲戒処分を含む292名の処分が行われたことを説明。

支払基金保険者代表理事や健保連から、「本部上層部の問題意識」や「審査の問題」等を問う6点の質問について理事長名回答を要求したが、「本部管理職に就業規則違反となるような違反行為があったとは考えていない。また、本部管理職に対する懲戒処分は行っていない」、「審査の質に関して、職員契機の審査実績が上昇傾向にあり実績に貢献している割合が高い」等と回答された。

2月4日以降、対応チームでこれまでの経緯の情報共有および支払基金の文書回答に対する意見交換、再質問に向けた方針を確認。2月13日に支払基金理事長宛に会長名での文書を渡し、同様の文書を写しとして厚労省保険局長宛にも渡した。

再質問の内容は、これまで不十分な回答に終始している「審査の問題」、「支払基金本部上層部の問題」、「再発防止策」等に対し、改めて支払基金の姿勢や対策を問う内容で、2月26日までに文書による回答を支払基金に求めている。

健保連は今後、2月21日の審査支払対策委員会における審議や、支払基金からの再質問の回答を受け、対応チームを中心に対応を協議。審査支払事務手数料の7年度契約については、支払基金からの回答を踏まえたうえで、3月18日の審査支払対策委員会、3月21日の理事会で協議を行う予定とした。

支払基金「レセプト審査業務における不適切行為」に対し、キユーピー・アヲハタ健保組合の平山匡史常務理事は、本事案へのイレギュラーな対応に謝意を示したうえで、「医療費が年々増加し、健保組合の運営が非常に厳しいなか、本事案が起こり驚いている」と発言。

本事案は、「2年間にわたり自動遷移ツールを使っていたことを組織が見逃していたというガバナンスの問題がある」と提起し、「支払基金が組織として何が問題だったかを検証し、再発防止策を示さないと健保組合は納得できない」と強調した。

健保連の対応チームに対しては、本事案の原因追求と対策防止策の報告、7年度審査支払事務手数料契約への条件設定のほか、管轄官庁である厚労省から支払基金への指導を働き掛けるよう依頼。

さらに、手数料の3階層化と再審査の手数料を新設する8年度契約の交渉にあたっては、「審査の質向上を条件として枠組みを承認している段階であり、審査の質向上の信頼がなくなった現状では白紙に戻し、再度、システム改修も含め検討する必要がある」との見解を示した。

東京広告業健保組合の渡邉修司常務理事は、「健保組合が支払う医療費と審査支払事務手数料は事業主と加入者から預かっている保険料が財源であり、国民が社会保険制度や医療保険制度を維持するために負担している保険料を健保組合の加入単位で預かっている状況」と指摘。

そのうえで、「適切な審査が行われているかを明確にしてもらわないと、今後、健保組合が支払う医療費と審査支払事務手数料が本当に正しいものなのか疑義が生じてくる」と問題提起した。

さらに、支払基金法にもとづき支払基金に対して報告を求め、検査を行い、改善命令を出せる厚労省が、適切に審査が行われているかを確認して、それに伴い健保組合は医療費と審査支払事務手数料を支払うということを明確にする必要があるとした。

健保組合からの意見に対し、健保連の松本真人理事は、「本事案が2年以上の長きにわたって行われていたこと、全国各地で発生していることからすると、組織ぐるみと考えられる」と言及。その責任や対応について、支払基金全体でしっかり取り組むよう強く要求していくと応じた。

また、8年度の審査支払事務手数料体系については、「本事案が発覚する前に諮られたもの」と述べ、「一度立ち止まり、改めて審議し直すことを要求していく」との考えを示した。

他方、「本事案は、健保組合・健保連と支払基金の契約という問題だけでなく、医療保険全体の根幹に関わる問題」との認識を示し、健保組合と相談してサポートを受けながら、支払基金と対峙していくと発言。

また、厚労省と契約当事者が合致して良い形に持っていく必要があると指摘し、連絡、要望、報告を密に取るなど、適切に対応していく意向を示した。

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