健保ニュース
健保ニュース 2025年3月上旬号
健保連第223回定時総会
宮永会長現役世代の負担軽減が不可欠
新たな「提言」を近く発表
健保連は2月21日、東京・港区のベルサール汐留で第223回定時総会を開いた。冒頭あいさつした宮永俊一会長は、高齢化のピークを迎える2040年頃に向け、高齢者医療費への拠出金負担がさらに重くなっていく見込みと指摘。このような状況を踏まえ、昨年4月から「ポスト2025」新提言検討ワーキンググループで議論を重ねてきたと言及し、近く最終とりまとめを発表する考えを示した。国民皆保険制度を将来世代に引き継いでいくためにも、過重な負担を強いられている現役世代のさらなる負担軽減が不可欠と強調し、▽世代間の給付と負担のアンバランス解消▽応能負担の推進に向けた高齢者の窓口負担割合の見直し▽持続可能な制度に向けた安定財源の確保─など、全世代型社会保障の実現に向けた課題は残されていると主張。国民皆保険制度を支えてきた健保組合が保険者機能を発揮して加入者の健康を守り、安定した運営を続けていけるよう取り組んでいくとの決意を表明した。(宮永会長の発言要旨は次のとおり。)
総会の開催にあたり、一言あいさつ申し上げる。
本日は来賓として、公務ご多忙のなか、榊原毅厚生労働省大臣官房審議官にご臨席をいただいている。後ほど、あいさつをいただくことになっているので、よろしくお願い申し上げる。
さて、昨年から今年にかけての世界の情勢を見渡すと、イスラエル・パレスチナ紛争に端を発した中東諸国の情勢は、停戦合意が無事に履行されていくか、また、ガザ地区の今後の方向性などが非常に注目される。
ロシアによるウクライナへの侵攻は、アメリカが両国にコンタクトすることで停戦交渉が始まろうとしているが、米・欧の考えや利害の違いを含め、これからの展開は、依然として予断を許さない状況が続いている。
さらに、わが国をはじめ、海外の主要国におけるリーダーの交代や、与野党勢力の逆転などに伴い、昨年後半から世界的に政治の枠組みが大きく変わり、各国の政治・経済および外交ともに難しい局面が増えているように感じている。
このように、政治・経済・社会生活全般において不確実性が増している国際情勢のなかで、日本としては、国際社会において重要な役割と責任を果たすべき国であるとの一貫した考えにもとづき、各国のリーダーと緊密に連携して、諸課題の解決に力を発揮してほしいと思う。
次に、国内の社会・経済動向に目を向けると、昨年は、訪日旅行客数がコロナ前を上回り、過去最高を更新するとともに、株価の上昇や国内の個人消費の回復基調がみられた。
さらに先月、日銀は、政策金利を17年ぶりの水準に引き上げることを決定するなど、日本経済は、着実に「デフレからの脱却」へ向かっている。
石破茂首相の施政方針演説では、「賃上げこそが成長戦略の柱」と掲げ、物価上昇に負けない賃上げを起点として、国民の所得と経済全体の生産性の向上を図っていくとしている。
経済界においても、今年を「賃金引き上げのモメンタムが定着する年」と位置づけており、企業の労働分配率アップと、1人ひとりの生産性の向上を持続させ、賃上げと消費の好循環という流れが、中小企業等へも広がり、持続的な経済成長を実現していく社会・経済構造への転換が進んでいくことを期待している。
社会保障の分野においては、出生数の減少などにより、急激な少子高齢化が進展していくなかで、年齢ではなく負担能力に応じて適切に支え合う全世代型社会保障構築に向けた改革が続けられている。
まさに、われわれがこれまで訴えてきた「現役世代の負担軽減」が世の中に認知されてきたように思う。
先月から始まった通常国会では、来年度の政府予算案や税制改正、予算関連法案などの重要な審議が予定されている。
被用者保険適用拡大や年収の壁の問題、さらには、医療提供体制や医師偏在対策といった健保組合に関連する法案も審議される予定だ。
少数与党による難しい国会運営が見込まれ、また、夏には参議院議員選挙が控えているなど政策決定に向けて緊迫した状況が見込まれるが、与野党の協議や審議の過程を十分注視していきたいと思う。
そして、今年「2025年」は、「団塊の世代」がすべて後期高齢者となる節目の年だ。
これから高齢化のピークを迎える2040年頃に向けて、高齢者医療費の増加に加えて、これを支える現役世代の急減により、高齢者に対する拠出金の負担がさらに重くなっていくことが見込まれる。
このような状況を踏まえて、昨年の4月から、新たな「提言」の策定に向けて「ポスト2025」新提言検討ワーキンググループを組織し、この春のとりまとめに向けて検討や議論を重ねてきた。
まずは加入者や国民など多くの方々に現状の医療保険を取り巻く厳しい環境やわれわれ健保組合の取り組みについて理解してもらうためにクイズ形式のパンフレットを作成して、健保組合の皆さんにもお送りし、また、先月には新聞広告を掲載したところだ。
現在、最終とりまとめに向けて検討を行っており、近々発表したいと考えている。
いつも申し上げているが、日本の皆保険制度は、誰もが安心・安全に医療を受けることができる世界に類を見ない素晴らしい制度であり、将来世代に引き継いでいくためにも、過重な負担を強いられている現役世代のさらなる負担軽減が不可欠と考えている。
世代間の給付と負担のアンバランス解消、応能負担の推進に向けた高齢者の窓口負担割合の見直し、持続可能な制度に向けた安定財源の確保など、全世代型社会保障の実現に向けた課題は、まだまだ残されている。
さらに、令和8年度からは、「子ども・子育て支援金」の実施に向けた準備や、出産費用の保険適用といった課題もある。
われわれも主張すべきは、しっかりと主張し、国民の安心のためのセーフティネットである社会保障制度を今の時代にあったものに改善していけるよう取り組みを強化していく。
そして、国民皆保険制度を支えてきた健保組合が、保険者機能を発揮し、加入者の健康を守り、安定した運営を続けていけるよう取り組んでいかなければならない。
引き続き、健保連の主張実現に健保組合の皆さんのご理解・ご協力を心からお願い申し上げる。
さて、社会保障制度を維持していくための新しい基盤となるマイナンバーカードと保険証の一体化に向けた取り組みだが、昨年12月から、新規の保険証の発行がなくなり、新たなフェーズに入った。
健保組合の皆さんにおかれては、マイナ保険証への円滑な移行に際し、様々な準備に取り組んでいただくなど、ご協力を賜り、誠にありがとうございました。
マイナ保険証は、医療の質の向上と効率化、医療費の適正化に資する、これからの時代に欠かすことのできない重要なツールだ。
今まで分散していた医療・服薬データや健診情報などを、一元的に見える化できるようになり、より良い医療が受けられるようになる。
いよいよ今年の12月には、これまでの保険証が使えなくなり、マイナ保険証を基本とする体制へ完全に移行する。
健保連では、完全移行を前に、マイナ保険証の普及の方法の1つとして、事業主を通じ4月入社の新規取得者を対象に、マイナ保険証を速やかに取得してもらう取り組みを展開している。
最近は通年採用を行う事業所も増えているので、マイナ保険証を取得することにより、結果的に資格確認書の発行がなくなり、事務の軽減にもつながる。
事業主と人事担当者、また新規取得者への説明など、健保組合の皆さんのご理解・ご協力を賜ることも多々あろうかと思うが、円滑なマイナ保険証への移行のための取り組みとして、よろしくお願い申し上げる。
健保連も、皆さんのサポートに全力で取り組んでいく。
7年度も取り組むべき問題が多々あるが、結束の強さと健保組合の特長を生かして、乗り越えていきたいと思う。
引き続き、皆さんのご協力をお願い申し上げる。
最後になるが、本日は、7年度の事業計画や予算案を中心にご審議いただく。
議員各位の活発なご審議をお願いして、私のあいさつとする。