健保ニュース
健保ニュース 2025年2月下旬号
保健師・看護師等全国研修会
新たな保健事業を推進
健保連は6日と7日に健保組合や健保組合加入の事業所に所属する保健師、看護師などを対象とした令和6年度「保健師・看護師等全国研修会」を開催した。
5年度に保健事業指針が改定されたことを受け、今年度は女性特有の健康課題やメンタルヘルス対策などの新たな保健事業の推進をテーマとして実施。2日間で、関係者148人が参加した。
研修会では、健保連の秋山実理事が「健保組合の保健事業を取り巻く環境」と題して情勢報告を行い、「少子高齢化などに伴う社会環境の変化により、生産年齢人口の大幅な減少に対応するため、働く女性を増やすとともに、高齢者のさらなる就労促進などによって生産性の向上が求められている」と説明。こうした労働者が増えるなか、健保組合が取り組むべきこととして、①女性の健康②高齢化する就労者の健康づくり③コラボへルス─を挙げた。
このうち、①は女性従業員の約5割が女性特有の健康課題で困った経験があると紹介し、「女性特有の健康課題である更年期症状や月経随伴症などを放置すると社会全体の経済損失は約3.4兆円(経済産業省試算)となる」と説明。特に、「ライフステージに応じた女性の健康支援に取り組むことが求められている」と言及した。
②は、「就労者の平均年齢が上昇し高齢化が進むことで、メタボリックシンドロームに続いて、ロコモティブシンドローム、最終的にはフレイルといった加齢に伴い筋力等が低下する問題が生じる」と述べ、20歳代から40歳代の働き盛り世代から運動習慣をつけることが必要とした。
③は、企業の健康経営と保険者の保健事業は支援内容が重複している面があると指摘し、「コラボヘルス推進のために取り組みを相互に見ていくことが肝要」と強調した。
PFSや若年層対策
6健保組合が事例報告
研修会1日目は「PFS(成果連動型民間委託契約方式)を導入した保健事業」をテーマに▽ヤマトグループ▽iDA▽東京西南私鉄連合─の各健保組合がそれぞれの取り組みを報告した。
ヤマトグループ健保組合は、11健保組合のコンソーシアムで実施した子どもを通して家族の健康と生活習慣を見直す「けんぽだより☆キッズ」を紹介。
家庭内の子どもの影響力に注目し、子ども向けに健康広報誌を制作することで、家族の行動変容のきっかけを得ることを目的とする。
また、「家族で参加する職場見学付き健康セミナー」をオンラインで開催した。事後アンケートでは96.5%の家族で、健康づくりに関する話題が家庭内で挙がり、「大人88.7%」、「子ども83.7%」の生活習慣に変化があった。
iDA健保組合は、3健保組合のコンソーシアムで実施した「アプリを利用した成果連動型生活習慣病予防プログラム」について説明。
アプリ上で、「食事×運動×体重記録×動画閲覧」の4要素をハイブリッド型イベントで展開し、ポイント獲得のインセンティブを付与することで健康意識の変容を促す。
東京西南私鉄連合健保組合は、「適正服薬とメンタル系対象者の支援強化」の取り組みを紹介。
薬物有害事象による健康被害の回避や医療費適正化などを目的として、多剤や重複服薬者などを対象に「ハイブリッド服薬通知(医療費通知に多剤・重複薬剤等に関する内容を融合)」を送付。適正服薬に関する情報提供を行うとともに、対象者を通じ医師や薬剤師に相談を促すことで医薬品の適正使用をめざす。
また、メンタル系薬剤の重複服薬者などを対象に「プライベートおくすりサロン」を送付。個人への寄り添いと同時に薬との上手な付き合い方を支援する。
研修会2日目は、「40歳未満のデータを活用した保健事業」をテーマに、▽YG▽三菱電機▽ポーラ・オルビスグループ─健保組合が事例発表を行った。
YG健保組合は、40歳未満の生活習慣見直しプログラム「やせテク2024」を紹介した。
管理栄養士による個別オンラインサポートやバランス栄養食を提供し自己管理を促進。この結果、2㎏以上の体重減少者率は昨年度比1.34倍、2㎝以上の腹囲減少者率は63%、中性脂肪減少者率は67%となった。
三菱電機健保組合は、若年層への保健指導の取り組みを紹介。
40歳到達者から新規特定保健指導対象者となる割合を抑制することを目的に実施した。①3年おきに39歳未満の全年齢に実施②3歳ごとの年齢到達者を対象に毎年実施─のいずれかの方法を事業所ごとに選択し、動機付け支援と同様のプログラムで支援する。
2020年度対象者の健診結果の推移を検証したところ、2023年時点でBMI・腹囲・体重の数値が改善していた。
ポーラ・オルビスグループ健保組合は、「データから見える若年層から始める健康支援の必要性」について説明。
被保険者の7割強が女性であることを踏まえ、月経随伴症状の改善に向けて、「ルナルナオフィス月経プログラム」を導入し、アンケートによる検証結果では、導入前に61.7ポイントだった生理中のパフォーマンス(通常時100)が、導入後に82.3ポイントへ向上した。
また、20代女性のやせを課題として、新入社員研修時にプレコンセプションケア研修やオンラインの妊活相談プログラムなどを実施している。