健保ニュース
健保ニュース 2025年2月下旬号
出産の平均的な標準費用等
厚労省が検討の方向性
佐野会長代理 給付と負担のバランスを
「妊娠・出産・産後における妊産婦等の支援策等に関する検討会」(田邊國昭座長)は5日、令和7年春頃のとりまとめに向け、出産にかかる平均的な標準費用について具体的な支援策の在り方などを検討する方向性を了承した。
この日の会合で厚生労働省は、これまでの議論を踏まえ、①出産に関する支援等②希望に応じた出産を行うための環境整備③妊娠期・産前産後に関する支援等─について検討の方向性を示した。
①は、(1)出産にかかる平均的な標準費用をすべて賄えるようにするとの基本的な考え方のもと、具体的な支援策の在り方を検討する(2)分娩取扱施設における医療提供の実態や、費用構造を踏まえた議論を行う─方針を提示。そのうえで、(3)分娩に伴う診療・ケアやサービスには、妊婦の希望にかかわらず提供されるものと、妊婦が希望して選択するものがあるとして、それぞれに対する支援の在り方を検討する必要があるのではないか─と提起した。
また、(4)周産期医療提供体制のあり方は、他の診療科とも関わる地域の医療提供体制全体のバランスの中で捉える必要があり、今後、地域医療構想や医療計画に関する検討の場で、本検討会の意見も踏まえた検討を行う─方針を示した。
①について、健保連の佐野雅宏会長代理は、「方向性に異論はない」としたうえで、(1)は、「給付と負担のバランスを踏まえた議論が必要」と主張した。「妊婦の経済的負担の軽減をめざすためには、現役世代の納得を得られるよう、当事者の妊婦も含めて現役世代の負担軽減に資するものにする必要がある」と指摘。
「自己負担が減るため、対価となる財源を確保するには、公費や保険料負担を増やすしかない」と言及し、「公費負担は税金、保険料は加入者負担となることから、公費・保険料・自己負担のバランスをしっかりと考える必要がある」との考えを示した。
(3)は、「保険適用範囲の議論に関わる重要な観点だ」と指摘。保険適用に当たっては、「出産にかかる費用の標準化をめざすことが重要」と強調し、「出産にかかる現状の支援や財源等の見える化が必須となる」との見解を示した。
(4)は、「出生数が減少し続けるなか、分娩施設の体制維持、産科医の確保、地域偏在の解消など周産期医療提供体制整備は大変重要と理解している」と言及。一方、「本件は、国のインフラ整備に関わる医療提供体制全体の問題であり、社会保険財源を用いて事業主や被保険者が負担すべきものではない」と指摘した。そのうえで、「出産費用の保険適用とは切り離し、別途解決策を考えるべき」と要請した。
松野奈津子構成員(日本労働組合総連合会生活福祉局次長)は、(1)の「標準費用」とは何を指すのかと問題提起し、「出産費用の費用構造を踏まえた議論が必要」と指摘した。
また、「医療保険財政には限りがある」と訴え、「税と保険料の性格の違いを踏まえ、目的に応じた施策を検討すべき」との考えを示した。
濵口欣也構成員(日本医師会常任理事)は、(1)に対し、「出産費用にどのような費用が含まれているのかは、医療機関によってさまざまであり、具体的な内容はこの検討会で整理することが必要」と言及。
一方、「妊産婦の負担軽減に集中し過ぎて分娩施設の経営が立ち行かなくなってしまった場合、最終的に妊産婦の選択肢を狭めることになる」と指摘した。