健保ニュース
健保ニュース 2025年2月下旬号
高額療養費の自己負担上限額見直し
福岡厚労相 多数回該当は現行額を維持
保険料負担への不安払拭も課題
福岡資麿厚生労働相は14日、令和7年8月から9年8月にかけ自己負担上限額の引き上げを3段階で実施する高額療養費制度の見直しについて、患者団体と面会し、過去12か月以内に3回以上、上限額に達した場合に4回目から上限額が下がる「多数回該当」の現行額を据え置く方針を表明した。面会後に記者会見した福岡厚労相は、保険料負担への不安払拭も課題との認識を示す一方、患者の声を真摯に受け止めたうえで長期にわたり治療を継続する患者に最大限寄り添った解決策をまとめたと発言。見直しの趣旨や内容のほか、7年度予算案修正の規模感について改めて説明する意向を示した。
2月14日の高額療養費制度の見直しにかかる患者団体との面会・意見交換は、前回の2月12日に引き続き、2度目の開催となる。
面会には、前回と同様、▽全国がん患者団体連合会▽日本難病・疾病団体協議会▽いずみの会─が出席した。
前回の面会で福岡資麿厚生労働相は、「長期で療養している患者は今回の高額療養費制度の見直しによる負担感がある」、「一度に複数月、薬を処方される患者の負担感も大きい」等の意見を患者団体から受けた。
2月14日の面会の冒頭あいさつした福岡厚労相は、「前回の面会で、皆さんから受けた切実な声を踏まえ、何ができるかを考えた」と言及。長期で療養している患者の負担感も含む具体的な対策を伝える趣旨でこの場を設けたと述べた。
面会終了後に記者会見した福岡厚労相は、過去12か月以内に3回以上、上限額に達した場合に4回目から上限額が下がる「多数回該当」の現行額を据え置くことを患者団体に伝えたと発言。
この対応により、現在、毎月治療を受けている患者や、長期処方で90日分の薬を受けることで「多数回該当」の対象になっている患者の経済的な負担は変わらないことになると説明した。
今回の高額療養費制度の見直しは、高齢化の進展や高額薬剤の普及等により高額療養費の総額が医療費全体の倍のペースで伸びているなか、日本が誇るべき大切なセーフティネットを将来にわたって堅持していくためにも必要と改めて強調。
仮に、今回の見直しをすべて行わない場合、現役世代であれば年間3000円から4200円の保険料の負担増に対応しないことになると指摘したうえで、保険料負担に対する不安の声を払拭する対応も課題との認識を示した。
一方、「長期にわたって療養を続けている患者が今回の見直しに対して不安を感じていることは事実として、そうした患者の思いに最大限寄り添う必要があると判断した」と言及。今後、できる限り理解してもらえるよう、今回の見直しの趣旨や内容について、説明に努めていくとした。
高額療養費制度の見直しは、昨年12月25日の令和7年度政府予算編成の重要事項に対する加藤勝信財務相と福岡厚労相の折衝を踏まえて決定。自己負担上限額の引き上げや所得区分の細分化、外来特例の見直しについて、7年8月、8年8月、9年8月の3段階で実施することとした。この見直しにより、7年度予算で▲200億円の財源を見込む。
年収700万円の場合、現行の自己負担上限額「8万100円」を7年8月から「8万8200円」、8年8月から「11万3400円」、9年8月から「13万8600円」に引き上げ。同様に、「多数回該当」の場合、現行の「4万4400円」を7年8月から「4万8900円」、8年8月から「6万3000円」、9年9月から「7万6800円」にそれぞれ引き上げる。
福岡厚労相が2月17日の記者会見で表明した見直しは、全体の自己負担上限額の引き上げは当初の予定通り行う一方、「多数回該当」は見直しを凍結し、すべての所得区分で現行の価格を据え置く内容。
福岡厚労相は、「日本が誇るべきセーフティネットである高額療養費制度の持続可能性と、現場で苦しんでいる患者の負担感の折り合いをどうつけるかというなかで今回の判断に至った」と発言した。
今回の見直しにより、7年度予算案の修正は必要との認識を示し、その規模感について改めて説明する意向を示した。