健保ニュース
健保ニュース 2025年2月中旬号
社保審が改革工程の進捗など議論
負担と給付の見直しに意見多数
社会保障審議会(遠藤久夫会長)は3日、会合を開き、「全世代型社会保障構築を目指す改革の道筋(改革工程)」の進捗や令和7年度厚生労働省予算案などを厚労省から聴取し、意見交換した。
翁百合委員(日本総合研究所理事長)は、「今年は団塊の世代が全員後期高齢者となり、社会保険制度を持続可能にすることが最大の課題となる」と指摘。
「若年層の低所得世帯の負担率は、OECD諸国と比較してもかなり高く、少子化につながりかねない重要な問題」と述べ、「持続的な賃金の引き上げと社会保険料の負担上昇の抑制が必要だ」と訴えた。
また、「応能負担をより進めていくことは重要」と強調し、若年層と高齢者の資産格差、高齢者間の資産格差を踏まえたフェアな負担の実現を求めた。
他方、医療・介護制度改革では、単に給付を抑制するだけではなく、医療の質、生産性やイノベーション、医療介護従事者の処遇改善等の向上に寄与するべきと主張。「病院のみならず診療所を中心とするプライマリーケア体制の構築により、医療機関の機能分化や連携を進めるべき」との考えを示し、医療DXの促進や規制改革も含めた医療提供体制改革の推進を要請した。
松田晋哉委員(産業医科大学医学部公衆衛生学教授)は、「負担と給付について国民を巻き込んで議論しなければいけない時期に来ている」と主張した。
保険給付範囲の見直しを提起し、「現行の仕組みのままでは、医療の技術革新についていけず、ドラッグラグやデバイスラグが顕在化する要因となっている」と指摘。スイッチOTC化された医療用医薬品の評価のあり方も考え直さなければならないとの見解を示した。
野口晴子委員(早稲田大学政治経済学術院教授)は、「線引きが難しい」としつつも、風邪の時の抗生剤処方など患者に益がない「低価値医療」にかかる負担を考えていかなければいけない」と問題提起した。
「低価値医療」は、およそ1000億円以上の規模で、日本の医療保険制度の中で非常に重い負担となっていると説明。
「今後、特にがん治療などに用いられる最先端の高額な薬剤が公的医療保険制度に保険収載されていくことが予想される」と指摘し、「「低価値医療」や使われなくなった医療について、保険収載のあり方も含め抜本的に見直していく必要がある」との考えを示した。