健保ニュース
健保ニュース 2025年2月上旬号
高額療養費制度の見直し
健保組合 保険料負担1300億円軽減
加入者1人当たり▲4800円
厚生労働省は、1月23日に開催された社会保障審議会医療保険部会(田辺国昭部会長)に、高額療養費制度の見直しについて報告した。
高額療養費制度の見直しは、昨年12月25日の令和7年度政府予算編成の重要事項に対する加藤勝信財務相と福岡資麿厚生労働相の折衝を踏まえ決定。自己負担限度額の引き上げや所得区分の細分化、外来特例の見直しについて、7年8月から9年8月にかけ段階的に実施する。
見直しにより、健保組合における保険料負担は1300億円、加入者1人当たり保険料は4800円がそれぞれ軽減される。
この日の会合では、厚労省が高額療養費制度の見直しについて説明した。
高齢化や高額薬剤の普及等により高額療養費の総額は年々増え、現役世代を中心として保険料が増加してきたと指摘。
セーフティネットとしての高額療養費の役割を維持しつつ、全世代の被保険者における保険料負担を軽減する観点から、住民税非課税区分を除く各所得区分を細分化したうえで、各所得区分ごとの自己負担限度額を引き上げる。
併せて、年齢ではなく能力に応じた全世代の支え合いの観点から、低所得高齢者への影響を極力抑制しつつ、外来特例の見直しを行うことにより、全世代の被保険者の保険料負担を軽減するとした。
7年8月、8年8月、9年8月の3段階で見直しを行う。
自己負担限度額は、前回見直しを行った約10年前からの平均給与の伸び率が約9.5~約12%だったことを踏まえ、第1段階の7年8月から平均的な所得層である「年収約370~770万円(月収28~50万円)」の引き上げ幅を「+10%」に設定。現行の自己負担限度額「8万100円」を「8万8200円」に引き上げる。
第2段階の8年8月からは、所得区分を13区分に細分化したうえで、所得に応じて自己負担限度額をさらに見直す。
平均的な所得層である「年収約370~770万円(月収28~50万円)」の場合、①年収約370~約510万円(同28~34万円)②年収約510~約650万円(同36~41万円)③年収約650~約770万円(同44~50万円)─の3区分に細分化したうえで、自己負担限度額を8年8月から②10万800円③11万3400円、第3段階の9年8月から②11万3400円③13万8600円─へとそれぞれ引き上げる。
70歳以上の外来上限の自己負担限度額は、8年8月から住民税非課税世帯の月額上限を1万3000円へと5000円引き上げる一方、所得が一定以下の月額上限は現行の8000円に据え置く。
他方、「一般(窓口負担2割)」は▽月額上限2万8000円(現行1万8000円)▽年間上限22万4000円(同14万4000円)─、「一般(窓口負担1割)」は▽月額上限2万円(現行1万8000円)▽年間上限16万円(同14万4000円)─に8年8月からそれぞれ引き上げる。
厚労省は、自己負担限度額と外来特例の見直しによる財政影響(満年度ベース)について、▽保険料▲3710億円▽加入者1人当たり保険料軽減額(年額)▲1100円~▲5000円▽実効給付率▲0.62%▽公費▲1570億円(国▲1110億円、地方▲460億円)─と推計。
医療保険者別にみると、健保組合は(1)給付費が「▲800億円」、(2)保険料+公費が「▲1300億円」、(3)保険料が「▲1300億円」、(4)公費が「0円」、(5)加入者1人当たり保険料が「▲4800円」となる。
協会けんぽは(1)▲1040億円(2)▲1510億円(3)▲1330億円(4)▲170億円(国▲170億円)(5)▲3500円─、共済組合等は(1)▲290億円(2)▲470億円(3)▲470億円(4)0円(5)▲5000円─。
国民健康保険は(1)▲1060億円(2)▲900億円(3)▲380億円(4)▲520億円(国▲380億円、地方▲140億円)(5)▲1500円─、後期高齢者は(1)▲2090億円(2)▲1110億円(3)▲230億円(4)▲880億円(国▲550億円、地方▲320億円)(5)▲1100円─だった。
厚労省の報告に対し、健保連の佐野雅宏会長代理は、全世代型社会保障構築の観点から、負担能力に応じた負担や、保険料負担の軽減を図るために、高額療養費における自己負担限度額の引き上げ、所得区分の細分化、外来特例の見直しに踏み込んだことを評価。
一方、現役世代は高齢者医療にかかる拠出金等について過重な負担が強いられていると訴え、さらなる現役世代の負担軽減に向けた取り組みは不可欠との考えを示した。
このため、高齢者の窓口負担割合見直しも含めた高齢者医療制度の在り方の見直しなど給付と負担の見直しに引き続き取り組むよう強く要望した。
藤井隆太委員(日本商工会議所社会保障専門委員会委員)は、「高額療養費制度の見直しはやむを得ないことであり、見直しに賛同する」と発言したうえで、皆保険制度を維持していくためには負担と給付の在り方について議論する必要があるとした。
城守国斗委員(日本医師会常任理事)は、「今回の見直しが適切なのか、患者への影響がどの程度なのか、調査・検証を行うべき」と要請した。