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健保ニュース 2025年1月下旬号

福岡連合会が福岡市で時局講演会
自民党鬼木氏 受益と負担を「見える化」
給付水準の在り方を国民と共有

健保連福岡連合会(山浦健会長)と健保連本部は9日、福岡県福岡市で時局講演会を共催した。健保組合関係者93名が集まった。時局講演会には自民党の鬼木誠衆院議員が出席し、「国政報告および医療保険の現状と課題」をテーマに講演した。鬼木氏は、責任ある財政や社会保障を運営するための選択肢として、現在の社会保障の「給付水準を下げる」か、「負担を増やす」かの2択を提言。国民の受益と負担を「見える化」したうえで、「サービス水準をどこで維持するか」、「サービス水準を減らせば負担が一定程度で済む」という社会保障の恩恵や給付水準について国民と共有する必要があるとの考えを示した。(鬼木氏の発言要旨は次のとおり。)




超高齢社会を迎え、財政、社会保障を持続可能なものにするためには、税と社会保障を一体的に改革する必要があるとの観点から、経済、財政に加え、社会保障分野にも関心を持ち、自民党の社会保障制度調査会や「国民皆保険を守る国会議員連盟」などで活動している。

税と社会保険料の負担が重く、手取り収入が減少して国民の生活が苦しくなっていることが昨年の衆議院議員総選挙の大きな争点となり、生活の苦しさを政治で少しでも楽にしてほしいという国民の思いが爆発した。

令和6年度当初予算の国の一般会計歳出額をみると、国の年間予算の3分の1は社会保障関係費が占めている。

歳出は、国からすると出ていくお金、国民からすると入ってくるお金となり、対立構図となる。

歳出に関しては、国民の受益にも目を向けて欲しいというのが私の思いだ。日本の社会保障制度は非常に素晴らしい。私が「国民皆保険を守る国会議員連盟」に参加しているのも、国民皆保険という素晴らしい制度を守るためだ。

日本の医療はすべての国民が医療にアクセスできる体制が保障され、少ない負担で皆が支え合う仕組みとなっている。この素晴らしい医療制度を守るため、財政を持続可能にする必要がある。財政を持続可能にするためには社会保障を持続可能なものにしないといけないというのが私の一番の問題意識だ。

国民の受益があるなかで、負担がどうあるべきかを考えようというのが私の言う受益と負担の「見える化」の話だ。保険制度は国民が受ける利益と、国民が支払う社会保険料と税の負担によって成り立っている。

他方、6年度当初予算の国の一般会計歳入額をみると、一番大きいのは公債金であり、国家財政で入ってくるお金のうち1番大きな費目が借金だ。国家予算の3分の1は借金によって賄われており、その次に多いのが消費税で、税収入のなかでは1番大きい。

消費税は、年々重くなる社会保障の負担が課題となるなか、すべての人が社会を支えるという公平性を追求し、1番良い財源ということで導入された。

これまで大変な苦労で導入し、税率を引き上げてここまで社会保障財源を確保してきたのが消費税だ。消費税は社会保障の財源ということを法律上でも規定している。税は国民にとっては負担そのものであるので、徴収されてうれしい人はいないし、税を支払う国民にとっては国が悪者になるが、民主主義国家では、税は国民のために使う財源としている。

国民の代表である国会議員が、誰がどういう理由でどれだけの負担をするのが国民にとって正しいかを決めることが税だ。私は、自民党の税制調査会でも幹事の役職を務めているが、誰がどういう理由でこれだけの負担をするのが皆にとって公平なのか、公正なのかということを理論だって議論している。

「社会保障のために消費税が必要だ」、「税率はどうあるべきだ」ということも話し合って決める。国家と国民は決して対立するものではなく、現在の民主主義国家では国民の代表が国民のための議論を行い、国民のための結果を出そうとしている。

そのなかで、今の社会を支えていくためには国民の負担が重たくなっているというのも十分承知している。

昭和50年から令和7年までの社会保障給付費をみると、昭和50年は年金3.9兆円、医療5.7兆円、福祉その他2.2兆円だったが、令和7年には年金60.4兆円、医療54.0兆円、福祉その他34.4兆円と右肩上がりとなり、われわれがこの負担を支えていくことになる。

軍備を持たずに経済に特化して国民生活を豊かにしていく、社会保障を充実させていくというのが戦後の自民党政治の1つの柱であり、年金、医療、福祉を充実させていった。それは、人口構造が若いうちは支えられていたが、高齢者が多数を占める社会になっていくと、入ってくるお金よりも出ていくお金の方が圧倒的に大きくなる。

日本の人口ピラミッドの変化をみると、1990年には65歳以上人口は少ないが、2020年になると、65歳以上人口がもの凄く増えてくる。団塊のジュニア世代が65歳以上となる2040年にピークを迎える。それを15~64歳の生産年齢人口が支える必要があり、今より厳しい時代が2040年に到来する。

2070年になると、団塊のジュニアはいなくなるが、人口は少子化が続き、支える側の人口はあまり増えない状況が見込まれる。この超高齢社会において、支える側の人口減少が非常に大きな課題となる。

日本では、所得に対して28.9%税負担を負っている。そこに19.2%の社会保障負担を足すと、国民負担率は48.1%となり、所得の48.1%を社会保障と税で取られる。

政府が政策を打とうとすると、お金がかかる。政策には必ず財源が必要となるので、適切に財源を確保することが責任ある政治だ。国債は借金であり、次世代に負担が押し付けられていく。われわれは、昭和の時代に積み重ねられた借金で歳出が自由にできなくなっている状況にある。

将来のことを考えてきちんとやっていかないとますます苦しい将来が待っている。責任ある財政運営や社会保障運営を行っていく必要があり、国債は財源になり得るものではない。

大きな政府にするのか、小さな政府にするのかという話であり、サービスを減らすのか、負担を減らすのかの2択となる。つまり、「現在の社会保障の給付水準を下げていくのか」、それとも、「給付水準を維持するためには負担を増やしていくのか」ということ。

財政が破綻する時は社会保障制度も破綻する時なので、いつまでも借金で賄えば良いという選択肢は私のなかではない。

現在の社会保障給付は、もの凄く恵まれている。高額医療の場合、自己負担額上限額の残りは全部、健康保険が払ってくれる。そうやって皆が守られている。この制度をどの水準で維持していくか。サービスを減らすか、負担を受け入れるか。さらに、支える人の数が減っていく人口構造であれば、支えるためには負担は増えざるを得ない。

どういう受益を受けているか、どういう負担を持っていてそれが何に使われているかを「見える化」したうえで、「サービス水準をどこで維持するか」、「サービスをこの水準まで減らせば負担がこの程度で済む」というところを国民的議論のなかで答えを出していきたいというのが私の1つの考え方だ。

高額療養費の自己負担上限額を引き上げる話がある。そういう意味では、サービスを減らすという話、負担を増やすという話が国民的な議論になってくる。その前に、今われわれが享受している社会保障の恩恵やそのレベルというのを国民と共有する必要があるということを考えているところだ。

あと、その医療でどれだけ健康寿命が維持できるか、健康保険が国民の命をどこまで管理していくかなど、費用対効果のような議論もあり、皆で支え合う持続可能な制度を守るための国民的な議論が必要と考える。

マイナ保険証の推進等
健保組合から質疑応答

講演後の質疑応答では、九州電力健保組合の杉本浩一郎常務理事が、シンクタンクの発表によると、高齢化が進んでいく日本において、年金、医療、子育てなどの社会保障の水準を今の通りに守っていこうとすると、2030年頃にかけて消費税率を20%程度まで引き上げなくてはならないという試算が示されていると指摘し、「消費税率20%で経済活動が機能するのか」、「消費税率20%まで引き上げができるのか」と質疑した。

鬼木氏は、受益と負担を「見える化」して、国民的議論のなかで合意していくプロセスが必要との考えを改めて示したうえで、「現在の世論を考えると、消費税率を引き上げるのは相当難しい」と応答。他方、社会保障と税の負担については国民が関心を持っている議論であり、正面から国民に話して理解してもらわないと、社会保障は維持できないと危機感を露わにした。

九電工健保組合の佐藤正事務長は、マイナ保険証の利用率が伸び悩むなか、政府の推進方策について質疑。合わせて、資格確認書を発行して併用利用できる状況がマイナ保険証の普及の足枷となっているほか、健保組合の事務負担も増えている現状を訴え、「政府としてマイナ保険証の利用登録の義務化を進める考えはあるのか」と質した。

鬼木氏は、「受益と負担の双方向を過不足なく一瞬にして国民とやり取りでき、国からのサービスが受けられるのがマイナンバーの特質、長所だ」と言及。こういうインセンティブをもっと充実させていけば、このインフラ無しにはあり得ないという社会が到来するとの認識を示した。

資格確認書については、「マイナ保険証に移行する方法が強硬過ぎて反発を招き、結局、紙でも出してしまうという1番半端な結果になってしまった」と述べたうえで、健保組合の事務負担が増えることに謝意を表明。マイナ保険証の利用推進へ引き続き、関与していく意向を示した。

佐野会長代理があいさつ
政治の対外活動を強化

時局講演会の開会にあたりあいさつした健保連の佐野雅宏会長代理は、「高齢者医療費に対する拠出金が大きな負担となり、現在、健保組合は大変厳しい財政運営を強いられている」との現状を指摘した。

こういったなかで、われわれが現役世代の負担軽減を訴え続けてきた結果、現役世代の負担軽減という言葉が様々なところで共通認識となり、現役世代の負担軽減に向けた動きが出てきていると言及。安定的な財源にもとづく実行を訴えた。

今後とも政治の対外活動を強化し、少しでも健保組合、加入者の皆さんの役に立てる形でもって対応していくと強調し、協力を求めた。

山浦会長が閉会あいさつ
加入者の健康保持へ尽力

時局講演会の閉会にあたりあいさつした健保連福岡連合会の山浦健会長は、「福岡県内の健保組合の多くは非常に厳しい財政状況に陥り、今後の組合運営に大きな不安を抱えている」と問題提起し、「国民皆保険制度を維持していくためには、制度の一翼を担っている健保組合の安定が何よりも不可欠」と強調した。

今後ともわれわれの主張を理解してもらうとともに、次なる先駆的な改革の必要性を訴えた。

また、健保組合においても、マイナ保険証の推進はもとより、加入者の健康を守るために組織をあげて取り組んでいくと発言。引き続きの健保組合への指導・支援を要望した。

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