健保ニュース
健保ニュース 2025年1月中旬号
次期年金制度改正へ
年金部会 議論の整理案を大筋了承
社会保障審議会年金部会(座長・菊池馨実早稲田大学理事・法学学術院教授)は12月24日、「社会保障審議会年金部会における議論の整理(案)」を大筋で了承した。
今後、厚生労働省は、政府・与党と調整したうえで、来年の次期通常国会への年金制度等改正法案の提出を視野に、法案の作成作業に着手する方針だ。
「社会保障審議会年金部会における議論の整理(案)」は、①被用者保険の適用拡大②いわゆる「106万円の壁」への制度的対応─などの次期年金制度改革の具体的な内容について整理した。
①は、働き方に中立的な制度を構築するなどの観点から被用者保険の適用拡大を進めることを基本的な考え方として示した。
そのうえで、▽短時間労働者への適用拡大▽適用事業所の拡大─などを盛り込んだ。
「短時間労働者への適用拡大」では、短時間労働者の適用要件となる(1)企業規模要件(50人超規模の企業)(2)賃金要件(月額賃金8.8万円以上)(3)労働時間要件(週所定労働時間20時間以上)(4)学生除外要件─の改革の方向性を整理した。(1)(2)は撤廃、(3)(4)は要件を見直さない。
(1)は、労働者の勤め先や働き方、企業の雇い方に中立的な制度を構築する観点から、撤廃するとした。
(2)は、就業調整の基準として意識されているとともに労働時間要件を満たすと賃金要件を満たす地域や事業所が増加していることから、撤廃するとした一方、最低賃金の動向を踏まえるなど撤廃の時期への配慮を求めた。
(3)は、働き方に中立的な制度とする観点から要件の撤廃を求める意見がある一方、事業主と被用者との関係性を基盤とした被用者保険の「被用者」の範囲の線引きについて議論を深めるとともに雇用保険の適用拡大の施行状況を見極めて検討すべきとする意見もあったことから、今回は要件を見直さない。
(4)は、就業年数の限られる学生を適用対象とする意義は大きくないなどの意見があったことから、今回は要件を見直さない。
このほか、「適用事業所の拡大」は、労働者の勤め先などに中立的な制度を構築する観点から、常時5人以上の従業員を使用する個人事業所における非適用業種を解消する。
常時5人未満の従業員を使用する個人事業所については、対象事業所数が多く把握が困難とする指摘があり、今回は要件を見直さない。
他方、「将来的には適用を拡大すべきとの意見があった」と記載した。
また、さらなる適用拡大の検討に際しては、被保険者等の構成の変化や保険者の財政などへの影響を示したうえで、保険者機能を確保する視点も含め、医療保険制度の在り方に関する議論を進める必要があるとした。
②は、「壁」を境として保険料負担による手取り収入減少のみに着目した際に、「壁」を感じる者の存在から、「保険料負担による手取り収入の減少をどうするか」を出発点として考えることを基本的な考え方とした。
厚生年金保険法に「就業調整に対応した保険料負担割合を変更できる特例」を時限的に導入する提案については、賛成意見が多かった一方、慎重意見や反対意見も多く、部会として意見がまとまらなかったと総括し、同部会の意見を踏まえ、政府において、特例の妥当性や導入した場合の具体的な制度案について検討を深める必要があるとした。