健保ニュース
健保ニュース 2025年1月中旬号
介護保険部会が次期改正へ議論
伊藤常務理事 給付と負担の見直し必須
社会保障審議会介護保険部会(菊池馨実部会長)は12月23日、令和9年度の次期介護保険制度改正に向けた議論に着手した。
この日の会合では、厚生労働省が、次期制度改正に向け、高齢化の進展(85歳以上人口の増加)、生産年齢人口の減少に対応し、介護人材の確保が課題のなか、地域の介護需要に応じてサービス確保を図っていく必要があると提起。
そのうえで、①地域包括ケアシステムの推進(多様なニーズに対応した介護の提供・整備、医療と介護の連携、経営基盤の強化)②認知症施策の推進・地域共生社会の実現(相談支援、住まい支援)③介護予防・健康づくりの推進④保険者機能の強化(地域づくり・マネジメント機能の強化)⑤持続可能な制度の構築、介護人材確保・職場環境改善(介護現場におけるテクノロジー活用と生産性向上)─のテーマについて、本部会で議論していく考えを示した。
また、2040年に向けて、人口減少のスピードが地域によって異なるなか、地域別のサービス提供モデルや支援体制を構築する必要があるとして、「2040年に向けたサービス提供体制等のあり方検討会」を立ち上げ、検討を行う方針を明示。
同検討会は、1月上中旬に初会合を開催した後、ヒアリングを行いつつ議論を重ね、来春頃に中間まとめを予定する。
中間まとめ以降は、他の福祉サービスも含めた共通の課題について検討し、来夏を目途にとりまとめることとした。
本部会は今後、所要の制度改正に向け、7年冬頃のとりまとめをめざす。
健保連の伊藤悦郎常務理事は、今後の検討について、「現役並み所得および一定以上所得の判断基準、ケアマネジメントに関する給付の在り方等の見直しが先送りされている」と指摘し、「しっかり検討、整理したうえで実施してほしい」と主張。これ以上、議論を先送りすることのないよう強く求めた。
また、「第9期介護保険事業計画から、第1号保険料額より、現役世代が負担している第2号保険料額の方が高くなっている」と問題提起。現役世代の負担を軽減する観点からも、検討を実施するよう要望した。
さらに、2040年を見据えた介護サービスの確保に理解を示しつつ、「制度の安定性や持続性を財政的にどのように確保していくのかということも忘れてはならない」と指摘。
そのうえで、「より踏み込んだ、幅広い観点での給付と負担の見直しが不可欠」と強調した。
佐藤主光委員(一橋大学国際・公共政策大学院、大学院経済学研究科教授)は、高齢者の厳しい生活状況に理解を示す一方、「現役世代も同様に困っており、第2号保険料をできる限り抑える観点からも、受益と負担の話は避けて通れない」と言及。第1号保険料への所得比例型の導入など、所得に応じた負担の見直しが必要とした。
江澤和彦委員(日本医師会常任理事)は、介護事業所の倒産件数が毎年最多を更新していることなどを踏まえ、「介護保険制度の持続可能性は赤信号となっている」と問題提起。
抜本的な財源確保を含む対応が不可欠と発言し、財源について幅広く議論すべきと主張したうえで、「新たな公費の投入も検討せざるを得ない」との考えを示した。