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健保ニュース 2025年1月中旬号

高額療養費・自己負担上限見直し
保険料は3700億円の減に
外来特例 月額2千円~1万円引き上げ

厚生労働省は12月27日、令和7年度予算案に合わせ、高額療養費制度の見直しに関する資料を公表した。

高齢化や高額薬剤の普及等により高額療養費の総額は年々増加し、現役世代を中心とした保険料が増加しているなか、セーフティネットとしての高額療養費の役割を維持しつつ、全世代の被保険者の保険料負担の軽減を図る観点から、住民税非課税区分を除く各所得区分の細分化を行ったうえで、各所得区分ごとの自己負担上限額を引き上げる方針を明示。

併せて、年齢ではなく能力に応じた全世代の支え合いの観点から、低所得高齢者への影響を極力抑制しつつ、外来特例の見直しを行うことにより、全世代の被保険者の保険料負担を軽減するとした。

7年8月、8年8月、9年8月の3段階で見直しを行う。
 自己負担上限額は、前回見直しを行った約10年前からの平均給与の伸び率が約9.5~約12%だったことを踏まえ、第1段階の7年8月から平均的な所得層である「年収約370~770万円(月収28~50万円)」の引き上げ幅を「+10%」に設定。現行の自己負担上限額「8万100円」を「8万8200円」に引き上げる。

また、平均的な所得層を上回る所得区分の(1)年収約770~1160万円(月収53~79万円)は「+12.5%」、(2)年収約1160万円~(同83万円~)は「+15%」と設定。自己負担上限額は(1)18万8400円(現行16万7400円)、(2)29万400円(同25万2600円)─にそれぞれ見直す。

一方、平均的な所得層を下回る所得区分の(3)年収~約370万円(月収~26万円)は「+5%」、(4)住民税非課税世帯は「+2.7%」と引き上げ率を緩和。(3)は現行の5万7600円を6万600円、(4)は現行の3万5400円を3万6300円へと自己負担上限額を引き上げる。

第2段階の8年8月からは、所得区分を13区分に細分化したうえで、所得に応じて自己負担限度額をさらに見直す。

平均的な所得層である「年収約370~770万円(月収28~50万円)」の場合、①年収約370~約510万円(同28~34万円)②年収約510~約650万円(同36~41万円)③年収約650~約770万円(同44~50万円)─に細分化したうえで、自己負担上限額を8年8月に②10万800円③11万3400円、第3段階の9年8月に②11万3400円③13万8600円─へ引き上げる。

最も所得区分の高い「年収約1160万円~(月収83万円~)」の場合、④年収約1650万円(同127万円~)⑤年収約1410~約1650万円(同103~121万円)⑥年収約1160~約1410万円(同83~98万円)─に細分化したうえで、自己負担上限額を8年8月に④36万7200円⑤32万5200円、9年8月に④44万4300円⑤36万300円─へ見直す。

70歳以上の外来上限の自己負担限度額は、住民税非課税世帯の月額上限を1万3000円へと5000円引き上げる一方、所得が一定以下の月額上限は現行の8000円に据え置く。

他方、「一般(窓口負担2割)」は▽月額上限2万8000円(現行1万8000円)▽年間上限22万4000円(同14万4000円)─、「一般(窓口負担1割)」は▽月額上限2万円(現行1万8000円)▽年間上限16万円(同14万4000円)─に、それぞれ引き上げる。

厚労省は、自己負担上限額と外来特例の見直しによる財政影響(満年度ベース)について、▽保険料▲3700億円▽加入者1人当たり保険料軽減額(年額)▲1100~▲5000円▽実効給付率▲0.62%▽公費▲1600億円(国▲1100億円、地方▲500億円)─と試算した。

このほか、厚労省は、7年度予算案における診療報酬上の対応に関する資料を公表した。

入院時の食費基準について、医療機関を取り巻く状況変化を踏まえ、医療の一環として提供されるべき食事の質を確保する観点から、1食当たり20円引き上げ総額690円に見直す。一般所得者の自己負担は510円と20円引き上がる。

一方、低所得者に対して一定の配慮を行う観点から、住民税非課税世帯で70歳以上の所得が一定の基準以下の者は自己負担を110円に据え置くこととし、それ以外の住民税非課税世帯は1食につき自己負担を10円引き上げ240円に見直す。新たに「23.8億円」の予算を計上した。

また、歯科診療所等において、より専門的な業務を行う歯科衛生士および歯科技工士を確保し、限られた人材で歯科医療を効率的に提供する観点から、「歯科衛生士や歯科技工士の業務の評価に関する見直し」に「1.8億円」を計上。

他方、長期収載品の選定療養化や医薬品の供給不安下での保険薬局の各種業務負担に鑑み、「服薬指導の評価に関する見直し」に「2.0億円」を充てる。

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