健保ニュース
健保ニュース 2025年新年号
妊娠・出産等検討会
来春まとめへ議論の進め方
佐野会長代理 提供体制は別途対策を
「妊娠・出産・産後における妊産婦等の支援策等に関する検討会」(田邊國昭座長)は12月13日、令和7年春頃のとりまとめに向け、今後の議論の進め方を確認した。
この日の会合で厚生労働省は、これまでのヒアリング等の議論を整理し、①周産期医療提供体制の確保②出産にかかる妊婦の経済的負担の軽減③希望に応じた出産を行うための環境整備④妊娠期、産前・産後に関する支援策等─の4つのテーマに分類。次回以降、分娩取扱施設における出産にかかる費用構造の実態調査の結果も踏まえ、テーマごとに政策の方向性について議論を深めていくとした。
7年春頃にとりまとめ、社会保障審議会医療保険部会等でさらに検討を行うスケジュールを示し、了承された。
①は、出生数の減少とともに分娩取り扱い施設も減少する状況のなか、第8次医療計画では、周産期医療の質の向上と安全性の確保のため、医師の勤務環境の改善を進めつつ、周産期医療圏の柔軟な設定を行い、医療機関・機能の集約化・重点化を進める方針としている。
②は、令和5年4月の出産育児一時金の42万円から50万円への引き上げに伴い、正常分娩の出産費用は6年度上半期で51万7952円と4年度から上昇。妊産婦の経済的負担の増加や地域格差などが指摘されている。
③は、分娩取り扱い施設検索サイト「出産なび」が5月の開設から6か月で約200万PVを記録。掲載数は、12月6日時点で2112施設となった。
健保連の佐野雅宏会長代理は、①は、「インフラ整備に関わる問題であり、社会保険財源を用いて事業主や被保険者が負担すべきものとは思えず、出産費用の保険適用とは切り離し、別途解決策を考えるべき」と改めて主張した。
②は、負担軽減は重要としつつ、自己負担が減れば代わりの財源確保を要すると指摘。「公費と保険料、自己負担のバランスをどう取るのか考える必要がある」との見解を示した。
③と④は、多様なニーズへの対応には、現状の支援や財源等を見える化し、妊産婦が選択しやすい情報を提供するとともに、標準化すべき内容を明確にする必要があると指摘。標準化には、「透明性・公平性の担保の観点から、地域差や分娩施設ごとの費用内訳、上昇要因等の詳細なデータ分析を行うことが前提となる」と言及した。
松野奈津子構成員(日本労働組合総連合会生活福祉局次長)は、①は、保険適用の議論とは切り離して別途対策を要するとの考えを示し、医療機関の機能分担と連携・強化により医療提供体制を確保すべきと訴えた。
これに対し、医療提供側は、「周産期医療提供体制の確保と出産費用の保険適用は、一体的に考えるべき」と主張し、意見が対立した。前田津紀夫構成員(日本産婦人科医会副会長)は、①は、「経営赤字の拡大が見込まれるなか、別途、地域の医療提供体制を論じる余裕は残っていない」と断じた。また、保険適用においては、経過が可変的な妊産婦へのサービスをどう現物給付化できるのかと問題提起。「療養の給付と分娩はまったく異なるもの」と指摘した。
このほか、構成員から、論点に優先順位付けを行い議論を行うことなどが提案された。