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健保ニュース 2024年12月中旬号

6年度の平均乖離率は5・2%
厚労省 7年度薬価改定の論点提示
対象範囲や算定ルールなど課題

厚生労働省は4日、医薬品の市場実勢価格に関する令和6年度薬価調査の速報値を中央社会保険医療協議会(小塩隆士会長)の薬価専門部会に提出した。6年度薬価改定から半年後の医薬品の市場実勢価格は公定価格を平均で5.2%下回った。他方、厚労省は、6年度薬価調査の結果を踏まえ、診療報酬改定がない年の薬価改定の在り方をはじめ、改定の対象範囲や適用する既収載品の算定ルールなどを7年度薬価改定の論点として提示。健保連の松本真人理事は、「政策的な算定ルールを含め、毎年粛々と薬価改定を実施すべき」と言及したうえで、「実施を想定して議論を進めることが不可欠」との考えを示した。

この日の中医協・薬価専門部会では、厚生労働省が「令和6年医薬品価格調査(薬価調査)」の速報値を提示した。調査結果をみると、公定価格と市場実勢価格との平均乖離率は5.2%で、5年度に比べ0.8ポイント縮小。薬価の平均乖離率は、2年度8.0%、3年度7.6%、4年度7.0%、5年度6.0%で推移している。

投与形態別の乖離率は、内用薬が平均6.4%(5年度7.0%)で、特に「血圧降下剤」(11.7%)、「高脂血症用剤」(10.9%)が公定価格に比べ10%以上下回った。

注射薬は平均3.5%(5年度4.4%)、外用薬は平均6.8%(同7.2%)、歯科用薬剤は平均▲9.3%(同▲5.6%)の乖離率。

歯科用薬剤は市場実勢価格が公定価格を上回る「逆ザヤ」と呼ばれる現象が続いており、マイナスの乖離幅は5年度から拡大する結果となった。

一方、6年度上期の妥結率は94.3%(同94.1%)だった。
 診療報酬改定がある年の薬価改定は、市場実勢価格と公定価格との乖離を埋めるため、医療機関や薬局が販売事業者から購入した市場実勢価格を品目ごとに加重平均し、調整幅(現行2%)を上乗せした額を新たな公定価格とする。

一方、診療報酬改定が無い年の薬価改定は、その在り方や対象範囲、適用する既収載品目の算定ルールなどを論点に中医協で検討を進めている。

6年度の薬価調査は、今年の9月取引分について、販売サイドから11月1日までに報告があったものを集計。回収率は86.8%となっている。

健保連の松本真人理事は、平均乖離率について、「着々と縮小しており、メーカーや卸におけるコスト上昇を踏まえ、医療現場がより医薬品の価値を評価した結果だ」と言及する一方、「値引き販売が行われていることは事実で、投与形態別、薬効群別にみると依然として乖離率が大きいものがある」と指摘した。

合わせて、後発医薬品のシェアについては、「数量、金額とも拡大しており、後発品がさらに浸透した実態が伺える」と評価した。

鳥潟美夏子委員(全国健康保険協会理事)は、平均乖離率について、「通常どおりの薬価改定が可能なデータが示された」と主張。4大臣合意がある以上、国民負担の抑制や国民皆保険の持続可能性の観点から、3年度と5年度の薬価改定の前例を踏まえつつ、現状のルールにもとづき7年度薬価改定に向けて議論を進めていくべきとの考えを示した。

6年9月後発品数量割合
85%で前年度より増加

厚生労働省は4日、令和6年9月取引分を対象とした薬価調査の結果、後発医薬品の数量割合は前年同月比4.8ポイント増の85.0%だったことを中医協の薬価専門部会に報告した。

後発品の使用割合は、4年9月の79.0%、5年9月の80.2%と近年は伸び率が鈍化していたが、今回調査では5ポイント近い伸びとなった。

松本理事が新創加算の
累積額控除など要望

厚生労働省は4日、同日に公表した「令和6年医薬品価格調査(薬価調査)」の速報値を踏まえつつ、中医協の薬価専門部会に7年度の薬価改定に向けた論点を提示した。

6年度薬価制度改革の骨子では、「診療報酬改定がない年の薬価改定の在り方は引き続き検討する」とされていた。

5年度薬価改定は、国民負担軽減の観点から、平均乖離率7.0%の0.625倍(平均乖離率4.375%)を超える品目を対象範囲とした。

厚労省は、「総論」として、診療報酬改定がない年の薬価改定、特に7年度薬価改定の在り方を論点として提示。

そのうえで、「各論」は、▽改定の対象範囲▽適用する既収載品目の算定ルール▽薬価の観点からの対応▽少量多品目構造解消のための対応─などを論点とした。

5年度薬価改定では、全体の約7割の品目を対象としたが、後発医薬品や長期収載品は8割を超える品目が対象となった。

既収載品目の算定ルールは、5年度薬価改定では実勢価改定に連動し、その影響を補正するものが適用されており、「新薬創出等加算」は「累積額控除」は適用せず、「加算」のみ適用。「長期収載品の薬価改定」も適用しなかった。

薬価の観点からの対応では、急激な原材料費の高騰、安定供給問題に対応するため、「不採算品再算定」について臨時・特例的に全品を対象に適用した。

論点の「総論」について、健保連の松本真人理事は、「薬価差が生じている以上、国民負担の軽減に還元すべき」と強調し、医療保険制度の持続可能性を前提に、イノベーション推進や安定供給確保への対応を行うには、薬価制度全体のバランスが重要と指摘した。

そのうえで、「政策的な算定ルールを含め、毎年粛々と薬価改定を実施すべき」と述べ、「7年度薬価改定を実施する場合を想定し、薬価専門部会で議論を進めることが不可欠」との考えを示した。

診療側の長島公之委員(日本医師会常任理事)は、製薬企業に対し、国民、患者が安心して最善の医療を受けられるような不断の努力を求めつつ、「7年度薬価改定を実施する場合、薬価財源は医療現場に還元すべき」と主張した。

森昌平委員(日本薬剤師会副会長)は、医薬品の供給状況について、「平成28年の4大臣合意時と現在では、医療を取り巻く環境は大きく異なり、当時の安定した状態には戻っていない」と指摘し、「深刻な医薬品の供給不足の状況が続いていることを鑑み、中間年改定を廃止すべき」と強調した。

合わせて、医薬品の供給状況が改善するまでは、少なくとも中止すべきと述べた。

7年度薬価改定を実施する場合は、「大前提として、イノベーションと安定供給の確保、保険薬局等へ与える影響に十分配慮すべき」と訴えた。

「各論」の「改定の対象範囲」について、松本理事は、「範囲を狭めるほど新薬の新薬創出等加算品目が対象から外れ、後発品や長期収載品に偏った改定になる可能性がある」と指摘。

そのうえで、「新薬を含め、値引き販売されているものを最大限に幅広く対象とすべき」と強く訴えた。

「適用する既収載品目の算定ルール」では、「政策的な対応を含め、原則すべてのルールを適用すべき」と強調。特に、新薬創出等加算の「累積額控除」については、「イノベーションの評価と一体ということで、製薬業界の理解を得ている」として、適用を強く要望。

また、後発品の実勢価改定と連動する長期収載品のG1、G2ルールの適用を求めたほか、「市場拡大再算定」の適用も検討すべきと主張した。

「薬価の観点からの対応」では、「6年度薬価制度改革でイノベーション評価を充当し、原材料価格高騰への対応として不採算品再算定を2年連続で実施したにもかかわらず、効果は限定的だった」と問題提起。

そのうえで、「製薬企業の実績は総じて好調であり、不採算品への特例的な対応はこれ以上繰り返すべきではない」との考えを示した。

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