健保ニュース
健保ニュース 2024年12月上旬号
「あしたの健保組合を考える大会」
宮永会長 制度改革と保険者機能強化を推進
健保連大阪連合会(久保俊裕会長)は11月25日に大阪市内で「あしたの健保組合を考える大会PART8」を開催し、大阪府内および近畿地区の健保組合関係者200名が参加した。
健保連の宮永俊一会長は、閉会のあいさつに立ち、11月11日に発足した第2次石破内閣は、少数与党による極めて厳しい国会運営となることから、税や社会保障の諸問題が山積するなかで政治の安定と政策の行方について注視する必要があると指摘した。
医療DXについては、「現在の医療情報を可視化することが、より良質な医療の提供や医療費適正化のために不可欠」と言及。
マイナ保険証を「医療DXの効果的な推進とつながりやすいデータ構築のための新しい基盤」と位置づけ、保険者も国と一体となって、個人単位の医療情報を適切に把握し、健康増進につなげることができるマイナ保険証の利用率向上に努める考えを示した。
また、健保組合の厳しい財政状況において、国民皆保険制度を将来にわたり維持するためには、「現役世代に偏った負担を軽減し、負担能力に応じて支える仕組みなど、社会変化に適応した制度への改革」と「広く社会からの期待に応えるための保険者機能の強化」を推進することが必要と強調。
健保組合が、安心で持続可能な社会のために、より安定した制度の基礎となることをめざし、制度改革と健保組合の保険者機能強化の支援に向けて先頭に立って取り組む決意を表明した。
久保大阪連合会会長
医療DX活用でさらなる改革を
健保連大阪連合会の久保俊裕会長は、「あしたの健保組合を考える大会PART8」の冒頭あいさつで、12月2日からいよいよ健康保険証の新規発行が終了すると述べたうえで、「マイナ保険証を基本とする仕組みに国民がメリットを実感するには、電子処方箋の普及や電子カルテ情報の標準化などの医療DXの推進を国が進めていくことが必要」との考えを示すとともに、登録データの確認・資格情報のお知らせの発行などに尽力してきた健保組合に謝意を表明した。
国民皆保険制度を将来世代へつなぐため、全世代型社会保障制度の構築と現役世代の負担軽減の観点から、「医療・介護における保険給付範囲と自己負担の見直しや後期高齢者の現役並み所得者の給付費への公費投入などの歳出改革の徹底をこれまで以上に強く訴求しなければならない」と主張。
今大会を機に、国民皆保険制度を維持していくため、厳しさを増す健保組合の財政状況のなかで、医療DXを活用した効率化と質の向上のさらなる改革をめざし、健保組合が何をすべきかを皆さんと考えていきたいと強調した。
医療DXの行方と健保組合のあり方
伊藤氏講演 医療DXは医療持続の生命線
11月25日に開催された健保連大阪連合会「あしたの健保組合を考える大会PART8」では、「日本の医療DXの行方と健保組合のあり方~ここが変だよ!日本の医療DX~」をテーマに伊藤由希子氏(津田塾大学総合政策学部教授)が講演した。
伊藤氏は、「医療DXは、日本全体で医療を持続するための大事な生命線」とし、DXの取り組みを推進するよう提言した。個人の受けるサービスの情報がつながることが医療DXの本質と強調。健保組合に対しては、加入者本位の医療サービスをつなげることを意識した取り組みを期待した。
医療DXについては、「基本的に個人の受ける様々なサービスの情報がつながることが本質」と強調。
医療DXの目的の合意形成が必要とし、▽個別性や受診履歴を踏まえた専門医レベルの判断が、医療者やAI医師を通じて得られる▽専門治療で人材が集約され、治療が効率的に行われる▽信頼できるプライマリーケア・チームによる住民に対する継続的な予防・ケアを実施する─状態がめざす医療の形だと提言した。
日本は、利用者や医療機関側の過去の医療情報を適切な受診に役立てる意識が低いと指摘。「医療DXは、日本全体で医療を持続するための大事な生命線」と主張し、取り組みを推進すべきとの考えを示した。
また、健保組合に対しては、医療DXのビジョンを捉え、「加入者本位の医療サービスをつなげることを意識し、保険者業務以外の予防接種や介護などの部門でどんなことが起きているか、保険者として取り得る情報の範囲でチェックすることが重要」と提案した。
質疑応答では、大阪工作機械健保組合の山上智也常務理事が、①財政悪化の要因となっている保険給付の抑制②加入者本位の医療DXを推進するための課題と対応─について質した。
伊藤氏は、①は、「給付の抑制は健保組合の重大なテーマ」と指摘し、従来の利用者や請求単位だけではなく、医療機関単位や調剤レセプトによる医師ごとの比較を行う対応を提案した。
②は、「加入者が健康保険制度を理解し、働く意識につなげることが必要」と言及。また、就業実態が多様化するなかで、労使折半の公正な仕組みを通じた就労の適切な促進が最大の課題であるとの考えを示した。保険料を払って、どこでどのようなサービスを受けているか分からないことは医療DXの効率を欠くとの観点から、「加入者本位の医療の第1歩はマイナ保険証の利用」と述べた。