健保ニュース
健保ニュース 2024年12月上旬号
財政審が7年度予算編成等へ建議
7年度薬価改定 対象品目と適用ルールを拡大
医師偏在は診療報酬の減算措置
財政制度等審議会(十倉雅和会長)の財政制度分科会は11月29日、政府の今後の財政運営に向けた「令和7年度予算の編成等に関する建議」を取りまとめ、加藤勝信財務相に提出した。社会保障は、給付の適正化等を通じ、医療・介護の保険料率の上昇を最大限抑制する必要があると問題提起。7年度薬価改定に向けては、原則すべての医薬品を対象とするとともに、「新薬創出等加算の累積額控除」など、既収載品の算定ルールをすべて適用すべきと提言した。他方、実効性ある医師偏在対策のためには、減算措置の導入など診療報酬上のディスインセンティブ措置が不可欠との考えを示した。
リフィル処方の利用促進
さらなる政策対応を検討
財政制度等審議会が11月29日に取りまとめた「令和7年度予算の編成等に関する建議」は、人口構造の変化のスピードが加速するなかで、社会保障が将来世代を含めたすべての世代にとって安心を提供するセーフティネットとして機能し続けられるよう、給付と負担のバランスを確保するための改革に不断に取り組んでいくべきとした。
社会保障にかかる現役世代の保険料率は約3割に及び、今後も継続的に上昇する見込みと指摘。給付の適正化等を通じ、医療・介護の保険料率の上昇を最大限抑制する必要があると問題提起した。
医療分野では、①医薬品関係②医療提供体制③全世代型社会保障構築に向けて取り組むべき項目④制度の持続可能性を確保していくための今後の改革の方向性─について提言。
①は、7年度薬価改定で、原則すべての医薬品を対象に、市場実勢価格に合わせた改定を実施すべきと強調。「新薬創出等加算の累積額控除」や「長期収載品の薬価改定」など、既収載品の算定ルールをすべて適用すべきとの考えを示した。
他方、「調整幅」は、「価格や薬剤の種類によらず一律に2%としている妥当性をはじめ、在り方の見直しを検討すべき時期に来ていると考えられる」とした。
リフィル処方は、患者、医療機関、医療費の「三方良し」となりうるもので、「リフィルが当たり前」の世の中になることが期待されると指摘。今後、早急かつ的確なKPIを設定し、さらなる利用促進に必要な政策対応を検討するよう訴えた。
保険給付範囲の見直しについては、OTC類似薬に関する薬剤自己負担の在り方のほか、医薬品の有用性に応じた自己負担率の設定や薬剤費の定額自己負担の導入について検討を進めるべきとの考えを示した。
また、かかりつけ医機能の「協議の場」の開催・運営においては、地域の実情をこまやかに把握している市町村等との連携が重要になると指摘し、体制の確認と役割分担等の検討を始めるよう都道府県に依頼した。
現役世代の負担軽減へ
高額療養費制度を見直し
②は、医師偏在対策について、医師の地域間、診療科間、病院・診療所間の偏在是正に向けた強力な対策を講じるべきとした。
病院勤務医から開業医にシフトする流れを止めるとともに、診療所の報酬適正化をはじめとした診療報酬体系の適正化等に取り組む必要があると指摘。
また、外来医師多数区域での保険医の新規参入に一定の制限を設けることはもとより、既存の保険医療機関も含めて需給調整を行う仕組みを創設するなど、これまでにない踏み込んだ対応を行うべきと提言した。
地域別診療報酬の仕組みを活用し、診療所過剰地域から診療所不足地域への医療資源のシフトを促していくべきと主張。当面の措置として、診療所過剰地域の1点当たり単価(10円)の引き下げを先行し、公費の節減効果により医師不足地域での対策を別途強化することも考えられるとした。
さらに、実効性ある医師偏在対策のためには、診療報酬上のディスインセンティブ措置が不可欠と強調し、適切なアウトカム指標導入とセットで、「特定過剰サービス(特定の診療科にかかる医療サービスが過剰)」に対する減算措置の導入を提言。また、「特定過剰サービス」にかかる保険給付については、アウトカム指標に応じた減算措置に加え、各年度の「基準額」を超過した場合に超過額の保険償還分を精算する仕組みの導入を検討する必要があるとした。
このほか、後期高齢者医療制度は、「後期高齢者医療広域連合」が設置され、医療費適正化計画や地域医療構想の推進主体と、保険財政の運営主体とが切り離されることで、責任主体が曖昧となっていると指摘。
後期高齢者医療制度も、財政運営の主体を都道府県とする検討を求めた。
③は、「現役並み所得」の判定基準について、世帯収入要件の見直しを行うべきと主張。
他方、高額療養費制度については、世代間・世代内での負担の公平化を図り、負担能力に応じた負担を求めることを通じ、現役世代をはじめとする被保険者の保険料負担の軽減を図る観点から、経済環境の変化も踏まえ、必要な見直しを検討すべきと提言した。