健保ニュース
健保ニュース 2024年12月上旬号
自己負担限度額の引き上げなど
厚労省が高額療養費の見直し案
医療保険部会 年内の取りまとめをめざす
社会保障審議会医療保険部会は11月21日、医療保険制度改革をテーマに議論した。
被保険者の保険料負担を軽減する観点から、高額療養費の自己負担限度額の引き上げや所得区分の細分化を見直しの視点とした検討の方向性を了承。年内の取りまとめをめざし、同部会で引き続き議論を進めていくこととした。
高額療養費制度は、家計に対する医療費の自己負担が過重なものとならないよう、医療機関の窓口で医療費の自己負担を支払った後、月ごとの自己負担限度額を超える部分について、事後的に保険者から償還払いされる制度で、自己負担限度額は被保険者の所得に応じ設定する仕組み。
11月15日に開催された政府の「全世代型社会保障構築会議」では、複数の委員から、年齢ではなく負担能力に応じた負担という全世代型社会保障の理念や、保険料負担の軽減等といった観点から高額療養費制度の見直しを早急に求める意見があった。
この日の会合では、厚生労働省が、「全世代型社会保障構築をめざす改革の道筋(改革工程)」で2028年度までに実施を検討する取り組みとされた「経済情勢に対応した患者負担等の見直し(高額療養費自己負担限度額の見直し)」の在り方について提案。
厚労省は、高齢化の進展、医療の高度化等により高額療養費の総額が年々増加(総医療費の6~7%相当)するなかで、近年、高額療養費の自己負担限度額の上限は実質的に維持され、医療保険制度における実行給付率は上昇していると指摘。
他方、高額療養費の実質的な見直しを行った約10年前(平成27年)と比較すると、賃上げの実現等を通じた世帯主収入や世帯収入の増加など、経済環境も大きく変化し、生活必需品をはじめとした継続的な物価上昇が続くなかで、現役世代を中心に保険料負担の軽減を求める声も多くあるとの現状を示した。
そのうえで、セーフティネットとしての高額療養費の役割を維持しつつ、健康な方を含めたすべての世代の被保険者の保険料負担の軽減を図る観点から、▽高額療養費の自己負担限度額の見直し(一定程度の引き上げ)▽所得区分に応じたきめ細かい制度設計とする観点からの所得区分の細分化─などを検討の方向性として提案。
その際、能力に応じて全世代が支え合う全世代型社会保障を構築する観点から、負担能力に応じた負担を求める仕組みとする考えを示した。
また、施行時期については国民への周知、保険者・自治体の準備期間(システム改修等)などを考慮しつつ、被保険者の保険料負担の軽減というメリットをできる限り早期に享受できるようにする観点から検討する方向性を提案した。
厚労省の提案に対し、健保連の佐野雅宏会長代理は、「高額療養費は高齢者医療費に対する拠出金と合わせて、現役世代の負担増につながっている事実がある」と問題提起したうえで、「年齢ではなく負担能力に応じた負担や、保険料負担軽減の観点から、見直しを行う時期にきている」と賛意を表明。施行時期については、保険者のシステム改修にかかる期間等に十分留意するよう求めた。
井上隆参考人(日本経済団体連合会専務理事)も、高額療養費の見直しの提案に賛同したうえで、「70歳以上のみを対象とした外来時の特例的な月額負担上限額の見直しが必要」と指摘。金融資産を勘案した負担能力の把握や医療・介護における3割負担の判断基準の在り方についても検討を進めるよう要望した。
北川博康委員(全国健康保険協会理事長)は、「高額療養費は、被保険者の保険料負担の軽減を図る観点から、負担能力に応じた負担となるよう見直していくべき」との考えを示した。