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健保ニュース 2024年12月上旬号

医師偏在是正・経済的手法案
「保険者拠出」に反対意見多数
佐野会長代理「到底受け入れられない」

社会保障審議会医療保険部会(田辺国昭部会長)は11月28日、医師偏在是正対策をテーマに議論した。

保険者に拠出を求めた厚生労働省の経済的手法案に対し、多くの委員が反対の意見を表明。健保連の佐野雅宏会長代理は、「保険料を保険給付以外の目的で使用することは保険料を負担する被保険者、事業主に説明がつかない」と発言し、「今まで以上に現役世代の負担増につながる拠出は到底受け入れられない」と強く反対した。

医師偏在是正に向けて、政府は本年末までに、▽医師確保計画の深化▽医師の確保・育成▽実効的な医師配置─を柱とする「総合的な対策パッケージ」を策定する予定となっている。

この日の会合では、厚労省が、医師偏在対策に向けた基本的な考え方を提案。人口減少が進むなか、定住人口が見込まれる地域でも「保険あってサービスなし」という事態に陥る可能性があり、将来にわたって国民皆保険制度を維持するため、国、地方自治体、医療関係者、保険者等のすべての関係者が協働して医師偏在対策に取り組むことが重要との考えを示した。

そのうえで、規制的手法については、医師少数区域等での勤務経験を求める管理者要件の対象医療機関を拡大する手法を提案した。

また、現行の「外来医療にかかる医療提供体制の確保に関するガイドライン」による外来医師多数区域における新規開業希望者への地域で必要な医療機能の要請等の仕組みについて、実効性を確保するための対応を行う手法を提案。

具体的には、都道府県において外来医師偏在指標が一定値を超える地域(外来医師過多区域)における新規開業希望者に対し、開業の一定期間前に提供する予定の医療機能等を記載した届出を求めたうえで、当該届出の内容等を踏まえ地域の外来医療の協議の場への出席を求めるほか、地域で不足している医療機能の提供や医師不足地域での医療の提供を要請することができることを医療法に規定する。

開業後、要請に従わず、地域で不足している医療機能の提供や医師不足地域での医療の提供を行わない開業者に対し、都道府県医療審議会での理由等の説明を求めたうえで、やむを得ない理由と認められない場合は勧告を行い、勧告に従わない場合は公表を行うことができる手法を示した。

他方、経済的インセンティブについて厚労省は、「医師少数地域における適正な給付の維持・確保は保険者にも一定程度の責任が求められる」との観点から、優先的かつ重点的に対策を進める区域として設定される「重点医師偏在対策支援区域(仮称)」における支援のうち、特定の地域に診療報酬で対応した場合、当該地域の患者負担の過度の増加を招くおそれがあるものについて、すべての被保険者が広く負担するよう保険者からの拠出を求める手法を提案。

また、こうした支援策の検討にあたって、給付費全体のバランスをとる観点から、地域間・診療科間の医師偏在是正のための診療報酬での対応を図ることが考えられると問題提起した。

健保連の佐野雅宏会長代理は、「医師偏在是正対策は、多数対策と少数対策をセットで実施する必要がある」と言及したうえで、「これまでの医師不足対策で十分な成果が得られなかったことを踏まえると、多数区域での過剰な開業を抑制することが不可欠」と強調した。

経済的インセンティブについては、「医師少数区域における適正な給付の維持・確保は各保険者が各加入者に対して負っている責任であり、保険者間で財政調整する仕組みもあるなか、保険料を保険給付以外の目的で使用することは保険料を負担する被保険者、事業主に対して説明がつかない」と発言。

仮に、保険者が責任を負うとしても一定の範囲にとどめて行政の責任で対応するのが前提との認識を示し、「今まで以上に現役世代の負担増につながる拠出は到底受け入れられない」と強く反対を表明した。

また、支援策の検討にあたって、診療報酬で対応する場合は、税制や補助金と明確に役割分担し、財政中立を前提にディスインセンティブを含むメリハリを効かせるなど、医療界全体で財源を賄うべきとの考えを示した。

北川博康委員(全国健康保険協会理事長)は、「医師偏在是正を含む医療提供体制の整備については、国の方針のもと、都道府県が実施主体となって取り組んできているもの」と指摘し、「医療提供体制整備について保険者に拠出を求める厚労省の説明は、論理的に飛躍を感じ、保険料を支払う事業主や被保険者にとって十分な説明となっていない」と言及。

保険者に責任を求めるという説明では、今後も医療提供体制整備に関する事業であれば、際限なく保険料の拠出を求められる根拠となりえてしまうと懸念した。

前葉泰幸委員(全国市長会相談役・社会文教委員/津市長)は、「日本の医療保険制度は国民の疾病、怪我に対する保険給付を目的としたものであり、医療提供体制の確保にまで責任を負うことは、将来の医療保険制度の在り方を考えるにあたってかなりの負担となる」と問題提起したうえで、「被保険者を含めた関係者の理解を得ることは容易ではなく、国策として対応するのが筋」との認識を示した。

一方、原勝則委員(国民健康保険中央会理事長)は、「保険料財源を医師偏在対策に投入する理屈は、保険あってサービスなしの解消や国民皆保険体制の堅持という基本的な考え方に立てば十分に根拠がある」と述べた。

このほか、城守国斗委員(日本医師会常任理事)は、「診療報酬は全国一律の公定価格と規定されているのは周知の事実」との観点から、「診療報酬で対応することはあり得ない」と主張した。

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