健保ニュース
健保ニュース 2024年11月下旬号
認知症薬ケサンラを薬価収載
ピーク時市場規模は796億円
一人当たり薬剤費 年間で約308万円
厚生労働省は20日、アルツハイマー病による軽度認知障害および軽度の認知症の進行を抑制する「ケサンラ点滴静注液350㎎(成分名ドナネマブ)」について、6万6948円で薬価基準に収載した。
1人当たり薬剤費は年間で約308万円、ピーク時の市場規模は796億円と予測される薬価を算定。11月13日に開催された中医協総会で承認された。
ケサンラの薬価は昨年12月に薬価収載された認知症薬のレカネマブを比較薬とする「類似薬効比較方式(Ⅰ)」により算定。投与を18か月間継続する比較薬と異なり、投与開始後12か月を目安にアルツハイマー型認知症の原因物質の1つとされるアミロイドβプラークの除去が確認された場合、投与を完了するとされていることから、補正加算として「有用性加算Ⅱ(5%)」が適用された。
本薬剤は、▽患者本人および家族・介護者の安全性に関する内容も踏まえ本剤による治療意思が確認されている▽MRI検査が実施可能である─ことなどを満たしたうえで、アミロイドPETまたは脳脊髄液(CSF)検査を実施し、Aβ病理を示唆する所見が確認されている患者を対象に投与。
通常、1回700㎎を4週間隔で3回、その後は1回1400㎎を4週間隔で、少なくとも30分かけて点滴静注する。
1人当たり薬剤費は、年間で約308万円と推計されるが、高額療養費制度により、患者の自己負担は相当程度抑えられる。ピーク時における年間の国内患者数は2.6万人で、市場規模は796億円と予測した。
補正加算が適用されているため、「新薬創出・適応外薬解消等促進加算」の対象に該当し、市場実勢価格にもとづく薬価の引き下げが猶予され、現行の薬価は維持される。
市場規模が100億円以上となるため、費用対効果評価の品目区分「H1」に該当した。
健保連の松本真人理事は、ケサンラの市場規模予測について言及。比較薬とされたレカネマブの市場規模予測を踏まえつつ、「当面、認知症薬全体の市場規模は、レカネマブの薬価収載時に想定されたピーク時の予想販売金額の1千億円から極端に拡大するものではないと想定される」との認識を示した。
合わせて、ケサンラについては、投与期間の短縮が期待できることを踏まえ、有用性加算Ⅱが適用されたと指摘。医療現場でケサンラを使用する場合、ガイドラインにもとづく適切なタイミングで、投与完了の判断を行うよう求めた。