健保ニュース
健保ニュース 2024年11月中旬号
医療DX推進へ支払基金を改組
運営会議新設等 組織体制を見直し
来年の通常国会に改正法案提出
社会保障審議会医療保険部会(田辺国昭部会長)は7日、社会保険診療報酬支払基金の抜本改組に関する基本的な方向性を了承した。医療DX関連業務に対する国のガバナンスを適切に発揮するため、「総合確保方針」と「中期計画」を策定。新たな意思決定機関として、学識経験者・被保険者、保険者、診療担当者の体制で構成する「運営会議」を設置する。年内に部会として取りまとめを行ったうえで、来年の次期通常国会に「支払基金法」の改正案を提出する。健保連の佐野雅宏会長代理は、「運営会議」の果たす役割が大きいとの認識を示したうえで、保険者の考えを反映できる構成を要望した。
政府の「医療DX推進本部」が令和5年6月2日に取りまとめた「医療DXの推進に関する工程表」は、「社会保険診療報酬支払基金を、審査支払機能に加え、医療DXに関するシステムの開発・運用主体の母体とし、抜本的に改組」と明記した。
また、政府が6年6月21日に閣議決定した「骨太の方針2024」は、「医療DXに関連するシステム開発、運用主体として、支払基金について国が責任を持ってガバナンスを発揮できる仕組みを確保するとともに、情報通信技術の進歩に応じて、迅速かつ柔軟な意思決定が可能となる組織へと抜本的に改組」と盛り込んだ。
この日の会合では、厚生労働省が、支払基金の改組に関する基本的考え方について、「支払基金を医療DXに関する運用主体の母体とするうえでは、引き続き、支払基金の審査支払機能を適切に維持することが前提」と指摘。
そのうえで、▽審査支払機能の独立性を引き続き確保するとともに、地方関係者の参画を得つつ、医療DX関連業務への国のガバナンスを発揮する体制▽国のガバナンスについては、行政の肥大化につながらないようにするとともに、支払基金が特別民間法人であることを踏まえたもの▽医療DX関連業務について、情報通信技術に関して高度かつ専門的な知見を有し、技術の進歩や変化に柔軟に対応しつつ、一元的な意思決定が可能となる体制─とする組織体制の見直しを行う考えを示した。
支払基金を医療DXの実施主体とするうえでの法人の目的として、▽医療DXの推進により、医療の質の向上、医療機関・保険者等の業務効率化等の医療の効率的な提供に資する業務を実施する▽医療DXの基盤の整備・運営を担う─旨を法律に規定。
支払基金を医療DXの実施主体とするうえで、地域医療介護総合確保法にもとづき現在実施している医療DX関連業務および電子カルテ情報共有サービス等の新たな医療DX関連業務について、支払基金法上に規定するとした。
医療DX関連業務に対する国のガバナンスを適切に発揮するため、「医療DX総合確保方針(仮称)」と「医療DX中期計画(仮称)」を法定化。
このうち、厚労大臣が定める「医療DX総合確保方針」は、政府の「医療DX工程表」にもとづき、▽国、関係主体が取り組むべき事項▽支払基金が作成する「医療DX中期計画」に盛り込むべき事項▽地域医療介護総合確保方針や医療計画の基本方針等との整合性に関する事項─等を規定する。
この方針を受け、支払基金は、「医療DX中期計画(仮)」を策定し、厚労大臣の認可を受ける。3年以上6年以下の期間を対象とする医療DX総合確保方針の実現のための目標や取り組むべき年度ごとの具体的な事項、組織体制、人材確保、財務等に関する事項を規定。その実績について、厚労大臣が評価する。
他方、診療報酬の審査支払機能を適切に維持しながら、地方関係者の参画を得つつ、医療DX業務にかかる国のガバナンスを発揮し、柔軟で一元的な意思決定を確保するため、組織体制を見直す。
4者構成16人体制の現行の理事会に代えて、新たな意思決定機関として、学識経験者・被保険者、保険者(地域保険・地域行政代表含む)、診療担当者の体制で構成する「運営会議(仮称)」を設置。
運営会議は、現行の理事会の半数(8人)程度を想定し、理事長等の役員の選任、予算・決算の作成・変更、定款・事業計画等の作成・変更、医療DX中期計画の策定、その他の重要事項の議決を所掌するものとした。
審査支払業務については、新たに「審査支払運営委員会(仮称)」を設け、これまでの理事会と同様の4者構成16人の体制で運営し、運営委員は法人の役員とする。審査支払に関する予算・決算や事業計画等については、「審査支払運営委員会」の専決事項とした。
医療DX関連業務については、運営会議における全体方針の決定を受けて、理事長・CIO(情報通信技術に関する高度かつ専門的な知識を有する理事)等が中心となって、執行していく体制とする。
このほか、改組後の法人の業務(診療報酬の審査支払業務と医療DX関連業務)を適切に表現した名称、また、医療DXに関する有能な技術者を確保できるよう、医療DXの実施主体として相応しい名称を検討することとした。
健保連の佐野雅宏会長代理は、支払基金の改組にあたっては、医療DX関連業務への国のガバナンスを発揮できる体制とし、医療DXの推進によって医療の質の向上、医療機関・保険者の業務効率化など、医療の効率的な提供に資することが重要と言及。
こういった目的を達成するために「運営会議(仮)」の役割が大きいとの認識を示したうえで、医療DXの推進に関連する保険者の考えを反映できる組織体制とするよう要望した。
他方、従来、支払基金が担ってきた審査・支払業務については、今回の改組によって新たな業務が加えられることになると指摘。国を含めた費用負担の在り方を検討するよう訴えた。
北川博康委員(全国健康保険協会理事長)も、保険者が費用負担を行う形で運営されている審査・支払業務に新たに医療DXの業務が加わることを踏まえ、今後の支払基金の組織運営のコスト負担の在り方について検討を進めていくべきとの考えを示した。