健保ニュース
健保ニュース 2024年10月下旬号
財政審が7年度予算編成へ議論
財政健全化へ社保改革を重視
現役世代 保険料負担増も検討課題
財務省の財政制度等審議会財政制度分科会(十倉雅和分科会長)は16日、令和7年度予算編成と今後の財政運営への考えを提言する「建議」の取りまとめに向けた議論に着手した。
今後、7年度予算編成への反映を視野に、11月を目途に取りまとめる「建議」を見据え、社会保障などを中心に各論の議論を進めていく。
この日の会合では、財政総論として、財務省から、①経済の新たなステージへの移行に向けて②新たなステージにおける課題③今後の財政運営─について説明があり、それにもとづき議論した。
このうち、②は、新型コロナや物価高への対応等のため、2年度以降、従来と比べて突出した水準の補正予算を計上する一方、2年度には過去最高の繰越額、4年度には過去最高の不用額を計上することとなったと問題提起した。
他方、社会保障分野では高齢化等により給付費が雇用者報酬を上回って増加し、保険料率が上昇しているなか、物価・賃金の伸びを給付に反映した場合、ますますの保険料率の上昇につながり、現役世代の負担がさらに増加(可処分所得が減少)することに留意が必要と指摘。
2012年度から2022年度にかけての医療・介護にかかる保険給付費等の伸び(+2.6%/年)が雇用者報酬の伸び(+2.1%/年)を上回り、健保組合の保険料率(医療)は2012年度の8.34%(介護1.32%)から2022年度の9.27%(同1.78%)に上昇している現状を示した。
③は、潜在成長率の引き上げや社会課題解決を実現するためには、規模ありきの予算編成を行うのではなく、予算の中身の重点化や施策の優先順位付けを徹底し、予算・政策の質の向上を図ることが不可欠と強調。
このため、使用データの特性や分析結果の多義性等に留意しつつ、データにもとづく政策効果の分析等により予算・政策の中身と成果を不断に検証し、それらを予算編成に活かすことが重要との考えを示した。
また、少子化や人口減少が進むなか、日本は財政課題も含め世代間倫理に関わる課題に直面しているとして、その衡平を確保するには現在世代の当事者のみならず、まだ生まれていない世代も含む将来世代の視点に立ち、遡って現在時点で何が必要な行動となるかを議論し実践することも重要と提言。
このようなフューチャー・デザインの考え方を活用した取り組みや国民的議論が社会各層で広く自発的に進むよう後押しすることが必要とした。
委員からは、▽全世代型社会保障を確実に進めていくべき▽こども・子育てや医療など社会保障全体に対する議論を若年世代の負担を考えつつ、本格的に進めていくべき▽人口減少は少子化対策と並行し、社会保障制度など社会経済構造を大きく変える時期にある▽経済対策、補正予算は必要性を十分に精査のうえ、有効な施策を積み上げていくことが重要だ─などの意見があった。
財政制度等審議会財政制度分科会の終了後に記者会見した増田寛也分科会長は、「経済成長と財政健全化の両立が7年度予算編成のなかに反映されることが重要」と言及。
特に、社会保障制度改革は財政健全化に大きく関わってくる分野との認識を示し、「分科会の審議なかで十分にウォッチしていく」と述べた。