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健保ニュース 2024年10月中旬号

医療保険部会が適用拡大を議論
佐野会長代理 配慮措置や支援策を要望

社会保障審議会医療保険部会は9月30日、「働き方の多様化を踏まえた被用者保険の適用の在り方」について議論した。

この日の会合では、厚生労働省が、標準報酬月額5.8~7.8万円の被保険者について、ヒアリング等の結果、①最低賃金の減額の特例許可制度が適用されているケース②経営者の配偶者等の家族を従業員として扱っているケース③代表取締役や役員のケース─が確認できたと報告した。

このうち、③では、現行の標準賞与額の上限額(年間573万円・年度単位)は標準報酬月額および民間の年間平均賞与月数にもとづき設定されているが、「報酬を極端に低く設定し、高額な賞与を支給しているケースも存在する」と指摘。標準賞与額の上限の在り方を課題とした。

年間標準賞与額の上限に該当する被保険者の割合は、協会けんぽが平成28年の0.1%から令和4年に0.19%、健保組合が同0.37%から同1.04%にそれぞれ上昇している。

他方、厚労省は、適用拡大にかかる国保制度等への影響に関連し、100人超の企業等までの適用拡大が施行された令和4年10月以降の3か月間における、社保加入による国保脱退者の人数は、前年同時期の3か月間に比べ、約24万人増加している状況を提示。

さらに、▽被保険者数は毎年減少し4年度には2413万人となっている▽世帯数も年々減少しており、4年度には1636万世帯となっている▽人口減少に伴い、今後も減少傾向が続くことが見込まれる─等の現状を示した。

健保連の佐野雅宏会長代理は、年間標準賞与額の上限に該当する被保険者数が上昇傾向にあることに違和感を示し、上限を超える被保険者の標準報酬月額の実態を分析したうえで議論を進める必要があると指摘。

また、被用者保険の適用拡大に伴い、国保だけでなく、短時間労働者の割合の高い業態の健保組合が大きな影響を受けることが想定されると問題提起し、必要な配慮措置や支援策を要望した。

北川博康委員(全国健康保険協会理事長)は、医療保険は被保険者の負担能力に応じた保険料の負担を通じて一定の所得再配分機能を有しているとの認識を示し、被保険者の実際の負担能力に応じた保険料の賦課となるよう、標準賞与額の上限設定の見直しについて検討を求めた。

原勝則委員(国民健康保険中央会理事長)は、来年に予定されている適用拡大のための法律改正に伴い、国保の財政や保険者機能に看過できないようなマイナスの影響が及ぶ場合には、財政支援をはじめ国民皆保険体制の基盤を守るための具体的な措置を国に求めていく方向も考えられると述べた。

伊奈川秀和委員(東洋大学福祉社会デザイン学部教授)は、国保の被保険者数が減少する一方、後期高齢者医療制度は被保険者数が増加するなかで、医療保険における構造的な課題を考えなくてはいけないと言及。適用拡大ということではなく、医療保険としてどう考えていくかという視点が重要とした。

村上陽子委員(日本労働組合総連合会副事務局長)は、「市町村国保の財政基盤の課題は人口減少のなかで生じている課題でもある」と指摘。職域内の連帯にもとづく被用者保険と地域単位の連帯にもとづく市町村国保の性格の違いを共通の認識としたうえで、適用拡大の推進と切り分けた検討を求めた。

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