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健保ニュース 2024年10月中旬号

電子カルテ情報共有サービス
運用費用の負担に意見集中
佐野会長代理 普及状況踏まえた負担方法に

社会保障審議会医療保険部会(田辺国昭部会長)は9月30日、医療DXのさらなる推進について議論した。

この日の会合では、厚生労働省が、▽診療情報提供書送付サービス▽健診結果報告書閲覧サービス▽6情報閲覧サービス▽患者サマリー閲覧サービス─を柱とする「電子カルテ情報共有サービス」の想定されるメリットや法律への位置づけ、費用の考え方を示した。

患者・被保険者のメリットについて、▽日常診療のみならず、救急時や災害時を含めて、全国の医療機関等で患者の医療情報を踏まえた、より質の高い安全な医療を受けることが可能となる▽外来での待ち時間が減るなど、より効率的な受診が可能となる▽自分の医療情報等を健康管理や疾病予防に役立てることができる─と整理した。

医療保険者は、▽全国の医療機関等で3文書・6情報が共有されることで、より効率的な医療提供体制となる▽特定健診や事業者健診の結果をこれまでよりも迅速かつ確実に取得することができ、速やかな保健指導や受診勧奨が可能となる。健診結果を保険者で電子化する手間が削減される▽電子カルテ情報共有サービスで収集するカルテ情報の二次利用により、医療・介護サービスの費用対効果や質の評価に関する分析が可能─を主なメリットとして列記。

医療機関等のメリットは、▽事務コスト削減効果が見込まれる▽効率的な働き方が可能となり、魅力ある職場環境の実現・医療の担い手の確保にも資する─などと整理した。

他方、来年の次期通常国会への医療DX関連法案の提出を視野に入れ、①医療機関から支払基金等への3文書6情報の提供②3文書6情報の目的外利用の禁止③運用費用の負担④電子カルテ情報共有サービス導入の努力義務⑤次の感染症危機に備えた対応等─の5項目を法律に規定し実施することを提案。

このうち、③は、「電子カルテ情報共有サービス」の運用費用の負担者や負担方法等について規定するとした。

厚労省は、「電子カルテ情報共有サービス」のシステム開発については、国の全額補助で行い、医療機関の電子カルテシステムの改修は医療機関で実施(病院には国1/2補助、未導入の診療所には標準型電子カルテを普及)する意向を表明。

一方、医療機関の電子カルテシステムの保守費用や3文書6情報の提供にかかる費用、支払基金のシステムにかかる運用費用の負担の在り方について、関係者のメリット等を踏まえ考えることが必要と問題提起した。

健保連の佐野雅宏会長代理は、遅くとも2030年には概ねすべての医療機関で電子カルテを導入する工程が示されていることについて、国民がメリットを実感できるよう、スピード感を持った対応が重要と指摘し、具体的な普及策や中間的な目標の提示など、国を挙げた早期の推進を要望。

運用費用については、電子カルテ情報共有サービスの普及状況を踏まえた負担方法が当然の対応と強調し、2030年までは基盤整備の期間として、国が責任を持って負担すべきとの考えを示した。

井上隆参考人(日本経済団体連合会専務理事)は、電子カルテ情報共有サービスの各主体におけるメリットが明らかになるまでは国が運用費用を負担することを原則とするよう要請。各主体のメリットを明らかにしながら費用負担の在り方を改めて考えていくことが必要と訴えた。

村上陽子委員(日本労働組合総連合会副事務局長)は、「電子カルテ情報サービスのメリットはあくまで想定であり、実際の効果がどうなるのか、それがいつ実現するのかも明らかになっていない」と問題提起。被保険者に運用費用の負担を求める対応は、給付と負担の関係性にもとづく社会保険の原則からしても、納得を得ることは難しいとの認識を示した。

北川博康委員(全国健康保険協会理事長)は、運用費用は受益に応じた負担とすべきと言及した。

「電子カルテ情報共有サービス」の運用費用について厚労省は、具体的な負担額は精査中であり、年内の結論に向け、引き続き医療保険部会で議論を進めていく意向を示した。

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