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健保ニュース 2024年10月中旬号

令和5年度・高額医療交付金交付事業
1千万円以上超高額レセ 過去最多の2156件

健保連は3日の記者会見で、令和5年度の高額医療交付金交付事業の事業結果を公表した。

それによると、患者1人当たりの1か月の医療費が1000万円以上の「超高額レセプト」は、前年度比364件増(対前年度比約20%増)の2156件と過去最多を更新し、10年前の平成26年度から約7倍にまで増加した。また、1億円以上の件数は14件、最高金額は1億7815万8100円で、これらはすべて脊髄性筋萎縮症の治療薬で高額医薬品「ゾルゲンスマ点滴静注」の投与によるものであり、医療費の高額化傾向を示す結果となった。

5年度の高額レセプト上位100件を疾患別にみると、悪性腫瘍=74件が最も多く、先天性疾患=14件、その他=8件、血友病=4件となっており、1件当たりの平均金額は約5586万円だった。悪性腫瘍や先天性疾患については、薬価が数千万円を超える医薬品が使用されたことによりレセプトが超高額化した。一方、平成26年度の上位100件の内訳は、主に循環器系疾患=50件、血友病=22件、先天性疾患22件、1件当たりの平均金額は約1861万円で、高額化の要因は主に心臓手術や補助人工心臓の使用に起因するものが多かったことから、レセプト高額化の要因に大きな変化がみられた。

5年度で薬価使用合計額が高い上位5医薬品の使用実績をみると、血友病の治療薬「ヘムライブラ皮下注」が113億4565万円で最も高く、これに次いで、発作性夜間ヘモグロビン尿症等の治療薬「ユルトミリスHI点滴静注」も113億3095万円となり、1医薬品で100億円を超える使用実績が確認された。これ以下は、視神経脊髄炎スペクトラム障害の再発予防の治療薬「エンスプリング皮下注」=46億7615万円、クリオピン関連周期性症候群の治療薬「イラリス皮下注」=28億874万円、脊髄性筋萎縮症の治療薬「ゾルゲンスマ」=23億3908万円が続いた。

このほか、悪性腫瘍の医薬品の使用実績では、従来の放射線治療等に加え、白血病等のがん治療薬の「キムリア点滴静注」は17億9563万円、同治療薬の「ブレヤンジ静注」は13億7121万円など、薬価が3000万円を超える高額医薬品の使用が目立った。血友病で使用される医薬品については、「ヘムライブラ皮下注」をはじめ、近年保険収載された高額医薬品の使用実績の伸びが大きいことが示された。

健保連の高額医療交付金交付事業は、高額医療費の発生による健保組合財政への影響を緩和するため、昭和50年度に任意事業として創設。56年度からは法定事業となり現在に至っている。同事業は、各健保組合が拠出する「財政調整事業拠出金」(標準報酬年総額の千分の1.3相当)のうち千分の1.0(ただし、平成28年度から特例として千分の1.1)に相当する額を財源に、全健保組合の共同事業として運営されている。

5年度は、4年11月~5年10月診療分(過年度分を含む)のレセプトのうち、1か月の医療費が交付基準である150万円(人工腎臓を実施している慢性腎不全、血友病などの特定疾病は100万円)を超える高額レセプトを対象に事業を実施した。

その結果、1365組合から申請があった19万4926件を対象に約1067億円を交付。前年度(18万9850件、約1047億円)に比べ、件数は5076件、2.7%増加し、交付金額は約20億円、1.9%増加した。

なお、5年度についても拠出金収入(交付財源)を上回る申請があったため、500万円以下部分について交付率65%を乗じ、500万円超部分は交付率を乗じず100%交付した結果、全体では平均75%の交付率となっている。

令和5年度 高額レセプト上位の概要

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