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健保ニュース 2024年10月上旬号

医師偏在・経済的インセンティブ
「保険者等の協力」に意見集中
佐野会長代理 保険料の目的外使用を牽制

厚生労働省は、9月19日に開催された社会保障審議会医療保険部会(田辺国昭部会長)に、「医師偏在是正に向けた総合的な対策パッケージの骨子案」を報告した。

今後は、総合的な対策パッケージを策定する年末に向けて、関係審議会で検討を進めていく。厚労省は、骨子案の主な論点とした経済的インセンティブへの保険者等からの協力について、医療保険部会を中心に議論を進めていく意向を示した。

「医師偏在是正に向けた総合的な対策パッケージの骨子案」については、厚労省が8月30日に取りまとめた「近未来健康活躍社会戦略」に盛り込み、①医師確保計画の深化②医師の確保・育成③実効的な医師配置─における2027年度までの工程を示した。

その後、9月5日に初会合を開催した「厚労省医師偏在対策推進本部」は、(1)医師確保計画の実効性(2)医師の確保・養成(3)実効的な医師配置(4)実施に向けて─を「骨子案」の主な論点として提示。

このうち、(4)は、(1)~(3)の取り組みを推進していくうえで、規制的手法はもとより、経済的インセンティブとして、どのような対応が必要かと問題提起。経済的インセンティブによる偏在是正を進めるにあたって、国や地方のほか、保険者等からの協力を得るなど、あらゆる方策を検討すべきと明記した。

厚労省の報告に対し、出席した委員や参考人からは、経済的インセンティブへの保険者の協力に対する意見が集中した。

健保連の佐野雅宏会長代理は、医師偏在の是正は外来医師多数地域の新規参入抑制と医師少数地域の医師確保をセットで行う必要があると指摘。

医師偏在対策を進めるうえでは規制的手法だけでなく、何らかの経済的インセンティブが必要なことに理解を示す一方、「保険者等からの協力を得る」と明記された文言には、「大変引っ掛かりを覚える」と違和感を示した。

仮に、保険料を保険給付以外の目的に使うことになった場合、保険料を負担している被保険者、事業主に対する説明がつかないと発言し、経済的インセンティブに保険者が協力することについて明確に反対した。

井上隆参考人(日本経済団体連合会専務理事)は、「現在の職域保険の仕組みや趣旨を踏まえると、経済的インセンティブによる偏在是正に保険料を支払うことになる場合、企業は強い違和感を持つ」と指摘したうえで、現行の地域医療介護総合確保基金による財政措置を優先的に活用するよう訴えた。

さらに、国民の健康を最低限維持するという責務は一義的には国や自治体にあるとの考えを示したほか、実効性のある医師偏在対策とするためには経済的インセンティブより、社会的責務の貢献が重要と強調した。

村上陽子委員(日本労働組合総連合会副事務局長)は、「医療提供体制を確保する責任を患者、被保険者に求めることは説明がつかない」と言及。

給付と負担の関係性にもとづく社会保険の原則からしても、到底納得いくものではないと批判し、規制的手法で対応していくべきとの見解を示した。

北川博康委員(全国健康保険協会理事長)は、保険者が取り組んでいる医療費適正化対策と中長期的な医師偏在対策をどう調和させていくのかという観点を大きな前提として議論を進めていく必要があるとした。

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