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健保ニュース 2024年10月上旬号

河本専務理事が情勢報告
7年度・6年度補正 予算の獲得へ対応

健保連の河本滋史専務理事は9月20日の理事会で、最近の情勢を報告した。厚生労働省の令和7年度予算概算要求に、「医療保険制度改革に伴う被用者保険への財政支援」として6年度予算に計上された430億円が引き続き確保されたことを報告。一方、「医療DXを活用した保健事業に対する財政支援」や「マイナ保険証利用促進に向けた取り組み」については、要求金額を示さない「事項要求」として、年末の予算編成過程で検討されることを説明した。出産・子育ての安心につながる環境整備等の取り組みに対する財政支援事業は、「医療DXを活用した保健事業に対する財政支援」と一体的に検討を進め、今年度補正予算をターゲットに9.9億円の確保を図っていく考えを示した。7年度予算、6年度補正予算が決定する年末に向けて、関係する与党の議員連盟の力を借りながら、予算獲得に対応していく意欲を示した。(河本専務理事の情勢報告要旨は次のとおり。)

年末に向けて
与党・議連と連携

厚生労働省の令和7年度予算概算要求にもとづく健保組合関係分は、一般会計で1323億円を計上した。このほか、「医療DXを活用した保健事業に対する財政支援」や「マイナ保険証利用促進に向けた取り組み」については、要求金額を示さない「事項要求」として年末の予算編成過程で検討するとしている。

基本的には、前年度と同額の要求額が並んでいるが、6年度予算に「医療保険制度改革に伴う被用者保険への財政支援」として計上された430億円については、7年度も引き続き確保された。

内容をみると、健康保険組合連合会交付金交付事業費負担金として、今年度から新たに予算化された100億円が7年度も継続。高齢者医療特別負担調整交付金は、今年度から100億円増額し、総額200億円となったが、7年度も同額が要求されている。また、高齢者医療支援金等の負担に対し行う助成事業等として950億円を計上しているが、今年度から増額した230億円も含む額が要求されている。

また、適用拡大に伴う負担増に対する財政支援として、短時間労働者の適用拡大にかかる財政支援事業に11億円計上されている。今年10月から健康保険・厚生年金の適用を受ける企業規模要件が50人超に緩和される。これが7年度は満年度化するほか、5年度の交付実態も勘案し、8.4億円増の11億円が要求された。

出産・子育ての安心につながる環境整備等の取り組みに対する財政支援事業については、6年度は5年度の補正予算を繰り越すという形で9.9億円が確保された。7年度予算概算要求は0.2億円とされているが、「事項要求」の「医療DXを活用した保健事業への財政支援」と一体的に検討を進め、秋以降に想定される今年度の補正予算をターゲットに9.9億円の確保を図っていきたいと考えている。

健保連としては、年末に向けて、7年度予算や6年度補正予算の決定に際し、関係する与党の議員連盟の力を借りながら、予算獲得を図るべく対応していきたい。

5年度決算見込は
1370億円の経常赤字

令和5年度健保組合決算見込については、政治日程のタイミングをみながら、来週以降に公表する予定としている。

5年度決算見込は、全体で約1370億円の経常赤字となる。全体の5割を超える約53%の組合が経常赤字を計上。赤字組合の収支差引額は合計で2900億円の赤字となる。

なお、4年度の決算見込は、拠出金の一時的な減少によって1368億円の経常黒字だった。他方、5年度は保険料収入は前年度比2.7%、約2300億円増加。一方、保険給付費は同5.3%、約2400億円増加し、さらに高齢者医療拠出金は4年度の一時的な減少からの反動もあり、同7.3%、約2500億円増加している。

収入増約2300億円に対し、支出増約4900億円で、4年度より2600億円程度悪化している。

5年度は2年ぶりの経常赤字となったが、公表に当たっては、6年度推計を合わせて示す予定だ。さらに、コロナ前の元年度決算と比較することで、保険料収入・保険給付費・拠出金を軸とした構造的な動きをアピールし、増大する拠出金負担と保険給付費が大きな課題になるということをマスコミに訴えていきたいと考えている。

6年度推計では、春闘の賃金引き上げ効果が一定程度出ており、保険料収入の増加が見込まれる。一方、団塊の世代が後期高齢者に到達している状況から、後期高齢者支援金の増加が続く。現時点では、予算よりも大幅に改善することが見込まれるものの、全体で1700億円の経常赤字を想定している。

コロナ前の元年度と6年度推計を比較すると、5年間で保険料収入の伸びが足元の賃金引き上げ効果もあり、11.2%増になると見込んでいる。一方で拠出金は、保険料収入の伸びを上回る12.2%増。さらに、7年度以降も毎年度1000億円~2000億円増加していくことが想定される。

保険給付費は、5年間で19%の大幅増となり、なかでも、高額療養費は全体の伸びをさらに上回る21%強の増加となっている。コロナの影響により、各年単位でみると保険給付費が急減・急増し、拠出金がイレギュラーに増減するなど、凹凸が生じているが、5年間という括りでみると、拠出金・保険給付費の増が構造的に進み、健保組合財政を圧迫している状況がみて取れる。

そのうえで、「こうした状況に対し、当面、何をすべきなのか」という視点から健保連の考え方を合わせて公表する予定だ。

健保連では、6月の政策委員会で、「2026年度に向けた健保連の主張」について議論した。ひとつは、高齢者医療制度の見直しだ。特に、健康寿命の延伸や高齢者の就業率の向上を踏まえた、高齢者の自己負担の年齢区分の見直しを主張に盛り込んだ。次に、高額療養費制度の見直し。上昇する物価や賃金との整合性の観点から高額療養費の自己負担限度額の見直しを主張する。以上を政策委員会で決定し、理事会でも報告した。

来週以降、政治日程を見ながら、なるべく早いタイミングで公表したいと考えている。

5年度医療費の伸び
被用者保険は4.2%増

医療費の動向をみると、令和6年6月診療分の1人当たり医療費の伸びは、被用者保険は対前年同月比1.64%減、健保組合は同1.98%減となった。休日数等補正後の伸び率は、被用者保険は同2.26%増、健保組合は同0.08%減となる。補正後の4月~6月平均では、被用者保険は前年同期比2.03%増、健保組合で同1.63%増だった。コロナ禍以降、非常に高い伸びが続いていたが、5年度下期からは若干落ち着いており、6年6月も同様の状況だ。

先般、厚生労働省から、5年度の概算医療費が公表された。総額は過去最高の47.3兆円となり、このうち、75歳以上は18.8兆円で40%弱を占める。

医療費の伸び率は、全体で対前年度比2.9%増、被用者保険は同4.2%増だった。団塊の世代が順次、後期高齢者に到達していることから、75歳以上は同4.5%増となった。

1人当たり医療費は全体で38.0万円、75歳以上は96.5万円だった。1人当たり医療費の伸び率は、全体で同3.4%増、被用者保険は同4.3%増となる一方、75歳以上は同0.9%増にとどまっている。

元年度~5年度平均では、コロナ禍以降、様々な感染症の流行もあり、若い世代ほど伸び率が高い傾向がみられる。

元年度~5年度平均でみると、診療種類別の医療費の伸びは、コロナ禍のアップダウンを経て、全体でコロナ前の水準に近づいている。他方、入院はやや低く、入院外がやや高め。医療機関種類別の医療費の伸び率は、入院医療のウエイトの高い病院が総じて低く、入院外中心の診療所が総じて高めになっている。

診療科別の伸び率は元年度~5年度平均で、医科診療所全体で2.7%増となり、小児科が9.3%増、産婦人科が11.1%増と他の診療科の平均を大きく上回っている。

小児科は、コロナ禍で大きく落ち込んだが、コロナの特例加算などにより、落ち込みを上回る大幅な伸びとなった。特例加算は終了したが、小児感染症の流行の影響もあり、高い水準が継続している。産婦人科は、4年度の不妊治療の保険適用の影響により増加し、現在も継続している状況だ。

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