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健保ニュース 2024年9月下旬号

協会けんぽ・11年度収支見通し
準備金残高 料率10%維持でも5兆円超
引き下げを求める意見多数

全国健康保険協会運営委員会(田中滋委員長)は12日、令和7年度保険料率等について議論した。

この日の会合では、全国健康保険協会が、協会けんぽ(医療分)の5年度決算を足元として、一定の前提のもとに機械的に試算した7年度から11年度までの5年間の収支見通しを提示。合わせて、今後10年間の粗い試算も示した。

収支見通しは、賃金上昇率を6年度1.5%増、7年度1.0%増とし、8年度以降は①1.6%増②0.8%増③0.0%増─の3ケースを設定。加入者1人当たり医療給付費の伸び率は、6年度1.1%増、7年度1.4%増とし、8年度以降は「75歳未満3.2%増(75歳以上0.3%増)」を前提として試算した。

現行の平均保険料率10%を据え置いた場合、ケース②は10年度以降、③は9年度以降に収支が赤字へ転落する一方、①は黒字を維持する見通しを示した。

11年度末の準備金は、ケース①6兆6500億円②5兆8900億円③5兆1000億円─の残高を見込み、①と②は5年度末の準備金残高(5兆2076億円)を上回る。

単年度収支が均衡する保険料率は、ケース①が▽7年度9.8%▽8年度9.7%▽9年度9.8%▽10年度9.9%▽11年度9.9%─、②が▽7年度9.8%▽8年度9.8%▽9年度10.0%▽10年度10.1%▽11年度10.2%─、③が▽7年度9.8%▽8年度9.9%▽9年度10.1%▽10年度10.3%▽11年度10.5%─。ケース①の場合、現行の平均保険料率をいずれの年度も下回る。

この試算に加え、「賃金の伸び率における構造変化を踏まえた試算」、「医療費の幅を勘案した試算」でも、収支差や準備金残高、均衡保険料率がさらに改善する見込みも示した。

このほか、今後10年間のごく粗い試算によると、現行の平均保険料率10%を据え置いた場合、令和16年度の収支は、ケース①▲4700億円②▲1兆2400億円③▲1兆9600億円─。準備金残高は、ケース①5.3兆円、②1.8兆円③▲1兆円─と見通し、③では準備金が枯渇する。

全国健康保険協会は、協会けんぽの今後の財政を見通すに当たり、医療費の伸びが賃金の伸びを上回るという財政の赤字構造が続いてきたことに加え、▽保険給付費の増加が見込まれる▽団塊の世代が後期高齢者になることにより後期高齢者支援金の短期的な急増が見込まれ、その後も中長期的に高い負担額で推移することが見込まれる▽短時間労働者等への被用者保険適用拡大により財政負担が生じるおそれがある▽保険料収入の将来の推移が予測し難い▽赤字の健保組合の解散が協会けんぽ財政に与える影響が不透明である─ことを念頭に置く必要があると指摘した。

協会けんぽの財政構造に大きな変化がないなかで、今後の収支見通しのほか、人口構成の変化や医療費の動向、後期高齢者支援金の増加等を考慮した中長期的な視点を踏まえつつ、7年度およびそれ以降の保険料率のあるべき水準を論点として提示。

そのうえで、全国健康保険協会は、中長期的に安定的な財政運営をしていくために、可能な限り現行の保険料率は維持することが基本的なスタンスとの考えを示した。

委員からは、5兆円を超える準備金残高の現状を踏まえ、平均保険料率引き下げの検討を求める意見が多数あがった。

7年度の平均保険料率は、支部評議会の意見も考慮しつつ、運営委員会で再度議論を進め、年内に決定するスケジュールとなっている。

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