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健保ニュース 2024年9月中旬号

厚労省が近未来健康活躍社会戦略
今後10年程度の政策方針
予算確保や制度改正に反映

厚生労働省は8月30日、「近未来健康活躍社会戦略」を取りまとめ、公表した。

足元の社会経済環境の大きな変革を踏まえ、ヘルスケア分野の産業政策に力点を置きつつ、国際展開と海外市場の活力を日本経済に取り組むという好循環を構築する観点から、厚労省として推進すべき今後10年程度の中期的な政策方針をパッケージとして策定したもの。

今後、必要な予算確保や制度改正を順次進めていく方針を示し、来年度に着手できる施策については、令和7年度予算概算要求に盛り込んだ。

「近未来健康活躍社会戦略」は、日本が少子高齢化・人口減少、デジタル化という大変革時代の渦中にあるなか、国民皆保険の持続可能性を確保しつつ、未来に向けてイノベーションと社会のダイナミズムを医療・介護分野に取り込み、人生100年時代を健康で有意義な生活を送りながら活躍できる社会の実現が「待ったなし」の課題となっていると指摘。

こうした問題認識から、▽戦略的に医療・介護産業を育成▽戦略的に医療・介護全体としての収入の拡大を目指すとともに、その成果を広く国民に還元▽国民一人ひとりが可能な限り長く健康で有意義な生活を送りながら活躍できる健康活躍社会を実現─を戦略目標に掲げた。

具体的な対応として、①医療・介護DXのさらなる推進②医師偏在是正に向けた総合的な対策③後発医薬品の安定供給等を実現する産業構造改革④女性・高齢者・外国人の活躍促進⑤イノベーションを健康づくり・医療・介護に活かす環境整備⑥グローバルな創薬エコシステムの構築⑦世界の感染症対策を牽引する、感染症危機管理体制の構築⑧アジア諸国を含むインド太平洋地域における医療・介護の好循環の実現⑨途上国の健康医療政策を支援する「UHCナレッジハブ」の日本設置─の9施策を明記。

このうち、①は、▽全国医療情報プラットフォームの構築▽医療等情報の二次利用の推進▽医療DXの実施主体▽マイナ保険証の利用促進、生成AI等の医療分野への活用─をより実効的かつ一体的に進める。

7年度予算概算要求では、「電子処方箋のさらなる全国的な普及拡大」などの項目を盛り込んだ。また、社会保険診療報酬支払基金を医療DXに関するシステムの開発・運用主体の母体「医療DX推進機構(仮称)」として抜本的に改組するため、「支払基金法」を来年の通常国会で改正するなど速やかに関係法令の整備を行うとした。

②は、(1)医師確保計画の深化(2)医師の確保・育成(3)実効的な医師配置─を柱として、2024年末までに総合的な対策のパッケージを策定し、これらを組み合わせた医師偏在是正にかかる取り組みを推進する。

「近未来健康活躍社会戦略」に盛り込んだ「総合的な対策パッケージの骨子案」では、(1)~(3)における2027年度までの工程を示した。

7年度予算概算要求では、「総合的な診療能力を持つ医師養成の推進事業」などの項目を盛り込んだほか、医師少数区域等での勤務経験を求める管理者要件の大幅な拡大、外来医師多数区域の都道府県知事の権限強化等の規制的手法等について、必要に応じて法令改正を行う予定とした。

③は、企業間コンソーシアムや企業統合等により安定供給の体制整備を行い、供給数量を確保するための設備投資等を実施する後発品企業への金融・財政措置等の支援策を検討。後発品の産業構造改革の推進については、7年度予算編成過程で検討する。

⑤は、国民皆保険を堅持しつつ、昨今の医療技術の進歩と患者ニーズの高度化・多様化の観点から、保険収載も進めつつ、民間保険の活用も含めた保険外併用療養費制度の見直しの検討を進めるとした。

武見敬三厚労相は、8月30日の閣議後記者会見で、今後、医師偏在対策について関係部局が連携し、年末の対策パッケージの策定に向けて検討を加速するため、厚労相を本部長とする「厚生労働省医師偏在対策本部」を設置する方針を明らかにした。

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