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健保ニュース 2024年8月下旬号

厚労省・出産検討会がヒアリング
医療従事者 保険適用に反対の意見

厚生労働省の「妊娠・出産・産後における妊産婦等の支援策等に関する検討会」(田辺国昭座長)は1日、2回目の会合を開催し、医療従事者を対象にヒアリングを実施した。

ヒアリングでは、▽前田津紀夫構成員(日本産婦人科医会副会長)▽亀井良政構成員(日本産婦人科学会常務理事)▽細野茂春構成員(日本周産期・新生児医学会理事▽井本寛子構成員(日本看護協会常任理事)▽高田昌代構成員(日本助産師会会長)─が意見陳述した。

このなかで、前田構成員は、正常分娩費が保険化された場合、▽妊婦の経済的負担は減少しない▽多くの産科医療機関は減収となる▽産科医療機関はサービスや医療安全にかける費用を削らざるをえない─などと主張。

また、正常分娩が保険になじまない背景として、▽分娩はすべて様子が異なり、所要時間も様々である▽分娩の過程の中に保険適用とならない医療行為が数多く含まれる▽多くの医療機関で持ち出しとなっている▽助産については入院基本料で評価されると過小評価につながりかねない─と説明した。

亀井構成員は、▽1分娩当たりの費用は出産育児一時金の額と大きな乖離があり、平均額は約140万円▽地域により1分娩あたりの費用に差▽分娩数が少ない施設ほど1分娩あたりの費用は高額となる傾向─など、大学病院と総合周産期母子医療センターにおける分娩費の現状を提示。そのうえで、急速な分娩取扱い施設の減少・医療崩壊につながるような、拙速な分娩費用の保険適用化となる場合、到底受け入れられないと訴えた。

各構成員の意見陳述に対し、健保連の佐野雅宏会長代理は、「周産期医療については保険適用の議論とは別に、提供体制の確保に向け国が責任を持って検討すべき課題だ」との認識を示し、今回のような形で医療保険者にも考えを述べる機会を設けるよう厚労省に要望。

今後の議論にあたり、分娩の費用構造、地域差等を見える化したうえで、保険適用範囲や負担のあり方、異常分娩の定義の明確化など様々な論点について議論し、妊婦の経済的負担の軽減に繋げていくことが極めて重要との考えを示した。

意見陳述に対しては、前田構成員が主張する「正常分娩は保険適用に馴染まず、自由診療でなければならない」との考えについて質した。

前田構成員は、「分娩施設の存続問題が前提にあり、物価の変動や分娩の減少が起きた時に従来の保険診療の枠組みでは賄いきれないような形になる」と主張したうえで、「自費診療の方がそういったものに対する融通が利く」との認識を示した。

松野奈津子構成員(日本労働組合総連合会生活福祉局次長)は、「亀井構成員が提示した1分娩当たりの費用は、全施設の平均出産費用48万円と比べ非常に高い」と指摘し、費用の内訳を示すよう要請。

亀井構成員は、「新生児科医や麻酔科医の待機時間に費用がかかるという人件費の問題がある」と応答し、理解を求めた。

なお、本検討会は、今回含めヒアリングを今夏に3回程度実施する予定であり、次回会合では、妊産婦や妊産婦の声を伝える者を対象に実施する。

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