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健保ニュース 2024年8月合併号

かかりつけ医機能制度の施行へ
厚労省分科会 「報告書」取りまとめ

厚生労働省の「かかりつけ医機能が発揮される制度の施行に関する分科会」(座長・永井良三自治医科大学学長)は7月19日、令和7年4月のかかりつけ医機能が発揮される制度の施行に向け、昨年11月から7回にわたる議論の結果を整理した「報告書」を取りまとめた。

「報告書」は、国民・患者がかかりつけ医機能を有する医療機関を適切に選択できるための情報提供を強化し、地域の実情に応じ、各医療機関が連携しつつ、自らが担うかかりつけ医機能の内容を強化することにより地域で必要なかかりつけ医機能を確保するための制度整備を進める必要があると提言した。

そのうえで、①かかりつけ医機能が発揮される制度の施行に向けた基本的な考え方②制度の施行に向けて省令やガイドライン等で定める必要がある事項③かかりつけ医機能が発揮されるための基盤整備、国の支援のあり方等④障害のある方に対するかかりつけ医機能⑤今後の対応─についての内容を整理。

①は、「かかりつけ医機能を有する医療機関」および当該医療機関のかかりつけ医機能の内容について、国民・患者に情報提供することで、国民・患者のより適切な医療機関の選択に資することが重要と指摘した。

②は、Ⅰかかりつけ医機能が発揮される制度整備の枠組み、Ⅱ「かかりつけ医機能を有する医療機関」の明確化、Ⅲ「地域における協議の場」での協議─等について明記。

Ⅱは、「かかりつけ医機能報告制度」における、継続的な医療を要する者への発生頻度が高い疾患にかかる診療その他の日常的な診療を総合的かつ継続的に行う「1号機能」に関する報告事項(1)~(3)を整理した。

「1号機能」の「具体的な機能」は、「継続的な医療を要する者に対する発生頻度が高い疾患に係る診療を行うとともに、継続的な医療を要する者に対する日常的な診療において、患者の生活背景を把握し、適切な診療および保健指導を行い、自己の専門性を超えて診療や指導を行えない場合には、地域の医師、医療機関等と協力して解決策を提供する機能」と明記。

報告事項の(1)は、「具体的な機能」を有することおよび「報告事項」について院内掲示により公表していることとした。

(2)は、かかりつけ医機能に関する研修(研修の要件を設定して、該当する要件を示す)の修了者の有無、総合診療専門医の有無(有無を報告すれば可)と整理。改正医療法施行後5年を目途に、研修充実の状況等を踏まえ、研修の修了者または総合診療専門医がいることを報告することについて改めて検討する。 た。

(3)は、▽17の診療領域ごとの一次診療の対応可能の有無、いずれかの診療領域について一次診療を行うこと(一次診療を行うことができる疾患も報告する)▽医療に関する患者からの相談に応じること(継続的な医療を要する者への継続的な相談対応を含む)─ができることと明記。改正医療法施行後5年を目途に、制度の施行状況等を踏まえ、一次診療・患者相談対応に関する報告事項について改めて検討することとした。

そのほか、「一次疾患に関する報告できる疾患案(40疾患)」とその内訳を例示。傷病名や推計外来患者数、主な診療領域を整理した。なお、報告できる疾患は、患者調査による推計外来患者数が多い傷病をもとに検討して設定する。

(1)~(3)が「可」の報告の場合は「1号機能を有する医療機関」として、「2号機能」の報告を行う。

「2号機能」の有無は、▽通常の診療時間外の診療▽入退院時の支援▽在宅医療の提供▽介護サービスと連携した医療提供─機能の有無で判断することとした。

合わせて、▽健診、予防接種、地域活動等▽1号機能および2号機能の報告で「当該機能有り」と現時点でならない場合は、今後担う意向の有無─を「その他の報告事項」として整理。

かかりつけ医機能報告の報告を行う対象医療機関は、特定機能病院および歯科医療機関を除く、病院・診療所とし、医療機能情報提供制度にもとづく報告と併せて、各年度の1~3月に報告を行うこととした。

他方、かかりつけ医機能に関する医療機能情報提供制度の見直しでは、かかりつけ医機能報告の報告事項のうち、「国民・患者が適切に医療機関を選択できることに資する項目」について、医療機能情報提供制度の情報提供項目に位置づける。

具体的には、かかりつけ医機能報告の報告事項について、「1号機能および2号機能の報告で「当該機能有り」と現時点でならない場合は、今後担う意向の有無」以外の項目は、医療機能情報提供制度の情報提供項目に位置づけるとした。

合わせて、医療情報ネット「ナビイ」で国民・患者に分かりやすく情報提供する観点から、用語解説を作成し、かかりつけ医機能の内容や、上手な医療のかかり方の周知を行うこととした。

Ⅲは、「都道府県は、医療関係者、医療保険者等との地域の協議の場を設け、かかりつけ医機能の確保に関する事項の協議を行い、結果を取りまとめ公表することとされている」と明記。都道府県、保健所、市町村、医療関係者、保険者等を参加者として、都道府県が市町村と調整して決定することとした。

⑤は、制度の施行に向け、関係省令・告示等の改正等を行うとともに、▽かかりつけ医機能の確保に向けた医師の研修の詳細についての整理▽「かかりつけ医機能の確保に関するガイドライン(仮称)」の作成▽制度の普及・推進のための動画、ポスター等の作成─に取り組むよう厚労省に求めた。

このうち、動画、ポスター等の作成では、国民・患者を対象とした上手な医療のかかり方の医療教育・患者教育等にも取り組む。

「ガイドライン(仮称)」では、かかりつけ医機能報告等が実効的に行われるよう、具体的な対応方策や取り組み等を例示することとしており、厚労省が6年度中に作成する方針。

健保連の河本滋史専務理事は、②の「1号機能」に関する報告事項について、「一次診療を行うことができる疾患を報告することが組み込まれたことは、患者のより適切な医療機関の選択に資する観点から、一定の前進」と発言。

合わせて、健診、予防接種がその他の報告事項とされたことについて、「患者が医療機関を選択する際に大変参考になる」と言及した。

他方、「医療に関する患者からの相談は、かかりつけ医機能の重要な要素」との認識を示し、医療機関へ幅広い対応を要請。「一次診療や相談では、患者と医師が共通の理解を持つ必要がある」と指摘し、5年後の見直しを念頭においた、患者の受診行動への影響を含む丁寧な実態把握等を厚労省に求めた。

報告を行う対象医療機関については、「診療所や中小病院でかかりつけ医機能を完結できない地域も想定される」として、地域医療支援病院がかかりつけ医機能を担うことに言及。

「報告そのものは幅広く行い、公表の段階で他の医療機関とは位置づけが異なることを明確に示すことが必要」との考えを示した。

合わせて、患者の大病院志向是正の流れに逆行しないよう、適切な情報提供を要望した。
 また、河本専務理事は⑤について、「かかりつけ医機能報告制度を被保険者に正しく理解してもらうことは保険者の役割」と強調。健保組合としても制度の周知広報に取り組む考えを示し、厚労省に好事例の情報共有と広報資材の提供を求めた。

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