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健保ニュース 2024年8月合併号

佐野会長代理が情勢報告
次期制度改正へ要請活動強化

健保連の佐野雅宏会長代理は7月26日の総会で、最近の情勢を報告した。①健保組合の財政状況②医療保険制度改正・財政支援③健保組合の価値アピールに向けた取り組み④マイナ保険証一体化への対応─の4点から健保組合、健保連をめぐる情勢を説明した。そのなかで、令和5年度健保組合決算は医療費・拠出金増による赤字を見込み、6年度予算の経常赤字と合わせ、厳しい財政状況を訴えた。現役世代の負担軽減、高齢者と現役世代の負担のアンバランスを見直すために、2026年の医療保険制度改正を視野に入れ、高齢者の応分な負担や後期高齢者の現役並み所得者の給付費に対する公費投入などを要請。政府の「骨太方針2025」への反映をめざして要請活動を強化する方針を示し、健保組合・都道府県連合会に支援を依頼した。合わせて、健保組合の価値アピールに向けた取り組みを展開するとともに、健保組合の主張をより強く表す新たな提言を今秋公表するとした。(佐野会長代理の発言要旨は次のとおり。)

医療費・拠出金増で
5年度赤字決算の見込み

1点目は、健保組合の財政状況。各健保組合におかれては、決算組合会が終了したところと思う。健保連本部では、令和5年度健保組合決算見込みにかかる集計作業を行い、例年どおりだと9月くらいの発表を予定している。

まだ詳細は把握できていないが、現時点での概要として、収入面は政府の強烈な後押しによる賃上げ効果もあり、当初予算よりもアップしていることが予想される。

一方、支出面は、コロナ後の医療費の増加が収入増を上回ることが見込まれる。高齢者医療拠出金についても、4年度は一時的な減少がみられたが、5年度は従来の流れに戻り、増加に転じている。

賃上げによるプラス要因、医療費・拠出金増のマイナス要因と両面ある。当初予算は▲5600億円の経常赤字を見込んでいたが、決算では、赤字幅が大幅に縮小され、半分程度になることも予想される。他方、全体でみると、赤字決算となるのは間違いないのではないかと考えている。

4月に発表した6年度健保組合予算早期集計結果の概要では、▲6500億円の経常赤字を見込み、昨年度予算に続く、大きな赤字となった。これは大変厳しい数字だ。予算編成段階では見込むことが難しかった賃上げ効果を上回ることを期待するが、収入の増加要因には、健保組合の苦渋の決断による保険料率の引き上げ分も入っていることを考慮すれば、楽観視できる状況ではない。

制度改正・財政支援
要請活動や働きかけ強化

2点目は、医療保険制度改正・財政支援。団塊の世代がすべて後期高齢者に移行するいわゆる「2025年問題」は、ほとんど解決されていないのではないかと考えている。2025年が翌年に迫るも、まだまだ問題が残っていると言わざるを得ない。

これに対し、少子化対策の強化が叫ばれるなか、「子ども・子育て支援法案」が先般の通常国会で可決された。健保組合・健保連の要望が一定程度は受け入れられたが、2026年度から「子ども・子育て支援金」の負担を求められることになる。

今後もより一層、現役世代の負担軽減、高齢者と現役世代の負担のアンバランスを見直すための取り組みを推進しなければならないと考える。

次の医療保険制度改正のタイミングは、2年後の2026年と想定される。負担能力のある高齢者の応分負担など高齢者医療費への現役世代の負担軽減について要請していくことが不可欠となる。健康寿命が延びている状況に応じ、高齢者の年齢区分の引き上げと自己負担割合の見直しも主張していく方針だ。

2年後の2026年度の法改正に向けては、遅くとも来夏の政府の「骨太方針2025」に見直し項目を反映させることが必要となり、来秋以降の具体的な検討の本格化につなげたい。

なお、高齢者の負担増は、政治的な流れと連動しており、選挙スケジュールも大きく関係することから、こうした動きを踏まえながら対応していく必要がある。医療保険制度改正が実施されるまでの間の財政支援も強く求めていく必要がある。

さらに、かねてから現役世代の拠出金負担において過剰な負担となっている後期高齢者の現役並み所得者の給付費に対する公費投入を強く求めていく方針だ。

医療保険制度改正や財政支援は、高度な政治判断を要する。これまでの経験を踏まえ、与野党の国会議員の先生方への要請活動・働きかけを強化していく。健保組合・都道府県連合会の支援をお願いする。

課題となるのは、やはり、医療費の増加であり、現在の給付の仕組みを続けていくのはもはや限界にきている。保険給付範囲を含めた抜本的な見直しが不可避だ。他方、医療費適正化を進めるためには、既成概念にとらわれない考え方も必要だ。現在政府で検討が進められている「かかりつけ医機能の報告制度」の活用も含めた医療提供体制の見直しは待ったなしの課題だと捉えている。

健保組合の価値アピール
今秋に新提言を公表

3点目は、健保組合の価値アピールに向けた取り組み。現役世代の負担軽減に向けた取り組みは重要であり、政治やマスコミ対応を考えると、われわれの味方を増やすことが大きなポイントとなる。最大の味方とすべきなのは、被保険者、加入者と保険料を負担する事業主・企業だ。健保組合の存在意義を十分に理解してもらい、最大のサポーターになってもらう必要がある。

そのためには、疾病予防や健康増進にかかる健保組合の役割をしっかりと理解してもらうことが重要だ。これまで保健事業 のなかで進めてきた特定健診・特定保健指導に加え、少子化対策、女性の健康課題を含め、幅広い分野で保険者機能の充実を図っていくことが重要と考えている。健保組合には、保険者としてのリーダー的役割が求められており、健保連本部としてもサポートをしていきたい。

4点目は、マイナ保険証一体化への対応。ここ数年、従来の健康保険証の廃止・マイナ保険証の導入にわれわれ健保組合は悩まされてきた。国による医療DXの推進には異論はなく、協力していく所存だ。

一方、本来のDXとは、質の向上とともに抜本的な業務の効率化につながるものと考えるが、これまでの動向を健保組合からみると、業務の効率化とは真逆の方向に進んでいるのではないかと感じる部分もある。12月2日の現行の健康保険証廃止に向けても明るい姿が見えない。

政府においては、先ほど登壇された武見厚生労働大臣が先導し、取り組みを推進している。また、医療機関側も利用促進に向け、相当の努力をしていると感じている。それにもかかわらず、利用者である国民のメリットがまだまだ実感されていない。国には、利用者に向けたさらなる促進活動に取り組んでもらいたい。

発行済みの健康保険証に設けられる最大1年間の経過措置期間の扱いについては、まだ確定していないことがたくさんある。健保組合の負担軽減・不安払拭に向けて、厚労省と連携して対応していきたいと考えている。

以上、4点について申し上げたが、健保組合としての主張をより強く表すために、本部として新たな提言の策定を進めている。今秋の公表をめざしており、健保組合の皆さんの思いをアピールしていきたいと考えている。

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