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健保ニュース 2024年8月合併号

健保連第221回定時総会
宮永会長 組合運営の安定確保が不可欠
政府・与党への要請活動を継続

健保連は7月26日、東京・港区のベルサール汐留で第221回定時総会を開いた。冒頭あいさつした宮永俊一会長は、健保組合の財政状況について、令和6年度は春闘の賃上げ効果などで収支の改善が期待できる一方、高齢者医療への拠出金負担が今後も増加していくことを踏まえれば、依然として厳しい状況であることに変わりはないと指摘。政府・与党に対する要請活動を継続するとともに、健保組合や各連合会と力を合わせ世論へアピールしていくとした。国民皆保険を将来に引き継いでいくためにも、医療保険制度の中核を担う健保組合の安定した運営の確保が不可欠と強調。「現役世代の負担軽減」や「世代間の給付と負担のアンバランス解消」など、各課題に道筋をつけていくことが全世代型社会保障の構築につながるとの考えを示したうえで、先頭に立って取り組んでいく決意を表明した。(宮永会長の発言要旨は次のとおり。)




総会の開会にあたり、一言あいさつ申し上げる。
 議員の皆さんにおかれては、大変お忙しいなか、また、例年になく早い時期からの記録的な猛暑の状況のなかで、お集まりいただき、誠にありがとうございます。

本日の総会は、4月の役員改選後の初めての総会となる。
 改めて、これからの2年間、よろしくお願い申し上げる。

本日は、来賓として、公務ご多忙のなか、武見敬三厚生労働大臣にご臨席いただいている。
 大臣からは後ほどあいさつをいただくので、よろしくお願い申し上げる。

さて、本日7月26日、パリの現地時間で、オリンピックが開会式を迎える。
 オリンピック憲章のなかで、オリンピズムの目的は、「人間の尊厳の保持に重きを置く、平和な社会の推進をめざす」と掲げられている。

長期化するロシアによるウクライナへの軍事侵攻や、イスラエル・パレスチナ情勢の悪化などに加え、格差や人道上の問題が指摘されるなか、今年は主要な国のリーダーが選ばれる年でもある。

このパリオリンピック・パラリンピックの開催を契機に、皆が平和への歩みを進め、世界がより良い方向へ向かうことを願って止まない。

また、国内に目を向けると、物価高や人手不足、円安など、社会経済環境には厳しさも見られるが、株価がバブル期の最高値を更新するなど、経済の底堅さも見られる。

こうしたなかで、今年の春闘では、実に33年ぶりに賃上げ率が5%を超える高水準となった。

人への投資がイノベーションを起こし、次の経済成長につながっていくという、力強いサイクルが生まれつつあると感じている。

この「成長と分配の好循環」という流れが、大企業だけではなく、中小企業等も含め、広く波及し、わが国の発展の歩みが、来年、再来年へと続いていくことを強く期待する。

さて、健保組合に関しては、先般、健保連で令和6年度予算の早期集計を発表した。
 春闘やコロナ後の医療費の動向等が不透明ななかで、健保組合の皆さんは、予算策定に大変苦労されたことと思う。

今年度は、この春闘の賃上げ効果などもあり、収支の改善が期待できるが、高齢者医療への拠出金負担が今後も増加していくことを踏まえれば、健保組合の財政が、依然として厳しい状況であることに変わりはない。

一方、政府は6月に、今年の「骨太の方針」を決定した。
 デフレからの完全脱却に向けて、賃上げを定着させるため労働市場改革などを推進する一方で、財政面では、来年度に基礎的財政収支を黒字化する目標を維持することとしている。

人口減少が進むなか、持続可能な社会保障システムの確立が不可欠として、医療DXの推進に取り組み、能力に応じて全世代が支え合う「全世代型社会保障」の構築をめざすことも明記された。

この閣議決定に向けては、5月に自民党の「国民皆保険を守る国会議員連盟」が総会を開き、政府に対して「骨太方針2024および令和7年度予算概算要求に対する要望」をまとめた。

このなかでは、「後期高齢者・現役並み所得者の給付費への公費投入」、「高額薬剤など医療費の高額化に伴う健保組合の財政悪化への支援」、「出産・子育て対策・DX推進など国策に貢献する健保組合の取り組みへの財政支援」など、われわれが求めてきた事項も取り入れられた。

健保組合や各連合会の皆さんと力を合わせて世論に訴えてきた活動が奏功したといえる。
 これからも厳しい状況が続くことが予想されるなかで、こうした活動を続けていくことが非常に大切であると実感しているところだ。

社会全体に関しても、厚生労働省は先月、2023年の「人口動態統計」の概数を公表している。
 昨年の出生数は72.7万人と過去最少を更新し、出生率は1.20と前年よりさらに低下した。
 まさに、急速に進行する少子化に、強い危機感を持つ内容だった。

なお、今週の総務省の発表では、日本人の人口が前年比86万人減少したとのことだ。
 改めて、将来の日本を支える子どもたちを、国全体、国民全体で育んでいくことは、国としても喫緊の重要課題であるといえる。

こうしたなか、6月5日に「子ども・子育て支援法等改正案」が成立したところだ。
 この子ども・子育て対策の財源については、令和8年度から公的医療保険を通じた支援金の拠出が始まる。
 初年度は、おおむね6000億円、10年度以降は毎年約1兆円を拠出していく予定とされている。

われわれは、かねてより、「子ども・子育て支援金は、医療保険料等とは異なるものであること」、「子ども・子育て支援金率の基礎として国が実務上一律の支援金率を示すこと」と主張してきたが、成立した法案に対する附帯決議において、こうした内容も盛り込まれた。

これも、われわれの活動の一定の成果ではあるが、引き続き、この附帯決議が的確に実行され、実効あるものとなるよう注視し、しっかりと対応していく。

また、働き方の多様化に対する対応も重要となっている。
 先般、「働き方の多様化を踏まえた被用者保険の適用の在り方に関する懇談会」が取りまとめを行い、企業規模要件の撤廃などの方向性が示された。

この取りまとめのなかには「保険者への影響に鑑み、支援策を検討する」という内容が盛り込まれている。
 今後、関係審議会で、この保険者に対する支援策などについて具体的な検討が進められるよう、取り組んでいく。

さて、今年の12月2日から保険証が廃止され、マイナ保険証への本格的な移行が始まる。
 これからマイナ保険証を基本とする取り扱いへの準備も佳境を迎えることになる。

昨年来、健保組合の皆さんには、マイナンバーの登録データの確認など、多大なる負担をかけている。
 加えて、「資格確認書」や「資格情報のお知らせ」の交付など、新たに始まる事務の取り扱いに向けての準備や、課題への対応にも取り組んでいただいている。

こういった課題を着実に乗り越えていくことで、国民・患者がいつでも自らの健康状況を確認することができ、災害時や初めての受診でも個々人の情報が共有され、適切な医療を受けられる体制が整うことになる。

医療DXを推進し、医療の質の向上と加入者の健康増進を図っていくため、国に対してわれわれの意見・要望を伝え、実効あるものになるよう活動していく。
 健保組合の皆さんにも引き続き、協力をお願い申し上げる。

来年は、団塊の世代が後期高齢者となる、いわゆる「2025年問題」の節目の年となる。
 拠出金の増加など、健保組合を取り巻く環境は、いっそう厳しさを増していくが、われわれ健保組合が保険者としての強みをしっかりと発揮していくことが、国民の健康と安心の確保につながる。

国民皆保険という日本の素晴らしい仕組みを将来に引き継いでいくためにも、医療保険制度の中核を担う健保組合の安定した運営の確保が不可欠であり、「現役世代の負担軽減」や「世代間の給付と負担のアンバランス解消」など1つひとつの課題に道筋をつけていくことが、全世代型社会保障の構築につながるものと考えている。

私も健保連会長として、先頭に立って取り組んでいくので、引き続き、皆さんの理解・協力を賜りたく、お願い申し上げる。

最後になるが、本日の総会では、令和5年度の事業報告、決算関係を中心に審議をいただく。
 議員の皆さんの活発な意見をお願い申し上げる。
 簡単ではあるが、開会のあいさつとする。

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