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健保ニュース 2024年7月中旬号

5年社会医療診療行為別統計
医科診療1件当たり点数 入院1.6%増、入院外0.0%減
調剤は毎年薬価改定で減少

厚生労働省は6月26日、「令和5年社会医療診療行為別統計」の結果を公表した。

NDBに蓄積されている5年6月審査分の医科、歯科、薬局調剤のレセプト全数を集計し、前年と比較したところ、医科診療のレセプト1件当たり点数は、入院は前年度比1.6%増、歯科診療は0.1%増となる一方、新型コロナウイルス感染状況の収束や5類感染症への移行による診療報酬上の特例措置の縮小により、入院外は同0.0%の微減となり、前年の増加から減少に転じた。他方、薬局調剤は毎年薬価改定の影響から同0.5%減となり、前年に続きマイナスの伸びとなった。

「社会医療診療行為別統計」は、医療給付の受給者にかかる診療行為の内容、傷病の状況、調剤の使用状況等を明らかにし、医療保険行政に必要な基礎資料を得ることを目的に毎年作成している。

社会保険診療報酬支払基金支部、国民健康保険団体連合会に提出され、5年6月審査分として審査決定された医療保険制度のレセプトのうち、レセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB)に蓄積されている全数を集計の対象とした。

医科8760万2058件、歯科1983万7566件、薬局調剤5827万5906件のレセプトを集計。集計対象の「レセプト件数」は、前年に比べ6.5%増加(医科入院3.4%増、医科入院外5.6%増、歯科4.9%増、薬局調剤8.4%増)しており、ほぼコロナ禍以前の令和元年並みに戻っている。

他方、「レセプト日数(薬局調剤は受付回数)」は同6.1%増(医科入院0.4%増、医科入院外6.0%増、歯科3.7%増、薬局調剤10.3%増)、「レセプト点数」は同5.7%増(同5.0%増、同5.6%増、同5.0%増、同7.9%増)とそれぞれ増加した。(5年統計の結果概要は以下のとおり)


【医科診療・入院】

医科診療・入院は前年と比べてレセプト1件当たり点数が1.6%増の6万230.4点、1日当たり点数が4.6%増の4027.5点だった。

診療行為別にみると、1件当たり点数が最も高い「入院料等」は前年比0.3%増の2万1396.9点。次いで、「診断群分類による包括評価等」が、同1.2%増の1万7901.4点となっている。

診療行為別の1日当たり点数は「入院料等」(構成割合35.5%)、「診断群分類による包括評価等」(同29.7%)、「手術」(同18.6%)、「リハビリテーション」(同5.6%)の順に高かった。

また、増減率をみると、「検査」と「初・再診」の1件当たり点数がそれぞれ前年比11.7%減、同10.3%減といずれも大幅減。1日当たり点数も同9.1%減、同7.6%減と大きく減少した。

厚労省は、「検査」が減少した要因について、入院・入院外ともに新型コロナの感染状況が落ち着いたことによるものと説明。さらに、5年5月8日からの新型コロナの5類感染症への移行で診療報酬上の特例措置が縮小し、「初・再診」における加算を算定できなくなったことによる影響も大きいとした。

他方、抗がん剤使用の増加などが起因し、「注射」の1件当たり点数が同20.7%増と大きく伸びており、入院は、全体としてプラスの伸びとなった。

1件当たり日数は14.95日で前年から0.44日減少した。
 原則74歳までの一般医療と75歳以上の後期高齢者医療に分けると、1件当たり点数は一般5万7857.2点、後期6万2336.9点で後期が4479.7点高い。

1日当たり点数は一般4751.6点、後期3578.3点で一般が1173.3点高くなっている。診療行為別の構成割合でみた場合、後期は一般に比べ「入院料等」の割合が高く、「手術」と「診断群分類による包括評価等」が低かった。

1件当たり日数は一般12.18日、後期17.42日で、後期が5日程度長くなっている。
 病院と診療所に分けると、1件当たり点数は病院6万1934.4点、診療所2万2421.9点で、病院が2.8倍高い。

1日当たり点数は病院4059.1点、診療所2724.1点で、病院が1.5倍高かった。病院を種類別でみると、「特定機能病院」が8826.9点で最も高く、「精神科病院」が1478.5点で最も低い。

1件当たり日数は病院15.26日、診療所8.23日で、病院が7日程度長かった。病院を種類別でみると、「精神科病院」が28.34日で最も長く、「特定機能病院」が9.44日で最も短い。

DPC/PDPSにもとづく入院1日当たり定額レセプトと、それ以外の入院レセプトを比較すると、1件当たり点数はDPC/PDPSが前年に比べ0.4%増の6万9535.5点、それ以外が同2.2%増の5万1906.7点だった。

1日当たり点数はDPC/PDPSが同3.8%増の7219.2点、それ以外が同4.1%増の2632.7点と、いずれも増加。診療行為別の構成割合は、DPC/PDPSで「診断群分類による包括評価等」が54.5%、それ以外で「入院料等」が70.3%と最も多くを占めた。

1件当たり日数はDPC/PDPS9.63日、それ以外19.72日で、10日以上の開きがあった。


【医科診療・入院外】

医科診療・入院外は、1件当たり点数が1480.9点で前年に比べて0.0%減、1日当たり点数が0.3%減の1007.1点で、いずれも減少した。

診療行為別にみると、1件当たり点数で最も高いのは「検査」の273.1点、次いで、「注射」の196.9点、「初・再診」の192.7点だった。増減率をみると、「初・再診」と「検査」の1件当たり点数がそれぞれ前年比4.8%減、同4.5%減と減少。「注射」は同7.3%増と大幅増となったものの、入院外全体としては、前年からマイナスに転じた。

1日当たりの点数が最も高かったのは「検査」の185.7点(前年比4.8%減)で、構成割合全体の18.4%を占めた。次いで、「注射」が133.9点(同7.0%増)で全体の13.3%、「初・再診」が131.1点(同5.1%減)で全体の13.0%を占める。

1件当たり日数は1.47日で前年と同日だった。
 入院外を一般医療と後期医療に分けると、1件当たり点数が一般1350.1点に対し後期1812.6点、1日当たり点数が一般966.5点に対し後期1094.1点だった。1件当たりと1日当たりの点数のいずれも後期が一般を上回る。診療行為別に構成割合をみると、後期は一般より「在宅医療」が高く、「初・再診」が低い。

1件当たり日数は一般1.40日、後期1.66日で、後期が0.26日長い。
 病院と診療所で比較すると1件当たり点数は病院2775.4点、診療所1103.9点、1日当たり点数は病院1873.9点、診療所752.3点で、それぞれ病院が2.5倍高かった。

病院を種類別でみると、1日当たり点数が最も高かったのは「特定機能病院」で3724.9点、最も低かったのは「精神科病院」で、859.4点だった。診療行為別の構成割合をみると、診療所は病院より「初・再診」と「医学管理」が高く、「注射」と「画像診断」が低い。1件当たり日数は病院1.48日、診療所1.47日で、大きな差はなかった。


【院外処方】

医科の入院外における処方件数をベースにした院外処方率は80.2%で、前年と比較して1.1ポイント増加した。

病院・診療所別にみると、病院は前年に比べ同1.1ポイント増の82.5%、診療所は同1.2ポイント増の79.6%にそれぞれ上昇した。


【歯科診療】

歯科診療の1件当たり点数は前年比0.1%増の1279.5点、1日当たり点数は同1.3%増の806.5点だった。診療行為別の1件当たり点数は、「歯冠修復及び欠損補綴」が最も高く、同2.6%減の397.5点。

診療行為別の1日当たり点数においても、「歯冠修復及び欠損補綴」が同1.4%減の250.6点で最も高く、構成割合全体の31.1%を占めた。次いで、「処置」が同2.9%増の160.3点(構成割合の19.9%)、「医学管理等」が同3.7%増の119.7点(同14.8%)、「初・再診」が同0.0%増の99.9点(同12.4%)と続く。

1件当たり日数は1.59日で前年に比べ0.02日減少している。

般医療と後期医療に分けると、1件当たり点数が一般1240.8点、後期1425.5点、1日当たり点数が一般802.8点、後期818.8点で、いずれも後期が一般を上回った。年齢階層別にみると、75歳以上が1件当たり点数で1422.3点と最も高くなっているが、1日当たり点数では、一般の15~39歳が831.6点と最も高く、75歳以上の817.6点が続く。なお、一般の0~14歳が1件当たり点数928.2点、1日当たり点数768.7点で、それぞれ最も低くなっている。

診療行為別の1日当たり点数の構成割合を一般と比較すると、後期は「在宅医療」と「歯冠修復及び欠損補綴」の割合が高い一方、「処置」が低い。1件当たり日数は一般1.55日、後期1.74日で後期が長かった。


【薬局調剤】

薬局調剤の1件当たり点数は1065.3点で、前年比0.5%減少した。処方箋受付1回当たり点数は同2.2%減の889.9点だった。

調剤行為別にみると、「薬学管理料」が1件当たり点数同0.3%増、受付1回当たり点数同1.4%減となった。他方、「調剤技術料」は1件当たり点数同3.4%増、受付1回当たり点数も同1.6%増。「薬剤料」は1件当たり点数同1.4%減、受付1回当たり点数同3.0%減とそれぞれ低下した。

厚労省は、薬局調剤全体が低減した要因について、調剤点数の7割を占める「薬剤料」の減少が大きいと述べ、毎年薬価改定による薬価の引き下げが影響しているのではないかと考察した。

受付1回当たり点数の構成割合は、「薬剤料」が71.6%を占め、「調剤技術料」が14.5%、「薬学管理料」が13.7%を占める。レセプト1件当たり処方箋受付回数は前年から0.02回増の1.20回だった。

一般医療と後期医療に分けると、1件当たり点数は一般966.8点に対し後期1299.8点、受付1回当たり点数は一般821.3点に対し後期1044.5点で、いずれも後期が1.3倍程度高い。

受付1回当たり点数に占める「薬剤料」の割合は一般70.9%、後期72.9%。年齢階級の上昇に比例して点数は高くなっている。1件当たり受付回数は一般1.18回、後期1.24回だった。


【薬剤の使用状況】

レセプト1件当たりの薬剤点数階級別件数の構成割合は、「5 00点未満」が院内処方75.3%、院外処方68.5%と、いずれも7割程度を占める。

年齢が高くなるほど「500 点未満」の割合が低下し、75歳以上では院内67.0%、院外56.2%まで落ち込む。

1件当たり薬剤種類数別件数の構成割合は、「1種類」が院内(26.6%)、院外(20.9%)とも最も高く、平均すると院内は3.28種類、院外は3.76種類となる。年齢階級ごとにみた場合、院内・院外とも75歳以上で「7種類以上」の割合が2割程度を占めた。

薬効分類別点数の構成割合は、入院の場合、「腫瘍用薬」が29.6%で最も高い。院内処方では「腫瘍用薬」が25.6%、院外処方では「その他の代謝性医薬品」が17.8%とそれぞれ最も高かった。

後発医薬品は、薬剤点数に占める割合が前年から0.5ポイント増の19.5%(一般医療18.5%、後期医療21.2%)となる。

このうち入院が同0.9ポイント増の15.4%、入院外の院内処方が同0.2ポイント増の16.6%、院外処方が同0.5ポイント増の20.0%で、すべて上昇。病院は13.4%、診療所は25.5%だった。

薬剤種類数(後発品のない先発品を除いた)に占める後発医薬品の種類数の割合は80.0%で前年から1.8ポイント上昇した。

このうち入院は同1.4ポイント増の74.6%、院内処方が同1.0ポイント増の67.7%、院外処方が同1.8ポイント増の82.5%。病院は80.7%、診療所は79.8%だった。

薬効分類別点数の構成割合をみると、入院は「抗生物質製剤」が最も高い26.0%を占め、院内処方と院外処方では「循環器官用薬」が最も高く、それぞれ22.3%、25.5%を占めた。

このほか、医科と薬局調剤を合算した総点数に占める薬剤料の割合のうち、入院は前年比で1.4ポイント増の10.3%、入院外が同0.6ポイント増の39.7%だった。入院の内訳は投薬2.2%、注射7.4%で、入院外の内訳は投薬26.8%、注射11.2%となっている。

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